#143
新章‥‥‥と言うか、終章かな。
‥‥‥領地経営も落ち着き、春の息吹も見え始めたころ、いよいよゼルビス地方では大きなイベントが起きようとしていた。
そう、カグヤとその婚約者一同の結婚式である。
会場の準備は進み、ちょうどこの地方に住み始めて定着し始めた火炎龍たちも機材の運搬等を手伝ったりと、かなり盛大なものとなろうとしていた。
「盛大なものになる分、緊張も特大だけどな…‥‥」
屋敷の執務室にて、結婚式への向けての準備を窓から見てカグヤはそうつぶやいた。
『新郎新婦用の結婚式衣装の注文や、サイズ合わせなどもしているのですが‥‥‥やはり迷いますねぇ』
「うんうん、こういうのは女の子なら誰だって憧れるけど、一生の晴れ舞台だから力を入れたくらる物ですわ」
「ウェディングドレスの模様も、花柄や、蝶柄もあるし‥‥‥悩むなぁ」
「演出も凝ったほうが面白いかモ。長たちに頼んで炎の舞とかやってもらウ?」
『「「ああ、それも良い!!」」』
ドキドキとしているカグヤに対して、アンナたちは物凄いワクワクして、結婚式へ向けての準備をより一層互いに理解を深めつつ、一生の中にある晴れ舞台のための地道な準備を頑張っていた。
「衣装に扱う素材は最高品質のもので頼んでいます。この地方で最近入れてきた産業の中にも、他に引けを取らないようなものを用意できますね」
【諜報部隊の一部に、結婚式用の様々な料理の具材や、会場の機材を世界各地からとってくるようにもしていますし、素晴らしいものに出来るでしょう】
‥‥‥少なくとも、カグヤの一生の中で一番目立つ行事であろう。
人生で一番の行事を前に、カグヤはふと空を見上げた。
綺麗な青空であり、結婚式当日も変わらない天候であることは予測されている。
そしてアンナたちを見てカグヤは思う。
前世では確実に得られていなかった幸せを、今世で確実につかめるのだと。
目立たないように生きたかったけど、今や領地をもらい、発展もめまぐるしく、相当他から目立ってしまっている。
とはいえ、これもまた人生。
何があるかはわからないことなのだし、ある程度ならあるがまま受け入れ、受け入れられないのであれば、めいいっぱい抵抗すればいのだとカグヤは思う。
たまに空を機材運搬のために飛び交う火炎龍たちを見かけて、カグヤは結婚式の準備へと戻るのであった。
‥‥‥あれ?ドラゴンが普通に飛んでいる光景でも落ち着いている領民ってどうなんだろうか?
ふと、そのことをカグヤは気が付いたが‥‥‥深く考えないようにしたのであった。
いよいよ次回、カグヤたちの結婚式です。
ついでにひと騒動‥‥‥起こせると良いなぁ。




