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閑話 魂魄獣談義

少々短いかな?

…‥‥深夜、満月が空に浮かび、その月明かりが地上を照らす時、学園の屋上には大勢の者達が集まっていた。



 狼のような外見を持つ者、魚のような外見を持つ者、鎧のような外見を持つ者。


 彼らはそれぞれの姿が違い、型も違うとはいえ、皆同じ種族であり、神によって主の下へ仕えるように下界に下ろされた主と共に生きる存在、魂魄獣。



 そんな彼らは、この学校で気まぐれに、このような集会を行っていた。



 寝る際に主の体内へしまわれることもあるのだが、基本的に皆出されていることが多いのでこうやってこっそり皆で集まることができるのである。





 この魂魄獣だけの集会。


 もともとは、何年も前にこの学校のとある生徒の魂魄獣が立案し、面白半分で始めたのがきっかけとされているが、伝統のように同学年の生徒を主に持つ魂魄獣たちが、こっそりと集まるようになって、みなで仲良く近況報告や、主自慢をしたり、情報交換をする場となっているのであった。



……猫の集会みたいなものだなとツッコミを入れられたこともあるが、猫の魂魄獣も混じっているのであながち間違ってはいないと、皆で笑い飛ばしたこともある。





 だがしかし、今回ばかりは少々いつもとは事情が異なり、皆は楽しそうな雰囲気ではなく、緊張していた。


 そう、今夜の集会はいつもとは違うのである。




【……さてと、今宵良く皆集まってくれましたね】

『はぁ、まさか貴女が魂魄獣だけの集まりに関わろうとするとは思いませんでしたよ』


 集会の中心にて、とある女性が姿を現し、その言葉に魂魄獣の中でも彼女の事を知っている者が、思わずため息交じりにそう発言した。



【ふふふ、だってこういうのって我は一度交じってみたかったもの】

『そうは言いますけどねぇ…‥‥精霊フローリア、精霊は神に近い存在故に貴女の存在は、神からこの世に送られてきた魂魄獣にとっては緊張してしまうんですよ』


 笑みを浮かべてそういう精霊に、唯一この中で他の魂魄獣とは少々事情が異なるので彼女に対面しても平気なアンナが呆れたようにそう言い返したのであった。








 今夜の集会、それは精霊フローリアが企画したものである。


 カグヤとその彼女達に加護を与えている彼女は普段は姿を消し、校内を自由に飛び回っているらしい。


 その飛び回っていた中で、偶然今夜の予定だった魂魄獣の集まりを企画していたある魂魄獣を見つけて、面白半分で尋ねた後に、話を聞いて参加して見たくなったのだというのが、彼女が主催した理由であった。



 ただ、アンナの言葉のように精霊は神に近い存在。


 そして、魂魄獣はその神から主の下へ送られているがゆえに、精霊から神に近いものを感じ取り、格上の存在であると本能が呼び掛けて、緊張してしまうのであった。



『そもそも魂魄獣だけの集まりに、精霊が参加するのは聞いたこともありませんけどね』

『あ、アンナ殿、そのあたりにしてくれないでありますかね?我輩にとってこの空気はちょっと…‥‥』


 フローリアに対して、生まれが少々特殊なアンナは強気な態度で出ていたが、ミルルの魂魄獣である物質型の鎧の魂魄獣であるナイトマンは、雰囲気的に悪化しないように、鎧だけしかないが冷や汗をかいているかのような気分になって、いさめようと動いた。


【まぁまぁ、別に良いじゃないでしょうかね。我だって今夜は気まぐれで参加したし、皆緊張をほぐしていつも通りにやってほしいのよね。これは我からのお願いだけど…‥‥いいかしら?】



 フローリアの問いかけに、みな肯定して首を縦に振った。


 流石にここで精霊の機嫌を損ねるのは危険だと、みな思えたからであった…‥‥











 時間がある程度たつと、いつの間にか精霊に対する緊張感が和らぎ、皆の雰囲気がいつものように戻っていった。


 いつしかフローリアも皆のたわいのない話に混じり、談笑し、ツッコミを入れて呆れ、同情し、すでに仲間のような雰囲気となった。





 平穏に話していると、いつの間にか空が明るくなりかけていることに皆気が付いた。



【……さてと、今夜の集会はこれでお終いかしらね】

『ピキ―ッツ!!』

『ワオーン!!』

『ニャァー!!』

『プゲルフゲル』



 終わりが近いことをフローリアがつぶやくと、みな同意するかのように鳴き声で返したり、言葉を話せるものはそうだと言い返す。






 精霊が加わるというハプニングがありつつ、無事に終わったのだと安堵する魂魄獣もいて、主たちが目を覚まさぬうちにそれぞれの主の下へ、みな散らばって解散して行った。






 魂魄獣同士の集会…‥‥不定期に行われ、そして情報交換の場でもある魂魄獣たちにとっては憩いの場所。


 普段主に仕える者たちにとっては、隠していた本音もはけて、談笑もできて精神的にリラックスできる場所。



 この晩から、精霊フローリアも魂魄獣の集会に時折参加するようになったのであった‥‥‥‥









【しかしねぇ、我が見た限り愛し合っているのはわかっていたけど、あのカグヤがそこまで鈍感男だったとは、想像がつかなかったわね】

『やっぱり皆の間でも噂になったりしますし、本当にカグヤ様って困ったところがあるんですよねー』


 いつしか、アンナも気軽に話せるようになっていて、密かな親友となったのも言うまでもない。


 そしてその陰で、時折寝床でくしゃみするカグヤの姿があったという……



密かに真夜中、こんなことが行われているのであった。

ちなみに、猫型の魂魄獣も参加しているのだが、一応この場でアンナはおとなしくしているという。

しかし翌日、リースの魂魄獣であるニャン太郎を抱きしめたりして、おとなしくしていた反動が出たりするのであった。


『フニャァァァァァ!!』

「おい本女!!またニャン太郎を!!」

『だって可愛いんですよ!!猫って本当に私は好きですからね!!」

「だったらいちいちその谷間に挟むなぁぁぁぁ!!窒息しているって!!」



……ちなみに、作者は猫は好きでも触れません。アレルギーとかじゃなくて、感覚的に恐怖を抱くんですよね。だからちょっとやってみたい欲望が、どうも登場人物たちに反映されるようで…‥‥

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