#126
どうしてこうなった?と、執筆後の自分は首をかしげています。
本日2話目!!
SIDEカグヤ
ガキィン!! キィン!! ギィン!!
剣戟が響き渡り、カグヤとアーデンベルトの打ち合う剣から火花が飛び散る。
「ふふふふ、息子もだいぶ強くなったようだな」
「そりゃどうもっと……!!」
息子の成長を喜んでいるようで、剣の力をより増していくアーデンベルトだが、撃ち合っているカグヤからしてみればたまったものではない。
「大剣豪の才能」が有れども、アーデンベルトも同様の才能があり、そして純粋な努力や経験の差で考えるのであれば、カグヤ以上の実力を持っているのは当たり前。
前線から引き、今はシグマ家の当主の座に座っているのだが、元々はシグマ家の者ではなかった。
聞いた話によると、カグヤの母親であるテリアスと激闘を繰り広げ、その末に当主となったのだが、シグマ家に組み込まれた時点で、それだけの実力があるのは予測ができただろう。
そして、剣の鍛錬も欠かさず行っているようであり、若い時に比べてむしろ落ち着いた剣技をするために、より強者となっているのだという噂であった。
そして実際に戦闘してみれば、噂通り、いやそれ以上の実力であろう。
家にいる時、カグヤに稽古をつけてくれた時もあったが、あの時でさえとんでもないほどの強さがあってアーデンベルトにはカグヤは勝てなかった。
その為、このままただ何もせずにいるだけであれば、敗北は確実。
……だがしかし、カグヤはおとなしく負けるつもりはなかった。
決闘のために持ちだしてきた剣にひびが入り、いつ折れてもおかしくない状態となってもその時をカグヤはうかがう。
アンナとあらかじめ作戦を練り、其のためだけに準備してきた物があるのだ。
ギィン!! ガァン!! ガキィン!!
……バキィッツ!!
ついに剣が耐え切れなくなり、刃の部分が根元から折れてしまう。
これを好機と見たのか、アーデンベルトは素早くカグヤの首元に彼の魂魄獣でも剣でもあるデュランダルの刃を突きつけようとうごいた。
だが、この瞬間こそがカグヤが待っていた、唯一にして、決定的なアーデンベルトの大きな隙だった。
アンナに頼み、あらかじめ剣の柄の方に、見えないように魔法陣を組み込んでもらっていた。
相手が刃が折れた瞬間を見て、勝利のために一撃で決めようと目を見開くその瞬間を狙っての、攻撃力はなくとも、効果は抜群となる!!
カッツ!!
「ッォゥ!?」
狙いを確実にするために大きく見開かれていたアーデンベルトの目に、突如として折れた剣から閃光がほとばしった。
とっさに手で防ぐなり、剣を斬り飛ばして光を消すようにできたりしたのだろうが、勝利が目に見えていて、確実にこの時アーデンベルトは油断しており、光から目を守れなかった。
そこまでの眩しさでもないはずなのだが、それでも瞳孔が開いていたであろう眼には痛みが走り、ほんのわずかな隙が、さらに大きな隙へと変化する。
そこをカグヤは見逃さなかった。
剣を投げすて、そしてカグヤが持つ他の才能の効果…‥‥「魔拳闘士の才能」で拳に本気で相手をふっ飛ばせるだけの力を籠め、魔法を纏わせ、そのまま隙がある胴体へ打ち込んだ。
「『爆裂拳!!』」
ドッガゴォォォォォォォォォン!!
直撃すると同時に、胴体と拳の間で大爆発が起きる。
そのまま爆発によってアーデンベルトの身体は吹っ飛び、場外へと落ちた。
そして、反動によってカグヤもまた後方へ吹っ飛びかけるが、足元をあらかじめ「植物成長の才能」と「賢者の才能」によって生み出したツタで舞台と結び付けており、ギリギリ千切れかけたものの、カグヤは踏みとどまれた。
『おおおっと!!アーデンベルト・フォン・シグマ様が舞台から落ちて場外負けとなったぁぁぁぁぁ!!』
『押しているかと思っていたところで、まさかの逆転か!!』
実況&司会席の方からの声が響き渡り、観客たちは驚きの声を上げた。
「っつ……!!」
反動で吹っ飛ぶのを防いだが、拳にはしる痛みにカグヤは顔をしかめた。
ほぼゼロ距離での爆発故に、アーデンベルトが来ていた鎧の破片も飛んできたようで、その破片によって傷ついたからである。
とはいえ、真だ決闘は終わってはいない。
踵を返し、アンナの下へカグヤは素早く移動する。
見れば、アンナは現在テリアスと戦闘中であり、飛行魔法でも使っているのか空中で激しい魔法の打ち合いになっているようだった。
あくまでここは地下なのだが、それでも空中戦もできるほどの高さがあるからであろう。
「『戦闘翼』!!」
カグヤは素早く自身も空中戦へ移行できるように魔法を発動させた。
魔法によって武器にも防具としても扱える、ちょっとした万能さをもつ黒い翼がカグヤの背中にできあがり、その翼を羽ばたかせ、カグヤは宙を舞った。
……なお、アンナに教えてもらった戦闘用の飛行魔法なのだが、性能が良い分、効果時間は10分と短い。
その為、短期決戦が急がれるのであった。
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SIDEアンナ
『なかなかやりますね……カグヤ様のお母様、いえ、お義母様とでもいうべきでしょうか?』
「そっちのほうが良いわね。アンナちゃんのような娘も欲しかったよのねぇ」
にこやかに会話をしているようだが、互いに魔法を発動し、相殺させ合うアンナとテリアス。
アンナの方は額に汗が出てきたが、テリアスの方は未だに涼しげな顔をしており、実力差ではテリアスが押しているといっていい状況だろう。
魔法の流れ弾が時折観客席に落ちそうになっているのだが、今決闘において呼ばれてきたその他の魔法が使える者たちが必死になって相殺したりして防いでいた。
と、突如としてその間に声が響き渡った。
『おおおっと!!アーデンベルト・フォン・シグマ様が舞台から落ちて場外負けとなったぁぁぁぁぁ!!』
「っつ!?夫が…‥‥ふふふ、破るなんてカグヤも成長したわねぇ」
己の夫が場外負けしたことを知り、一瞬の動揺は見せたものの、隙を作らないテリアス。
『ええ、カグヤ様だって日夜精進していますからね。巻き込まれて色々な目にあう事が多い分、経験もたくさん積んでいるんですよ!!』
ふっとこぶしを握り、カグヤのことを話すアンナ。
誇らしげでもあり、そして動揺を誘おうと何とか考えているのだ。
「あらあら、だったら次にはたぶん私たちの戦闘へ参戦してくるわね」
「その通りだよ!!」
『カグヤ様!!』
テリアスがにこやかにそう言った瞬間、カグヤがアンナの隣にいつの間にか飛んできていた。
姿を見て、笑みを浮かべるアンナ。
「さてと母上。父は倒しましたし、あとはあなただけだ!!」
「ふふふ、夫の屍を超えて、私のところに来れたのは褒めてあげましょう」
『いや死んでいませんよね!?』
あくまで命を奪ってはいけないのが決闘場のルールであり、アーデンベルトの命をカグヤは奪っていないのだが、いつの間にか死亡扱いにされていたことにアンナはツッコミを思わず入れた。
「でもね、愛しい息子、カグヤ。夫との激闘の後で、私を倒せるかしらね?この母、あなたの成長のためになら絶対乗り越えるべき壁として立ちはだかりましょう」
不敵な笑みを浮かべ、そしてテリアスの周囲にいつの間にか、なにか得体のしれないような気配がまとわりついてきていることに、カグヤたちは気が付いた。
「魔拳闘士の才能で魔法を纏っているのか…‥?」
「いえ、その才能は私にはありません。これはわたしが持つ才能の中でも、母として貴方に最後の壁として使用する禁じ手のような才能…‥‥『闇王の才能』ですよ」
そうにこやかにいうと、テリアスの姿が一瞬にして黒い卵のようなものに包まれ、そしてすぐさまその殻を破り、その姿を現した。
顔には変化がない。
ただ、着ている物がすべてを飲み込むような漆黒の衣になっており、頭の方には何やらまがまがしいような角が生えていて、手には魂魄獣の金槌トーランが、凶悪な大きさの鉄槌となって変化していた。
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『闇王の才能』
王の資質がある人が持つ才能の一種であり、自身の意思によって発動はするが、全身の変化は3時間までで、一度使用すると3日は使えない制限がある。
ただし、制限が緩いようなのだが、その才能の本当の凶悪さは全体的な超・パワーアップであり、手にするものすべての能力を限界以上に引き上げて使用することが可能である。
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「ふふふ、この姿になるのは久しぶりね。さぁ、カグヤ。あなたの乗り越えるべき壁はこの母がなりましょう。絶対的強者にたいして、どれだけあがき、そして活路を見出せるのか?持てる全てをぶつけ、その力の限りを尽くしなさい!!」
そう宣言するテリアスの声だけで大気は震え、その威圧感で観客席の方であぶくを拭いて失神する者が続出。
「だったら全力をぶつけてやるよ!!」
『勝負です!!』
カグヤとアンナは互にテリアスを真っ直ぐ見据え、対峙する。
今まさに、決闘の終盤が近づこうとしているのであった……
……最強最悪の本気のテリアスに対峙するカグヤとアンナ。
決闘というよりも、もはやラスボス戦であろう。
才能、努力、経験、そして想いが激突しあい、決闘の終盤へと差し掛かる。
次回に続く!!
……どうしてこうなった?テリアスが本当にラスボス化どころか大魔王化しちゃった。
さてと、ここで少しまとめておきます。
・テリアス超パワーアップ。所持していたトーランも同様。
・元々魔法で山を消し飛ばせ、愛する人を得るために何十人もの相手をぶっ飛ばしていた。
・近接戦闘にも優れ、母ゆえに息子のためを思って全力で相手。
・決闘ゆえに「命を奪う」のはルール違反だけど…‥‥生きていれば問題ないよね?
……こうやって書くとさ、よくアーデンベルトってテリアスと結婚したよね。ある意味この人が勇者のような気がする。




