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#142

ふと気が付いたら、やろうと思っていたことが出来なくなっていたりしていた。

やりたい時に、きちんとやっておかないとなぁ。

SIDEカグヤ


‥‥‥ぶっちゃけ言って、短絡的な相手程わかりやすい行動をとることはとるのだが、現状の様子を見ればむしろ哀れみを感じさせる状態であった。



「‥‥‥フローリア、あれが例のアーケイチとかいうやつでいいんだよな?」

【はい、間違いないそうです。ここ最近贅沢が余りできなかったので、この国から出て他国へ情報を色々と売り渡すから、最後の散財として盛大なこの秘密パーティの主催者でもありますね】

『金をここでドーンっと使って、盛大さで目をそらしつつ、隙が出来たら逃亡を始めるようですけど、無事に他国へ着いたとしても、そこで生活できるとは限りませんよね?』


 アンナのその言葉に、うんうんと同意してカグヤとフローリアはうなずいた。





 現在、カグヤたちはお久し振りの認識阻害を引き起こす仮面をつけた上に、アンナの魔法と水をつかさどる精霊でもあるフローリアの合わせ技で光の屈折を利用して姿を消して、今行われているブルータス商会のパーティ会場に紛れ込んでみているのである。



 会場には商会のお得意様とでもいうべき様な方々が集まっているようで、見てみればそれなりに黒い噂(証拠確保済み)のある貴族たちも参加しているようだ。



 どうやらあのアーケイチとかいう人物は、この最後の賭けとして盛大なパーティを主催したようである。


 この会場にそれなりの大物貴族とかも招き、その盛大さで目を引いているうちに、隙を見てお仲間たちと共にこのバーステッド王国から国外へ逃亡しようとする算段のようだ。


 しかも、自分たちが逃げた後にどうやら会場に集まっている貴族達で、アーケイチが握っている弱みがある人物たちを生贄というなの囮にするようで、衛兵とかその関係機関に連絡を取るという予定もあるそうだと、諜報部隊の報告にもあった。




 現場に出ずに任せていてもいいのかもしれないけど、やっぱり面倒ごとを起こしそうな馬鹿は直接叩いておきたい。


 そう考え、カグヤもわざわざ隠れながらもこの場に訪れたのである。


 


「豪勢な会場に、料理にともう金をかけまくっているなぁ」

【すべてここで清算して、万が一にでも追撃にあった時に金がないことを理由に言い逃れをする考えもあるようです。まぁ、ぜーんぶその計画は我の鍛えた諜報部隊によってバレバレですけどね】

『ある意味道化ですよね。バレているのに、バレていないと思ってやりまくる馬鹿って珍しいですよ』

 

 珍しいものなのかな?まぁ馬鹿なのは間違いないだろうけど。




 とにもかくにも、姿を隠しながら見張っているとアーケイチたちがこっそりと動き始めた。


 少し会場の料理をいただきつつ、カグヤたちもその動きを追跡し始める。



‥‥‥一応、今回のこの件に関してはダースヘッド国王にカグヤたちは報告済みであり、どのように処分するのかも伝えて、許可をもらっているのである。


 国王直々の命令のようなものにも念のためにしてもらっているので、今のカグヤにアーケイチたちが抵抗を見せれば国王に対する謀反とも受け取ることができるだろう。



 その考えを話すと、皆腹黒いような、少し甘くないかなどの意見が出たが‥‥‥甘いかな?その場で処刑も執行できるレベルにしておいたほうが良かったかな。





 そうカグヤは考えつつも、アーケイチたちを追跡し続ける。


 会場から抜け出し、あらかじめその企みに乗っていたらしい同様の国外逃亡を図る貴族達とかも一緒に目立たない馬車に乗り込み、走り出した。


 流石に、馬車の追跡は‥‥‥走るよりも、空から追いかけたほうがいいだろう。



「『戦闘翼(バトルウィング)』っと」

『「浮遊魔法(フロートマジック)」‥‥‥一応ズボンをはいてますので、下から見えませんよ』

【我は素で飛べるから問題ないな】


 それぞれ魔法やら素の身体能力で宙に浮かび、空から追跡を開始する。



 ちなみに、諜報部隊も実は隠れて馬車の近くを並走して見張っているらしい。



‥‥‥人が馬車と並走するってどうなんだろうか?しかも本気を出せばマッハ2とか3もいける者もいるらしいけど、うちの諜報部隊は本当に人なのだろうか?


 そうたまにカグヤは思いつつも、アーケイチたちを捕らえるその瞬間まで飛びながら待つことにしたのであった。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

SIDEアーケイチ



‥‥‥いつ頃からだろうか、この素晴らしいわたしの計画がすべてダメになり始めたのは。


 あのデーイル商会も潰し、再起できないように再就職を妨害し、ブルータス商会のトップをこっそり殺害してその座に座ったまでは順風満帆だったはずだ。


 

 だがしかし、ある時を境に狂い始めた。


 気が付いたときには商会の儲けは消え失せ、赤字が多くなり、うまい商談があっても騙され、後に利益が出る物ではなく、今すぎに効果があるものに投資すればあっという間に大赤字となって利益が出ない。



 何もかもうまくいかず、男色家でもいける男媚館にも出入りを禁止され、金を積んでも発散できなくなってしまった。


 ああ、この上なく腹正しい。


 この素晴らしい才能を持つわたしが、なぜこうまで追い詰められる状況になってしまっているのだろうかと、そこに怒りを覚える。


 全てを我が手中に収めるために、金が欲しい者にはあふれていた金を与え、女が欲しい者には借金していた者や攫ってきた娘たちを利用して与え、何もかもうまいこと言っていたはずである。




 だがしかし、もうこの国ではうまいこと行くまい。


 そう考え、この際このバーステッド王国から抜け出し、この国と敵対するであろう別の国を新たな拠点とすることを決意し、その準備を進めた。


 道中の護衛や、万が一我が悪事が露見した時に備えての証拠隠滅、コネを利用してまだつながっていた貴族達からこの国の情報を抜き出し他国へ渡る際に、重要な地位についている者たちへの手土産として持っていく。





 国の裏切りのような形でもあり、バレれば処刑されるだろうが、その前に他国へ渡り切って、そこで地位を築けばそう簡単に手出しはできないはずである。




 馬車を進ませ、アーケイチはあらかじめ指定しておいた待ち合わせ場所へと向かった。











「確かこの辺りだったな‥‥‥」


 馬車を止めさせ、目的地へたどり着いたアーケイチ。


 数分ほど待つと、向こう側から別の馬車がやってきて、その場所に停車した。


 中から出てきたのは、このバーステッド王国の情報を受け取りに来て、アーケイチの身柄を安全にしてくれるであろうとある国の間者である。



「‥‥アーケイチで間違いないな?」

「ああ、本人だ。約束通り情報を入手し、この場へやって来たのだ」


 尋ねられ、きちんと返答を返すアーケイチ。


 持ってきた情報書類を渡し、内容を確認してもらう。


「‥‥ふむ、間違いなく受けとったぞ」

「で、ではこのわたしを安全にそちらの国まで送って」

 

 取引が出来たと思い、言葉を続けようとした次の瞬間である。



ヒュン      ドスッ

「‥‥え」



 風を切る音がしたかと思うと、突然胸のあたりに焼けつくような痛みが出た。


 見てみれば、己の体に大きな矢が突き刺さっているではないか。


「な、なぜ…‥ごはっつ」



 引き抜こうとしたが、突然めまいがして経っていられなくなったアーケイチ。


 そのままぶっ倒れ、何とか顔を起こして間者に向けた。




 見れば、その手にはどこからか持ってきたのか、いつの間にか弓矢のようなものが備えられており、一瞬のうちにいられたことを彼は理解した。


 そして、言葉を発しようとした瞬間、再びその矢が向けられ、アーケイチの眉間に突き刺さる。


 そして続けて今度は馬車の方へ狙いを定め、そこに乗車していた他の逃亡をもくろんだアーケイチの仲間たちを次々と打ち抜いていった。



「馬鹿な奴だ。何もかも裏切れるようで、その上姑息な手段しか使えぬようなやつはわが国には要らぬというのに、目指せると思ったのか?」


 そう間者が言いながら、思いっきり侮蔑した表情をアーケイチに向けた光景を最後に、アーケイチの意識はそのまま闇へ葬り去られたのであった‥‥‥



 


―――――――――――――――――――――――――――――

SIDEカグヤ




‥‥‥予想通りと言うか、あの男にはふさわしい最期だったのだろうか。


『案外あっさりと絶命しましたね』


 空を飛びながら、地上のその光景を見てアンナのつぶやいた言葉に、カグヤとフローリアは同意した。




 今まさに、国を裏切っての瞬間を目撃したところに、可能性はあったとはいえまさかの他国の間者の手によるアーケイチの殺害を見てしまったのである。


 やはり、利用してポイとするだけだったのか、それとも害になるような連中だから国に入れたくなかったのか‥‥‥どちらにせよ、これでアーケイチの一生は終わったであろう。


「フローリア、あの間者の国籍は?」

【エルベン神聖国とかいう国ですね。国教にエルベン教と言うのがあるそうですけど、まぁ物凄くゆるゆるでそこまで腐った国ではないそうですよ。ただ、あれは単に国内で微妙に腐った貴族が差し向けた者ではないかと思われます】


 一部だけの腐敗があって、その腐敗したところとアーケイチは繋がろうとしていたのであろう。


 ただまぁ、流石にそんなところでもアーケイチのような人物の受け入れは拒否したかったので、ああやって殺害してなかったことにしたのではないかと言うのが、フローリアの推測のようだ。



【万が一に備え、あの情報はものすごく時代遅れの古すぎるものにすり替えていましたので、今すぐバーステッド王国に同行することはできないでしょうけどね。まぁ、ああやって狙っていたことが分かった以上、諜報部隊の一部を向けて探らせましょう】


 このまま放っておくのもなんだが、今すぐに問題が起こるわけではない。


 古すぎる情報を手に入れたところで、その国が動いたとしても失敗するのが目に見えているからである。


 ただ、その国がバーステッド王国を狙っているようなので、監視をすることにカグヤたちは決めたのであった。



 間者が去るのを待った後、地上に降りてアーケイチ御一行を回収し、ちょうど記録して並走していたらしい諜報部隊たちに引き渡し、あとの報告を国王にしようと、カグヤたちは王城へと向かうのであった。




――――――――――――――――――――――――――――――

SIDEエルベン神聖国のとある間者



‥‥‥正直言って、あのアーケイチとかいうやつはわが国には確実にふさわしくない穢れた者だと思えた。


 判断をして、その生死の決定権を任されてはいたが、即断できるほどだったのでよっぽどダメダメ人間だっただろう。





 情報をもらって目をとおしてみたが、その古さには…‥‥どれだけ無能だったんだろうかと、あの場で殺害したことは正しかったと思えた。



 

 ただ、気になるのは気配を消していたようだが、わずかながらに漏れ出るあっとうてき強者の圧力なようなものを上空から感じたことである。


 おそらくだが、あのアーケイチとかいう屑との取引を見ていた者がいて、もしかしたらあの場で奴とまとめて葬り去られていた可能性もあっただろう。


 それがなかったという事は、見逃されたようなものなのかもしれない。






‥‥‥よし、決めた。


 あれだけの漏れ出る圧倒的な強者の圧力があるという事は、あのバーステッド王国にはそれだけやばいものがいるという事である。


 そもそもシグマ家とかいう化け物のような一族がいるようだし、その国と一線やらかそうと企む者たちと離別して、逃げたほうが得策であろう。


 と言うか、絶対にかなうような相手でもないようだし、この際この腕を活かして、最近発展しているとかいうゼルビス地方にでも向かって、そこで職を得ようかな…‥‥





 そう考え、その間者は帰国へ向けて馬車を走らせる。


 その判断が正しかったのだと知るのは、それからしばらくたってゼルビス地方に訪れた時であった‥‥‥


次回閑話orサイドストーリー

‥‥‥そしてそろそろ終わりも見えて来たかな。

新しい作品も構想中。アルファポリスのほうと同時掲載予定。でもルビの振り方が違うからそこを修正しないといけないし、結構大変そうである。

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