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#144

こういう式典とかって、結構難しいものである。

SIDEカグヤ


リーン♪ ゴーン♪ リーン♪ ゴーン♪



 この日、とある重大イベントのお知らせのためにわざわざ自ら志願して出た、巨大なベルを持ってゼルビス地方の上空を旋回し、首からぶら下げたベルを鳴らす火炎龍(ファイヤードラゴン)の合図と共に、人々は会場へと足を向けた。



 皆の顔は笑顔で、これから何が起こるのかが分かっており、そしてその幸せがあふれているかのように、キラキラと輝いているかのような光景を幻想させた。




 会場では今か今かと出席者たちが待ちわび、その時を待った。





「それでは新郎新婦たちの入場です!」


 その合図を行うのは、シグマ家の領地からわざわざやって来た神父であり、彼が手をかざすと同時に、今回の主役である新郎新婦たちが姿を現し、会場の雰囲気はより一層高まる。



 今回の主役の一人である、新郎のカグヤは白いタキシード姿。


 金色の縁が付き、その胸元にはこの地方で最近作られ、名産品となった虹色に輝く薔薇が飾られる。


 そして、それと同時に新婦側の方も負けじと言った美しさを見せていた。



 真っ白で、純白を極めたかのようなウェディングドレスを纏うカグヤの婚約者たち。


 それぞれの個性に合わせて、その様相は少しだけ異なっていた。



 アンナは、ドレスに細かな金色の糸が縫いこまれ、その反射がちかちかと、眩しくもなく抑えているような、それでいてどこか優しさと妖艶さを感じさせるような飾りが施されている。


 ミルルは、ドレスに細かな花の模様が施されており、純白で統一されているはずなのに、どこか花畑を幻想させるような様子である。


 リースは、どういう縫い方をしているのか、ドレスを見る角度によってわずかながらに反射する綺麗な薄い青色や、緑色があり、控えめのようでその美しさを際立たせる。


 そしてサラは、純白のドレスでありながらも、どこか燃え盛るような炎を見せるかのような刺繍が施されており、今にも燃え盛りそうな、温かさを感じさせた。





 カグヤを囲むように皆が取り囲み、そして神父の前へと向かっていく。


 誓いの言葉が述べられるその時を、周囲の出席者たちはそのわずかな時間が、物凄く長く感じられるほど待ち遠しく思うのであった。




―――――――――――――――――――――――――

SIDE名前も知らぬ間者たち



‥‥結婚式会場に人が集まっているちょうどその頃、出席のために使用人たちが皆|いなくなっているはずの《・・・・・・・・・・・》屋敷に、侵入しようと試みる者たちがいた。


 5人ほどの一小隊ほどだが、それぞれの実力は高い。


 

「‥‥‥ここが、あのシグマ家の分家であるカグヤと言う人物の屋敷で良いのか?」

「ああ、間違いないはずだ」

「今日はどうやらその本人が結婚式のようだし、今ならここは留守で警備が甘いはずだ」


 周囲に人影がなくとも、ひそひそと誰にも気が付かれぬように小声で確認しあう不審者たち




 そう、彼らはこのゼルビス地方に入り込んで、調査しようと訪れてきた間者‥‥‥スパイでもあった。


 送って来たのは、バーステッド王国に探りを入れようと、利用するだけでアーケイチ(愚者)を抹殺したエルベン神聖国。



 エルベン神聖国にとって、このゼルビス地方の発展ぶりは見逃せないものがあり、その秘密と、あわよくば自らのものにしようと腐敗した者たちの欲望によって、この間者たちは送り込まれてきたのである。




 情報を念入りに収集し、今日この日、ゼルビス地方にとってめでたい式典があることが判明し、その為に警備が手薄になっているであろうカグヤの屋敷に侵入してみることに決めたのである。




「‥‥‥なぁ、本当に警備は薄くなっているはずだよな」

「ああ、間違いなくな。式場に大量の領民やら出席者たちが集合していて、ほぼ人がいないに等しいはずなのだ」

「気のせいならいいけどさ、全く薄くなっているような気配がないような‥‥‥」

「と言うか、国王やらその他重要人物たちが参加しているようだし、そっちに潜入して調査したほうがよりいいのではないか…‥‥」

「いうな、なんかそう思ってきちゃうからやめろ」




‥‥‥一応、そこそこは優秀な間者たち。


 その勘は間違っていないはずなのだが、それでも彼らが完全に優秀と言い切れないのは、この場で手薄だろうと思っている屋敷に侵入することを選んでしまった点であろう。


 ここで、もし引き返すか、はたまたは会場へ向かってそこで調査するという手段をとってさえいればその結末は変わっていたのかもしれない。


 その判断によって、彼らは屋敷へと侵入し…‥‥二度と国へ帰れなくなってしまったのは、めでたい結婚式の最中に握りつぶされた悲しい事実なのであった。



【‥‥‥我の加護を与えた者たちに、害をなす可能性のある者は排除したほうが良いですからね】


 感じたその結末に、ぽつりと会場にて拍手を送っていた精霊がつぶやいたのは言うまでもなかった。


おめでたい日名ゆえに、いつも以上に実は‥‥‥‥

まぁ、言ったところで彼等の末路は変えようがないだろう。

次回に続く!!


‥‥‥ぶっちゃけ言って、物事は水面下で素早く、密かに行われるのである。

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