#129
新章開始!!
短い章だとおもうけどね。
SIDEカグヤ
…‥‥決闘から数年経過し、いよいよカグヤたちがネフィトリアン学校を卒業する時期が近づいてきた。
もうそろそろ春を間近に控え、新芽が出たりと生命の息吹が少しずつ出てきている中、皆は卒業式へ向けての準備に追われていた。
卒業後に就職する者、田舎に戻って一旦そこで何をしたいか考え直す者、嫁ぎ先が決まってそこへ向かう準備をする者、そして領地へ戻って次期当主として学ぶための用意する者など、皆様々な事情がありつつも、卒業式を楽しみにしていた。
そんな中、カグヤが卒業後に侯爵として、結婚式をあげたら公爵として治める土地が、この時期になってようやく完全に確定したようである。
治める地は、帝国と王国の間に位置しする『ゼルビス』地方。
そこそこ土壌も豊かであり、村や街もいくつか点在しており、条件としてはかなりいいところであろう。
また、カグヤの婚約相手には帝国の皇帝の親戚でもあるリースもいることから、その配慮としてかこのゼルビス地方は、帝国領でもあるティラーン湖付近でもあり、いつでもそこと行き来できるようになっていた。
つまり、カグヤのいる場所を仲介地として、帝国と王国の間の橋渡しとなるのである。
国家間の強化にもなるし、大きな戦力とカグヤはなり得るので、互いの国にいるであろう馬鹿を抑える牽制にもなるのであった。
‥‥ただし、大量の書類等を裁く羽目になったが。
「卒業後の住みかの確保、雇う使用人や掃除等をしてくれる侍女、あとシグマ家の方からの念のためにという事で諜報員の派遣及び分家扱いとなるからその手続き…‥‥」
『まだまだたくさんありますね』
「多いですわねぇ」
「というか、さりげなくとんでもないものを混ぜてないかそれ?」
「人間の領地経営が大変なのは、いつの時代も同じらしいヨ」
【諜報部隊が来るならこちらの方で面倒を見たいね。我としては、そういう手足となって動くような人たちがいたほうがやりやすいですし…‥‥】
カグヤのやる書類仕事に、少し手伝いをするアンナたち。
さりげなく精霊のフローリアが混じっているのだが、まぁいいやと皆思っているのであった。
そもそも誰もが楽して貴族になれるわけではない。
きちんとその地を納めるだけの能力が要求され、それに対応せねばいけないのである。
まともであろうと腐っていようと、それなりの仕事量がどの貴族にも来るのだ。
こういった仕事等は秘書を付けたりして対応するのだが、中には他人任せにする人もいるようである。
カグヤの場合、まだ不慣れではあるのだがそのあたりはできるだけ自分でやるようにしたいとは考えていた。
何しろすべてを他人任せにするという事は、なにかがあった時にすぐに動けるわけではない。
人にすべてを押しつける様な、そんな存在ではなく、キチンとできるだけの事が出来て、皆の要望を応えられるような姿を理想にして、今をカグヤは乗り切ることにしたのであった。
「にしてもだ、もうじき卒業式と言うけどさ、結構短かったような気がするなぁ」
ふと、裁いている最中にカグヤはそう感じた。
入学したての頃はどうなるかはわからなかったが、とりあえず下手に目立たずに生きようともその頃は思っていた。
しかし、今はどうなのだろうか?
アンナはもとより、初対面から対決したリース、カグヤの力を見て監視してきたミルル、撃退したらお詫びと言うか愛人として火炎龍たちから送られてきたサラ。
そんな彼女たちと今では婚約をして、周りにずっといてくれることになった上に、シグマ家の三男として小さく終わるはずが、今では侯爵の位、正式に結婚をすれば公爵の位につくことになって、領地経営をさせられる羽目になっているのだ。
そのうえ、精霊の加護も獲得し、その精霊も付いてきた。いや、どちらかと言えば憑いてきたといった方が正しいのだろうけど…‥‥
転生の際に、考えていたことと比べると……明らかに目立ちまくっている。
まぁ、仕方がないとカグヤは思いつつ、書類を見通す。
窓の外を見れば、春が近いのか綺麗な晴天で、花びらが少しだけ見えたような気がしたのであった…‥‥
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SIDE王城
「……ふぅ、もうすぐ胃痛の原因が一つ、ようやく軽減されるな」
バーステッド王国の王城執務室にて、国王ダースヘッドはそうつぶやいた。
長い胃痛の原因であったシグマ家の一人が、ようやく学校を卒業する。
そして自身の娘であるミルルと婚約をしており、落ち着いたところで挙式をする予定のようだが、その事はつまり、長年王家の言うことをまともに聞いてくれない、ほぼ自由気ままなシグマ家とのつながりができることを意味していた。
カグヤはシグマ家の分家扱いになるのだが、その実力を考えても国の手許に置けることはいいことなのである。
迂闊に他国につかれてしまうようなこともなく、本当につながりを持てて国王は安堵しているのであった。
なお、帝国の方でもカイザリア皇帝としては、自身の弟の娘がカグヤの下へ行くことによって、皇族とつながりを一応持つことにはなるので、そちらはそちらで悪くはないことであるようだ。
「文句を言うような輩も、あの一件で一掃できたしなぁ…‥‥」
シグマ家トップ二人とカグヤとの決闘後、精霊フローリアの手腕によってあぶりだされた不穏分子も一掃されており、そのついでに能力を持ちながらも日の目を見なかった者たちを採用して、今この国に尽くしてくれているようで、財政なども右肩上がりなのである。
なお、シグマ家のやばい実力を目の当たりにした人たちの何人かが、すでに隠居したり、どこかへ旅行しに行っているのだが…‥‥当主を譲り渡して、うかつに関わらないように決めたのであろう。
その為、胃痛の原因が減ってい事に、ダースヘッド国王はこの上ない喜びを感じていた。
「あとは王位の問題か」
そう考えると、後回しにしていた問題に、ダースヘッドは目を向ける余裕ができていた。
一応、国王として隠居をそろそろ考えているのだが、他国では王位争いが起きているのだというのに、このバーステッド王国ではシグマ家と言う存在のせいで王位の押しつけ争いがあるのである。
帝国の方もそろそろ皇位の継承争いが激化してきたそうなのだが、そこまで争わないのがこの王国なのであった。
継承権を考えるのであれば、第2王子ラスター、第3王子マード、第3王女エルザの順で王位継承権がある。
第1王子、第1,2,4王女は他国へ嫁いだり、行方不明になって継承権はなく、第5王女であったミルルはカグヤの下へ嫁ぐようだが、公爵となるので王族籍はあれども、継承権からは抜けることになる。
けれどもここでふとダースヘッド国王は気が付いた。
ミルルとて、王族籍は残ったままだ。
となれば、その子には当然最下位ながらも王位継承権があるのだ。
もしも子が出来ればの話だが…‥‥その子に継がせることも可能なはずだ。
その事で打診でもしておこうかなと、密かにダースヘッド国王は決めるのであった。
……王位継承権とか、皇位継承権とかが本当にめんどくさい。
と言うか、普通なりたがって争うのに、押しつけ合うってどうなのだろうかと、その特殊さに今さらながら苦笑いである。
ついでだし、このカグヤたちの卒業式をいい意味で派手にしようかと実は水面下で動く者たちもいるのだが……
次回に続く!!
……巻き込まれの才能。また出るかも。