#18
ちょっと進行遅いかな
・・・・クラスの担任からの入学説明が終わり、放課後となった。
この時間帯頃になると、クラスの中ではすでにまとまりができており、校舎内の散策へと向かう者たちが多い。
ただ、カグヤは人と付き合うのが得意ではないのでボッチ状態であった。
「まあ、一人で行動するのもいいけどな」
『カグヤ様、あのリースとかいう人の事はどうしますか?』
・・・・アンナの問いかけがなかったら、多分忘れていたな。
入学当初に喧嘩腰で迫ってきて、去り際に確か・・・・放課後に運動場の方へ来いだったかな。
「そこは校舎裏とか、体育館倉庫とかだと雰囲気はありそうだけどね」
とはいえ、呼ばれているので仕方がない。
相手とて、こちらが「シグマ家」と知っていながら迫っているようだったし、それなりの覚悟とかもあるのだろう。
「めんどくさいけど、運動場へ向かおうかな・・・・」
『運動場までのナビゲートしましょうか?』
「窓から見えているから別にいいかな。それよりもアンナ、今度はおとなしくしてくれないか?さっきの口論俺が全くはいれていなかったし・・・』
『了解いたしました』
運動場の方に向かうと、中央にポツンと人影が見えた。
律儀にもわかりやすいところにリースは待ってくれたようである。
「一応言われたとおりに来てやったぞー」
「おお!!やっと来たかカグヤ!!k」
びしぃっと構えるリース。
その真横には、彼の魂魄獣と思われる可愛い白いネコが横たわっていた。
『うわぁ!!可愛いネコがいますよカグヤ様!!』
その猫を見つけて、人の姿の状態だったら物凄くキラキラしていそうな声で、アンナが叫ぶ。
・・・・どうやら彼女は猫好きのようである。
「おおぅ?その堅物な本でもこの僕の魂魄獣『ニャン太郎』の素晴らしさが分かったのか!!」
『あなたは嫌な人ですけど、その猫は卑怯なほど可愛いですよ!!』
「その一言余計にあるがそうだろう?こうやっても撫でてやれば・・」
『ニャォォゥ』
『ふわぁぁぁぁ!!可愛いですよ!!』
ネーミングセンスとか誰もツッコまなかったのだろうか。
そして、最初の険悪ムードはどこへやら、猫の可愛さに一つにまとまっているぞこいつら。
「えと・・・俺のこと忘れていないか?」
「はっ!?いかんいかん、当初の目的を忘れていた!!」
リースはそういうと、改めてカグヤに向かって指をさした。
「カグヤ!!貴様に僕から決闘を申し込む!!入学試験で実力を発揮し切れなかったし、今ここでこの僕の素晴らしい実力を教え込みたいのだ!!」
そういうと、懐からわざわざ用意したと思われる白い手袋を投げてきたので・・・・・
「よっと」
「避けるなよ!!」
ひょいっとつい避けてしまった。
貴族同士の決闘で申し込む際の一般的なものとして、白い手袋を投げて当てるという事がある。
なので、この白い手袋が当たれば決闘は受理されて正式に行えるのだ。
ただ、避けてしまえばそんなものは関係ない。
「くそっ!!だがまだまだいっぱいあるぞ手袋は!!」
リースは歯ぎしりしながらも、懐から次々と白い手袋を投げてきた。
決闘なんてめんどくさそうなので、カグヤはカグヤでその手袋の雨あられをよけていく。
にしても、どれだけ手袋を所持しているんだろうかこのリースとかいう人。
アンナの方を見ると、リースの魂魄獣であるニャン太郎とやらに、手だけをページを開いて実体化させてなでていた。
本から手が生えている光景って、ちょっとホラーだよな。
・・・・結局、リースの持ってきた手袋はすべてなくなったようで、また改めて後日に決闘を受けるまで投げ続けるから覚悟しろとかいうセリフの後、リースはニャン太郎を連れて寮の方へ帰ったのであった。
うん、俺も寮暮らしとなるので、朝とか下手すりゃ出くわすだろうな。
とはいえ、決闘ってめんどくさいし、そもそも加減できるかが不安なんだよね。
『あのネコは惜しいですよー。決闘をカグヤ様が受けて、その対価としてあのネコを好きなだけモフモフさせてもらえないでしょうか』
「それってアンナだけが得していないか?」
魂魄獣になる前は大魔法使いだったというけど、ネコにでれでれな様子なのでその面影が見当たらない。
とにもかくにも、本当にどうすればいいのだろうかとカグヤは悩むのであった・・・・・・
アンナ、大魔法使いにして大のネコ好きである。
なぜ猫の姿の魂魄獣として転生しなかったのか気になったので聞いてみたところ、自分がなるよりもきちんと見て触れるような立場の方がいいと供述していた。




