#145
この結婚式の神父、一番最初の頃に魂魄獣の儀式のときに出た人ですよ。
神に誓いをささげる際に、またあの踊りをしたのですが、都合上カットです。
SIDEカグヤ
‥‥‥結婚式会場での、夫婦の誓いの言葉もいい、結婚指輪をはめ合うのと、誓いのキスもやったカグヤたち。
あとは、ほどほどの立食会のような形になるのだが、ゼルビス地方の発展ぶりを見て、この機会にカグヤとのつながりを持っておきたい貴族達との話をのらりくらりとカグヤが交わしていると‥‥
『カグヤ殿、少々話をしていいだろうか?』
今回の結婚式会場に来ていた火炎龍の長が話しかけてきた。
サラは薬で人間の姿になっているのだが、長は薬なしの、そのまんまドラゴンの姿のままである。
とりあえず体がでかいので空中でホバリングのような状態で会話に混じっていたようだが、何か思い出して話しかけてきたようであった。
「ん?何でしょうか、火炎龍の長よ」
『実はな、今後の事で少し話があるのだが‥‥』
「‥‥‥なるほど、つまりゼルビス地方に別の種類のドラゴンが来る可能性があると」
『ああ、そのことで前もって話しておきたかったのだ』
火炎龍の名前から予測できたことだが、この世界には他の種類のドラゴンも当たり前にいるそうだ。
現状、数が一番多いのが火を吐く火炎龍であって、数は少ないけれども水龍に光龍なんてのがいるのだとか。
他のドラゴンたちは、基本的に人間が訪れないような未開の地に住んでいるそうだが、ドラゴン同士で密かな交流があるらしい。
で、今回ゼルビス地方に最近定着し始めている火炎龍達の話が他のドラゴンたちにも伝わったそうで、もしかしたら住処を求めて渡ってくる可能性があるというのだ。
その際に、下手に騒ぎになるのは避けたいので、ある程度の受け入れができるようにしてほしいという事であった。
『シグマ家の話は全世界のドラゴンたちにも、微妙に異なったりしているのがあるそうだが、それでもその恐怖はある故に迂闊な真似をする輩はいるまい。だが、万が一という事もあるので、その時にはどうか対処をしてくれないか』
「‥‥‥わかった。こちらでもそのことについて検討しておこう」
せっかくの結婚式にやばそうな話題はできれば聞きたくないので早めに話をカグヤは切り上げ、今は互に立食でわいわいと楽しむように言って、この話を終えたのであった。
と言うか、他のドラゴンにも何をやったのだろうかシグマ家は…‥‥聞くのが怖い。
『ああ、ついでに言うなれば新婚旅行先が決まった際には我々も移動に手を貸すのでどんな遠い地でも遠慮なく頼んで欲しい。大切な一族の娘の婿殿だしな』
そうにこやかに言って、長もそのまま大きな体の人専用のスペースへ向かった。
‥‥‥元々、火炎龍出身のサラはカグヤの愛人と言う名の生贄のような立場で来ていたはずだが、いつの間にか正式な結婚相手になっていたことに、長はうれしいようである。
一応これでつながるも盤石なものになって、しばらくの間はシグマ家の脅威に脅かされることはないのだろうと思って、心的負担が減ったのだろう。
まぁ、もし、カグヤやこの地方に害をなそうとする者がいれば、問答無用で消し炭にしてもいいとまで断言していたのであった。身内だろうと、やばいことになりそうなら切り捨てるようである。
自己責任をきちんと取らせる辺り、その判断は長としてふさわしいものなのだろう。
長との会話後、今度はダースヘッド国王が話しかけてきた。
一国の国王が一貴族に話しかけてくるのも珍しいことだが、ミルルが国王の娘だからカグヤとの関係で言えばお義父さんになるのである。
‥‥‥うん、胃痛の負担を和らげる努力を真面目にしたほうがいいかも。
娘の結婚がうれしい様だが、その頭頂部がだいぶ荒廃してきたのを見て、カグヤはそう思ったのであった。
‥‥‥ついでに言うなれば、この結婚式の後カグヤの貴族爵位は侯爵から王族の血筋がいる公爵へと上がるのだが、ミルルとの間に子が生まれた場合、その子には将来的に王位継承権が発生することもあるそうだ。
ミルルの兄弟姉妹が集まってきて、出来れば早めに子をもうけて王位を告げるようにしてほしいと、どこか必死な様子があったけど‥‥‥よっぽどこの国の王位を継ぐのが嫌なのかよお義兄さんたち‥‥‥
考えてみれば、シグマ家、カグヤのゼルビス家、ゼルビス地方に定着し始めたドラゴンたち…‥‥この国の問題児たちのスケールがかなりでかいのである。
(‥‥‥あれ?自分で何か認めたような)
カグヤはそう思ったが、とりあえず気にするのを止めたのであった。
とにもかくにも、無事に結婚式は終了し、その日の初夜を迎えることになったのだが…‥‥
『え?サラ‥‥‥まさかそっちも』
「アンナ‥‥‥こっちも投入しちゃっタ」
アンナとサラの二人が、それぞれお手製の調合薬とドラゴンに伝わる薬をカグヤにいつの間にか盛っていて、色々と大変なことになり、翌日寝室では死屍累々の状態となったのであった‥‥‥
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SIDEフローリア
結婚式のその日の夜、カグヤがアンナたちと初夜を迎えている頃、屋敷の地下室にてフローリアは溜息を吐いていた。
【はぁ‥‥‥どうしてこんなに馬鹿がホイホイかかるのでしょうかねぇ】
その視線の先には、お見せできない悲惨な状態となった、どこかの国の間者たちが積み上げられていた。
一応生きているようだが、こういう目でたい日に火事場泥棒のような感じで忍び込まれるのは嫌なことである。
この後、いかにして長い苦しみを与えながら情報を搾り取ってやろうかとフローリアは考えるのであった。
【‥‥‥にしても、やっぱりちょっと交じったほうが良かったですかね。あの様子だと、翌日皆動けるのでしょうか?】
カグヤたちの状況をなんとなくだけど把握し、負担を減らすという表向きの名目のために交るべきか、交わらないべきかも悩んだのであった‥‥‥
新作ただ今執筆中。近いうちに入れ替わりで投稿予定。アルファポリスの方でも同時掲載することをここで予告しておきます。
次回に続く!!
ミルルの兄弟たち、よっぽど王位につきたくないもよう。ある意味、ここまで王位を押し付け合う王族も珍しいのだろうか‥‥‥




