#128
事後処理的な話かな?
最近暑いですから水分補給はこまめにしておきましょう。
SIDEカグヤ
「あだだだっ!!全身筋肉痛で痛いんだけど!!」
『私も久し振りに全力を使い過ぎたせいか、筋肉痛過ぎて本の状態になってもページをめくることも、痛たたたっ!?』
「……なんというか、大変そうよねカグヤとアンナ」
「無理もないだろうな。シグマ家の中でも最強クラスの相手に全力で挑めば、もう限界突破していてそうだしね。と言うか、一晩寝て疲れが取れたかと思いきや、まさか筋肉痛とは……」
「一応、この湿布を貼っておくヨ。これ、火炎龍の長がたまに痛む腰に使うやつで、効果はばっちりあるヨ‥‥‥ちょっとちょろまかしてきたけド」
「それっていいのかよ!?」
『あ、でも効果はいいやつですね。薬効成分とかは本物のようですよ…‥‥少々口に出せないようなものも混じっているようですが』
「口に出せない物ってなんだよ!?」
決闘の翌日、カグヤとアンナが目覚めると、全身筋肉痛であり、ミルルとリース、サラがお見舞いに来ていた。
筋肉痛の原因は、昨日の決闘時にどこかの段階で体の限界を超えて酷使していたところがあったという事である。
予想では、テリアスの放った魔法でボロボロになった時点で実はもう限界だったはずなのだが、着ていたアンナお手製の魔法陣付きの衣服の効果と、戦闘中の集中力のせいでその限界に気が付かない状態だったのではないかという事である。
何はともあれ、今は二人とも体をほとんど動かせない状態であった。
「なんかもう、ほぼ死闘に近かったからなぁ……流石に母上の才能により変身後の攻撃とかすさまじかったしね、痛たたたた…‥‥!!」
「もう、カグヤたちは今日一日安静にしていたほうが良いですわよ」
「そうそう、今日はゆっくりと休んでおけよ。世話をしてあげるからね。あ、本女は自力でね」
『あなたの手を借りるくらいなら自力で』
ビキッツ!!
『はうっつ!?』
「本の姿でどう痛いのかがわかりにくいけど、相当やっぱ体に無理が掛かっていたかもな」
ページを開いた状態で、固まったアンナに、カグヤは苦笑した。
見て見れば、開かれたページには今のアンナの心境が書かれているのか「痛い」の一言だけである。
人の姿の状態だったら、真っ白に燃え尽きてぶっ倒れておるような姿になるだろうと皆予想できた。
決闘に勝利したのは良いのだが、やっぱり無理は禁物だと改めてカグヤは思うのであった。
「あれ?そういえば母上たちは今どうしているんだ?」
「えっとテリアスさん……いえ、きちんと正式に婚約が認められたのでお義母様と言ったほうが良いのでしょうかね?カグヤたちとの決闘後、お義父様に支えられて控室に戻った後、なにやらお父様の下へ向かったようですわね」
「きちんとした今後の手続きとか、婚約の際の支度金などについての話だそうだ。ついでに言うなれば、カグヤ、お前卒業後に侯爵となって、ミルルが嫁いでくれば公爵となるだろ?その際に貴族としての義務として、領地経営をさせられるようだが、その与える領地についての話し合いもしているそうだ」
カグヤの場合、元々がシグマ家の者であり、分家として動くことになるのだが扱いとしては慎重に行くようである。
そもそも決闘の際に見せた実力でそうやすやすと行くような相手ではないという事を、観客席にいた貴族たちに見せつけてしまったわけでもあり、出来るだけ良好な関係を結んでおきたいとも考える人がいるだろう。
「そこで、出来るだけ悪心の無いような奴が経営している領地に隣接したほうが良いのではないかというものあるそうだ。要はご近所づきあいで大切にできるような人がいる領地が隣にあったほうが良いだろうという事だしな」
「どうやらリースの親戚でもある帝国の皇帝からも意見が出ていて、帝国に近い領地のほうが良いのではないだろうかと言うのもあるそうですわね。この機会に、王国・帝国の関係の強化も企まれているそうですわね」
「人はここぞとばかりに狙うもノ。そういうところは人しかできないように思えなイ」
それぞれからの話を聞きつつ、カグヤはふと気が付いた。
「あれ?そういえばフローリアは?」
「ん?そういえば姿が見えませんですね」
「まぁ、彼女は精霊だし、自由気ままなんだろうな」
この場に精霊フローリアの姿がないことに皆は気が付いたが、基本的に自由に姿を消したりして周囲を漂っているようなので、気にしないことにした。
……と言うか、考えないほうが良いような予感がしたのである。
何しろ国を栄えさせ、滅びもさせる精霊と言う存在。
考えようにもその思考は想像不可能な可能性もあるし、うかつに怒らせるようなことができないからね。
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SIDE王城
「…‥‥あのな、この後始末をどうつけろというんだ?」
「「「「「「ひっつ!?」」」」」」
カグヤやアンナが筋肉痛で悶えてるその頃、王城ではある貴族たちが招集をかけられ集まっており、そして現在、皆がある存在におびえていた。
精霊?シグマ家の当主とその妻?いや、その存在におびえているのではない。
普段は胃痛に苦しみながらも、あくせくと働くダースヘッド国王……めったに怒りをあらわにしない王が、今貴族たちの前でかつてないほどの怒りの形相でそこに立っていた。
「……シグマ家の三男にして、我が娘の婿となる相手、カグヤ殿を暗殺しようとしたことだけで私は怒っているわけではない。むしろ胃の負担の一つが消え」
「それは私達の方が許しませんからね?」
「……コホン、とにもかくにも、それだけがこの怒りの要因ではないのだよ」
テリアスの言葉に、一瞬びくっと背中を震わせたダースヘッド国王は、咳払いをして今のピロっと出た本音をなかったことにして、その事で問い詰めているわけではないといった。
「私が言いたいのはな、本気でもう頼むからこれ以上胃の負担を増やすなという事だ。お前たちは後先も考えずに、ただ今あるお前たちにとって都合の悪い存在を排除しようとしたのだろうが…‥‥それが一番の大迷惑をこうむりかけたのがわからんのなこの馬鹿野郎共が!!」
普段は温和で、胃痛に苦しむ国王が、ここまで激怒した様子を見たことが無い者たちは顔を青ざめさせた。
「まず、カグヤ殿を暗殺しようとしていた者たちに告げるが、その内容は全て此方のの精霊様がお聞きになって、きちんとその証拠書類や魔法によって記録されていた。……が、それだけではない。シグマ家の者たちにもお前らの企みが筒抜けであったのだ」
精霊が誰にも悟られずに自分たちの企みを記録していたことに、集められた貴族たちは驚くが、その後に続いたシグマ家にもバレているという言葉に、顔を青ざめさせた。
諜報員などがいることは知っていたのだが、一応シグマ家の一員を狙う計画でもあったので、誰にもバレないように厳重に警戒を彼らはしていたはずなのである。
だが、シグマ家の方が一枚上手で、その警戒を潜り抜けて、その場で発された言葉を一字一句間違えずに記録していたのである。
その時点で、すでに敵に回してはいけない家に完全にばれたことに彼らは顔を青ざめさせた。
【‥‥‥ついでに我の方からの発言もいいでしょうか?】
と、ついでの射撃とでもばかりに、精霊フローリアは発言をした。
【あのですね、貴方たちは本気の本気でやっている大馬鹿野郎ですかね?我の加護を与える者の命を奪おうとすることを考え、自分達の方の悪行には目をつぶって私腹を肥やそうとしている者は、我はものすごく嫌いなんですよね。防ぐことは致しましたが、それでもやはり煮えくり返るほどの怒りを我は持っているのです。かつて、国から繁栄を消し去り、滅ぼしたことのように、今まさにその再現を行おうかと考えも致しましたよ」
帝国と王国の間にあるティラーン湖。
かつてその地には栄えていた国があったのだが、ある事をきっかけに滅びの道を辿った国があったとされる。
その滅びの一因には精霊の怒りがあったともされており、その精霊の加護を現在受けてるカグヤを暗殺すれば、再びその時同様に滅ぼすつもりだとフローリアは宣言したのである。
その言葉で、青色を通り越して、もはや集められた貴族たちの顔は真っ白になっていた。
「……と言うわけでだ、今回はその一歩手前で精霊様はとどまってくれたのだが、もしお前たちの計画が成功していたらどうなるかはわかるな?国を亡ぼす原因となっていたことを…‥‥‥もう少し、その無能かもしれない頭でも考えて分からなかったのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ダースヘッド国王の怒声が飛び、真っ白になって、もはや聞いているのかすら怪しい貴族たちはこれから言い渡されるであろう処分を予想し、がくがくと震え出した。
「娘の婿、つまりは王族の系列に外から入るとはいえ、それに連なろうとした者へ暗殺未遂、シグマ家の者を暗殺しようとして、シグマ家の報復を考えていなかったその愚かさ、そして、精霊の加護を受けている者であり、この国を滅ぼさせる要因となりかけたその罪を考え……ある程度の者たちは貴族籍剥奪か蟄居処分。ついでに領地削減もしくは取り上げ、増税。そして最も深くその企みに関わっていた者たちは国外追放か永久幽閉、もしくは貴族籍剥奪からの強制労働の処分をここで言い渡す!!」
びしっと指を突きつけ、そう沙汰を言い渡すダースヘッド国王。
死罪とかもありそうなものだが、今回それを言い渡さないのには…‥‥「死ぬとそれで終わってしまうから」と言う理由であった。
普段おとなしいほど怒らせると怖い。
その言葉はまさに、ダースヘッド国王にあっていると、その場にいた者たちはそう思うのであった。
ついでに、これはあくまで「王家から」の処分である。
シグマ家が裏でどのようにして彼らを処分していくのかは……神のみぞ知る。
「シグマ家がやった処分方法じゃと?知りたくもなかったわい!!」
そう答えるのは、世界の外からその処分方法をつい見てしまった神であった。怖いもの見たさゆえに見ちゃったのだが、神ですら後悔するというか、ドン引きするレベルだった処分をされた貴族たちがいたのだが…‥‥それは、歴史の闇に葬り去られたのである。
その闇に葬る判断をしたものに、神は英断だとほめたのであった。
次回に続く!!
……珍しく国王激怒。毛生え薬とか胃薬などを追加しとかないとね。
次回は閑話orサイドストーリー?
その後に新章……かな?