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本当に最後のおまけ話

本日2話目。

本当のこの物語の最終回。どうぞお楽しみください。

【カグヤの死後の妻たちダイジェスト風)】


「ミルル」

‥‥‥カグヤの死後、バーステッド王国の国王となっている息子のディラの相談役を続け、道に迷わないように時々アドバイスを送り続けた。

 彼女は国民からも愛され、そして息子を陰から支える母として理想だと言われ、彼女を親しむ者たちによって、生まれる子供たちには彼女の名前の一部が愛用されてつけられていったそうだ。

 ミルルの死後、彼女を国の母として讃える者たちによって、カグヤと並ぶ彼女の像が建設されたという。



「リース」

‥‥‥ハーフサキュバスなせいか、他人よりも年を取るのが徐々に遅くなって、死の間際まで若々しいままだったと言われている。

彼女の美しさに魅せられ、カグヤの死後未亡人となった際に求婚者が続出したそうだが、生涯を夫であったカグヤに捧げると誓っており、再婚を望まなかった。

また、カグヤの死と同時に亡くなった、彼女の生涯のライバルであったアンナの死を悼み、その時ばかりは本女と呼ばず、きちんと名前を読んだそうである。

そして、彼女の娘であるアリアもまた、成長して美貌を魅せ、二人して「美の化身母娘」と呼ばれたのであった。月日が経ち、娘が相手を見つけ、生涯愛すると誓いあう姿を見たときにはカグヤとの事を思いだし、そっと涙をながしたそうだ。




「サラ」

‥‥‥見た目は人間であったが、中身はドラゴンのままだったせいか、寿命もまた誰よりも長かったそうだ。

カグヤの死後、群れに戻って息子が長となったのを喜んだあと、カグヤのやっていった数々の功績を後世に伝え残したり、ゼルビス家の行く末を寿命が尽きるその時まで見守り続けたのである。

そして、死の間際、彼女は人の姿からドラゴンの姿へと戻り、天高く羽ばたいてその行方はわからなくなった。




――――――――――――――――――――

【おまけ話】

‥‥‥ゼルビス家も、シグマ家も名を変え続け、その名前が分からなくなるほど長い月日が経った頃である。





「‥‥‥明日いよいよ即位か」


 誰もが寝静まる真夜中、とある国にある湖のほとりで、王太子は悩んでいた。


 彼は国の第2王子であり、つい数年ほど前までは王位継承権も第1王子よりも下で、別に権力とかに興味はなく、公爵としてか、もしくは王位継承権を放棄して平民になろうかと考えていた。


 また、彼はとある孤児院を訪れ、その孤児院を支援しようとしていた際にとある少女と出会い、そして恋に落ちていたのである。


 その少女と愛し合い、かといって王族がそう気軽に平民と結婚できるわけではないので、平民になっても構わないという覚悟はあったのだ。




‥‥‥だがしかし、ある時、彼の兄である第1王子が何やらろくでもないことをしていたと、何処からか情報が入り、国王たちが調べてみた結果、王にはふさわしくない行為をとんでもなくやらかしていたことが判明したのである。


 その為、第1王子は王位継承権を剥奪され、平民に落とされて王族と縁を切られ、代わりに第2王子であった彼が王位継承権が繰り上がり、またその時までに彼がしていた孤児院の支援や、街中での国民たちとの交流、困っている人を助けるやさしさ、学園での好成績などが評価され、そのまま王太子とされて、次期国王に決定してしまったのである。


 しかも、なんという神のいたずらか、国王には他に血縁者がおらず、彼が王位継承権を放棄しようものならこの国は国王がいなくなってしまうという状態となり、彼が愛していた少女と結ばれるのが難しくなってしまったのであった。



 


 明日になれば、国王が退位し、彼が即位して次期国王となる。


 そして、そうなってしまえば平民の位である少女を彼が迎えるのは‥‥‥



「王にならなければいけないというし、かといって平民の彼女を王妃に添えようとしたら周囲から猛反発を喰らう‥‥‥どうしたらいいのだろうか」



 悩みに悩み、解決方法が分からなくなった彼は、こっそり城から抜け出してこの湖のほとりへ来たのであった。


「‥‥‥せめて、彼女が平民としてという事ではなく、なにか皆に認められる様な功績があればなぁ」



 愛する彼女の事をあきらめきれず、どうにか王妃として迎えることができないか、彼は調べに調べた。


 もしかしたら不当に落とされた貴族家の娘かもしれないし、特別な力を持った少女なのかもしれないという望みをかけたのである。



‥‥‥結果は惨敗であった。


 


 生まれもわからず、ただの平民の少女‥‥‥礼儀やその心の優しさ、強さを考慮すれば、しかるべき教育を受けさえすれば文句なしの相手となるだろう。


 だがしかし、その機会を与えることもできず、悶々と物事は膠着していたのであった。



 そんな悩みに、彼がつぶされそうになった時である‥‥‥




【‥‥‥ほぅ、なにやら悩んでいるようだなそこの少年よ】

「!?」


 突如として聞こえた声に、彼ははっとして顔を上げた。


 見れば、湖の一部が輝き、そこから透き通るような女性が出てきたのである。



 人ならざる存在であることは直感的に感じ取れたが、すぐさまその雰囲気から害をなすような雰囲気ではないと分かると、彼は警戒を緩めた。


「‥‥貴女はいったい何者なのでしょうか?あ、先に私から名乗るべきでしょうか」

【‥‥思った以上に冷静なのが少しがっかりだが…‥別にいい。様々なところから我はお前の事を聞いているし、別に名乗らなくてもい。と言うか、そもそも我は名乗るほどの精霊ではないけどね】


 冷静な王太子の対応に、びっくりするかもと言う反応を考えていたその存在は、少しがっかりしたようなそぶりを見せたが、その正体を明かした。



 驚くべきことに、どうやら人間ではなく、精霊と言う存在だというのだ。


 精霊…‥王太子である彼が学んでいたことでは、紙に近い存在でもあり、そしてとある貴族家にはその加護があると言う話であった。


【大体お前が我の事に関して考えているようだが‥‥‥その考えにある精霊、それは我の母上だ】


 どうやらその貴族家に加護を与えている精霊の子供らしい。


 聞くと、まだまだ成長途上ではあるけど、そこそこの力のある精霊なのだとか。


 そしてある時、その母によってこの地に連れてこられ、この湖が気に入ったのでそれ以来住み続けているのだと言う話であった。



【時に少年よ、お前はどうやらこの国の王太子でありながら、平民の少女と恋仲にあり、国王になると結ぶことが難しいと愚痴をこぼしていたな?心の声がものすごく駄々洩れしていたぞ】

「え!?」



 考えていたことが、どうやら思いっきり口から出ていたようで、この精霊に見事に全部聞かれていたようであり、彼はものすごく恥ずかしいような気持になった。



【まぁ、待て。そこまで恥ずかしがることか?】


 王太子が顔を赤らめたのを、その精霊はなだめた。


「というと‥‥」

【精霊の我から見れば、人間の身分なんてものは関係ない。そもそもそういうものは人が創り上げたものであり、それに全てを縛られるのは間違っておらぬか?】


 長い間をかけて、貴族や平民と言った身分差が出来たのは人間自身の行いであり、その結果自身が縛られるのは間違っているのだと、その精霊は言った。


【導く者がいるからこそ、それに従う者たちがいるからそのような身分差ができるのは仕方がないことであろう。だがしかし、その想いまで潰す気なのか?】



【別に、身分差があるのが悪いことだと我は言っているのではない。我が言いたいのは、その身分差を気にするほど、お前は器が小さいのかと言いたいのだ!!】


 ずびしぃっと、精霊に指を突きつけられ、はっと気が付く王子。



 いつしか、周囲の目に自分が踊らされていたことに気が付いたのだ。



【同じ身分であれば、と考える時点でお前は間違っているであろう。機会がない?血筋がふさわしくない?否だ!!お前が真に相手を想うのであれば、悩むのではなく、その心を貫き通すのが大事なのだ!!】


 精霊のその言葉に、目からうろこが落ちたかのように思えた王太子。



「っ‥‥‥確かに、貴女の言う通り私は彼女の身分にいつしか縛られ、悩んでしまっていた。でも、身分を言うのではなく、己の心に従うのが大事なのだと今気が付かされました!!周囲が反対してもいい!!己が王にならなくてもいい!!私は、私の愛する人のために新年を貫き通せばよかったのだ!!」」


 精霊の言葉のおかげで、迷いが吹っ切れた王太子。



【うむ、迷いがなくなったようだな‥‥‥】


 王太子のその様子に、精霊は満足げな様子で笑みを浮かべた。


 どこか美しいと思えるさまだが、彼は精霊ではなく彼の想い人の事を思い浮かべた。



 そして、王太子は決心し、迷いを吹っ切れさせてくれた精霊にお礼を言った後、その場を去ったのであった。







 王太子が去った後、精霊はふと空を眺めた。


 自分がここに住み着いてから、どれだけの年月が経っているのかはわからない。


 けれども、時々会いに来る己の母の話を、精霊は思い出す。


 精霊の母の名前は、フローリア。


 人間の男に嫁ぎ、そして精霊を産んだ立派な母。


 その男が死んだ後も、各地へ子供たちを置いていき、時々その様子を見に来るのだ。


【‥‥‥思えば我が母も、精霊である存在と、人間の相手と言う存在に悩んでもいたな】


 あの王太子とは少々事情が違えど、己に関して悩んでいたことは同じであろう。


 だがしかし、その信念を、想いを抱き続ければ、間違いがなければ…‥‥そして、最終的には自ら行動を起こさねば何も解決しない。


 そう母から学んだことを、その精霊は思いだし、微笑んだのであった。




‥‥‥後日、新たな国王が誕生し、彼は想い人であった少女に対して告白し、周囲からの妨害などを受けつつも、見事に王妃とさせることに成功し、皆に認めさせることができた。


 そのすぐ後に、突如として精霊が現れ、二人に加護を与えた。




 精霊は神に近い存在。


 そう言う存在であるが故に、王太子とその少女の魂の結びつきが、前世から続いていたというのを見抜いていた。


 それを見抜いていたからこそ、あの時、湖のほとりで悟らせたのだが…‥‥その事を、彼らが知るのは後のお話である。

長い間、ご愛読本当にありがとうございました!!約5か月間に渡る連載でしたが、どうにか完結にこぎつけたのは読者の方々のおかげです!!

カグヤたちの物語はこれでお終いですが、その記憶は残ることでしょう。

本当に、本当に、感謝とお礼を申し上げます!!ありがとうございました!!



【お知らせ】

新連載を2017/8/29~30あたりに開始予定です。ようやくまとまり、新たな物語を投稿いたしますので、活動報告にも書きますので楽しみに待っていてください。

‥‥‥まとまったけど、そのタイトルが中々決まらないのである。小説を書く上で、内容、人名、そしてタイトルが3大難しいものだと思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最近知って一気にここまで読んだのですが とても面白かったです 完結お疲れ様でした!
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