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#132

本日2話目!!

 時は遡る事1週間ほど前。



 当時、王国への手紙を三日前に出していたカイザリア皇帝。


 今日の職務に取り掛かろうかと、謁見の予定やその他の仕事を確認しようと執務室にて、自身の予定表を見返していた時であった。




「た、大変です皇帝陛下!!」

「何事だ!!」


 突如として執務室に慌てて飛び込んできた己の臣下に、皇帝はその様子からただ事ではないとすぐに判断し、無礼とか言わずにそのわけを尋ねた。



「そ、それが皇帝陛下の息子のうち第3皇子であるグノーウ様が王城内で暴れまわり、制圧してきているのです!!」

「……なんだと!?」


 その知らせを聞き、皇帝カイザリアは目を見開いた。


 彼の息子であり、第3王子であるグノーウ。グノーウは昔から成績は優秀であり、ある程度他からの信頼も厚い息子の一人だったが、そんなグノーウが突如として豹変したかのように城内を次々と制圧して回っているという知らせに信じられなかったのである。



「一人では無理なはずだ。となれば他に仲間がいるのだろうか?」

「はい!!それが皇帝陛下が一掃した、貴族籍をすでに剥奪したり、処刑して亡き者になったりしているはずの開戦派だった貴族達だそうです!」


 その言葉に、再び驚愕の目を見開くカイザリア。



 以前会ったティラーン湖でのバーステッド王国との会談の際にきた化け物襲撃事件。


 その実行犯として当時王国との開戦を唱えていた貴族たちが犯人出るという証拠や、ついでに出てきた不正等もあって国外追放や蟄居などの処分を下していた貴族たちがいたのだが、それらが全員グノーウのバックについているそうなのだ。


 いわば、この状況はクーデターのようなものであり、このままでは危ないと皇帝は判断した。




 どたどたと聞こえてきた足音に、伝えに来た臣下とカイザリアは急いで執務室から脱出することにして、あらかじめ何があった時でも大丈夫なのように、代々の皇帝のみにしか伝えられてこなかった城の一度きりしか使用できない隠し通路を通って王城から逃げたのである。



 兵力差などもあるので正しい判断であり、ついでに現時点でカイザリアを慕う臣下たちも引き連れて逃げたのだが、その後帝国は彼の息子がのっとってしまった。



 その後、既に掌握したのか暗殺者などが仕向けられたが、何とか難を逃れて、追っ手をまきながらも時間をかけて、バーステッド王国にカイザリアは亡命してきたのであった……



―――――――――――――――――――――――


……そして、時は現在へ戻る。


「……手に入れた情報では、現在グノーウは『ニューデストロイ帝国』と国名を改めさせ、『グノーウ・フォン・ニューデストロイ』と己の名前も変えて皇帝として国を乗っ取り、現在色々とやらかしているそうだ」



 訳を話し、そう言った後に疲れがあるのか国王が運ばせてきた椅子に腰かけるカイザリア皇帝。


 その話を聞き、いかに重大な事が起きてしまったのかカグヤたちは理解した。


「追放したり、処分したと思っていた貴族たちをグノーウとかいうやつは密かに助け出し、匿っていたという事ですかね?」

「恐らくそうだろうな。しかも、誰にもバレないように念入りにして、奴はその爪を研いでいたようだ。帝国を乗っ取り、己が皇帝となるための時期を見計らってな…‥‥」


 はぁっと溜息を吐くカイザリア。


 その様子には痛ましいものがあるが、自身の息子にどこか裏切られたような感じがするのであろう。



「でも、継承権も一応持っていたのに、反乱のようなものを起こして国を乗っ取ったのも変な話のようにも思えますわね」


ミルルの言う事ももっともである。


 一応猫被っていたのかもしれないが、それでも成績は優秀で周囲の信頼も厚かったと言う話だし、わざわざ国を乗っ取るために動く要素が見当たらないような気がした。


「それがな……どうやらグノーウは皇帝と言う立場に強い執着を持っていたらしいという事が分かったんだ。辛うじて残った情報網から得たから、正確かはわからないがな」



 どういう事があってなのかはよくわからないそうだが、ある時を境にグノーウは皇帝の地位に執着し始めたらしい。


 その変化に気が付いたのは、彼に使えていた次女や執事だけだったようなのだが、気が付いたときには時すでに遅く、戦力として他の貴族とかも彼が掌握した時であった。



「強い執着……一体何があったのだろうか?」

「わずかながらの情報も出辿ると、きっかけは些細な……いや、あれは些細な事と言うのだろうか?」


 その原因にカイザリアは心当たりがあるようだが、一旦頭を抱えて考えこんだ。



 そしてある程度考え、話し始めた。



「なんでも数年前…‥‥とある村の視察に出かけたときの事らしい」


 皇帝として、民の生活を知るのは大事だという教育もあって、皇子たちは当時国中の村々の状態を確認して回ったりすることがあったそうだ。


 そんなある時、とある村でそのきっかけができたそうなのだ。


「話を聞けばばかばかしいように思えるのだが、夜な夜な物凄い変人がかけていくのを目撃した情報があったそうで、その真偽を確かめようとしたそうだ」

「物凄い変人?」

「ああ、噂ではあったが……わかりやすく言うなれば、裸で恍惚の笑みを浮かべながら全力疾走をする禿げた中年オヤジで、「恐怖の素っ裸男」とでもいうのが出たそうである。常に何かを求めて叫び、夜な夜な出没したという噂だとか言っていたな」

(ん?どこかでその話を聞いたことがあるような…‥‥?)



 その噂話に、カグヤはどこかで似たようなことを聞いたことがあるような気がしたが、今はカイザリアの話を聞くことに集中した。



「で、実際に真偽を確かめてから…‥‥グノーウは何かに感化されたのか、その時から皇帝の地位に執着心を抱いたようだった」

「確かめたときに何があったのだろうか?」

「そこまではわからない。ただ、その時以来変わっていたことに気が付いていれば…‥‥」


 悔しそうな顔を浮かべるカイザリア。


 そこで、リースはふと気が付いたようだ。


「あの、第3皇子だった人が皇帝になったと聞きましたけど、他の皇子たちは…‥‥」

「……どうやらすでに皆処刑されているようだ。グノーウはおそらく、自分以外の皇族の血筋を残したくはないのだろうな」


 グノーウに反対して、他の皇子たちを筆頭にしてまた同じようにな事をされるのを予想していたのだろう。


 その為、皇族のほとんどを処刑して、己の血筋だけを残すつもりのようだ。



「執着するがゆえに、己の血筋の者以外を継がせたくはない。そしてその執着から言うと……」


 そこでカイザリアはリースの方を見て、何を言おうとしているのか皆分かった。


「リースも亡き者にしに来る可能性があるのか」

「ああ、私の弟の忘れ形見であり、一応皇族の血筋でもある。情報としては一応、秘密にしているのだが……王城が完全に制圧された今、その情報を閲覧して狙いを定める可能性もある」


 己の血筋以外の物の徹底排除。つまり、リースも標的にされる可能性があるのだ。




 その言葉に、その場は重い空気に包まれた。


 そして、カグヤから一気に怒りのオーラが出たことを周囲の者たちは感じ、震えあがった。





「も、勿論、暗殺者などをこの国に出して来たら、それこそ戦争ものだ。他国内で勝手にやらかしているようなものだし、きっかけにはなるだろう」

「と言うか、むしろそれこそが相手側の狙いではないだろうか?」


 雰囲気的にやばそうなものを感じた国王は、慌てて話の内容を繋げた。


 戦争開戦派がグノーウについているのだとすれば、そのような行動に移ってもおかしくはない。


 また、以前ティラーン湖で仕掛けられたときのように、なにかしらのやばい化け物を隠し持っている可能性だって否定はできないのだ。



【・・・・・・なるほど、結局は己自身しか見ない馬鹿が仕掛けてきているという事ですか】

「そう言う事になるな……って、いつの間にいたんだフローリア?」


 ふとカグヤが気が付くと、精霊フローリアが宙に浮いていた。


「フローリア?……ああ、精霊と言うやつか。国王の手紙で聞いたが、まさかこの目で見られるとはな」


 一瞬カイザリアは驚いたように目を見開いたのだが、ダースヘッド国王との文通で知っていたのだろう。


 すぐに平然と落ち着いたのであった。


【実はですね、昨日既にそのような者たちを捕縛しているので…‥‥もしかしたら、すでにこの首都内に入り込まれているかもしれません】


 フローリアのその言葉に、緊張がはしる。


 

 既にこの国に暗殺者のようなものが侵入しているとしたら、狙いはカイザリアかリースである。


「……フローリア、諜報部隊をフル稼働させて暗殺者のあぶり出しと旧デストロイ帝国、今はニューデストロイ帝国とか言うんだっけか、その国の情報を集めてくれないか?」

【ええ、もちろん了解しますよ。我の与えた加護を持つ者たちに害をなそうとする者など、天罰を与えるべきでしょうしね】


 カグヤの言葉に、こくりと頷き承諾するフローリア。



 そのカグヤの顔は真剣な顔であり、フローリアの方も笑みを浮かべているとはいえ、その目の奥は笑っていない。




(……シグマ家の一員の地雷を、見事にお前の息子だった奴は踏み抜いたようだな)

(……あれ?これってもしかして息子とはもう思いたくないけど、グノーウ終わってないか?)


 その纏う雰囲気を見て、思わずダースヘッドとカイザリアは身震いし、互いのアイコンタクトで会話した。



 リースを狙う、つまりカグヤにとっての大事な人の一人を狙うことになる。


 そして、カグヤはシグマ家の一員でもあり、分家扱いになるとはいえその能力の高さはすでに決闘などで十分理解しているダースヘッド国王と、前の会談時に出た化け物を退治したカグヤの実力を見たカイザリアは、お互いに同じような事を思った。


 ああ、もうすでにグノーウは自ら滅びの道へ足を踏み抜いてしまったのだと…‥‥




 一応元皇帝と、一国を治める現国王。互いの胃に、でかい穴が開きそうだと改めて感じたのであった…‥‥

ああやはり、馬鹿は爆弾を巻き込む運命にあったようだ。

いや、爆弾どころかマジモンの化け物レベルの奴を。

果たして、その事に気が付けるようなものがニューデストロイ帝国にいるのだろうか?

次回に続く!!



【一気に大雨を降らせて水害とかはどうでしょうかね?】

「それはあまりやりたくはないな。無関係な人は気が付かれずに、関係者のみをだな」


(……なぁ、ダースヘッド。グノーウは生きた状態できちんと制裁を与えられるだろうか?)

(…‥カイザリア、生きた状態の定義にもよると思うぞ。下手すると頭だけで生きた状態にされかねん)

(あのバカ息子……きちんと調べていないのだろうか?)

(もしかしたら、皇帝になれた喜びで油断して抜けているのではないだろうか?)


 密かにアイコンタクトで、ダースヘッドとカイザリアは語り合うのであった……

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