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#121

ちょっと短めかな?

SIDEカグヤ


……カグヤたちに精霊の加護があるなどの噂が根付いたころ、ちょうど王城でパーティが主催されることが決まった。


 内容としては、第5王女の婚約の話であり、各貴族にきちんと知らしめることである。



「簡単な通達はあっただろうけど、改めて正式に知らせる意味もあるんだろうな」

『公式の場で堂々と知らせてこそ、今後の障害となる可能性のある人を完全にあぶり出しやすいですからね』



 こういう婚約発表の場だが、大抵の場合は王家に近づきたい人、欲望に素直な人、何かしらの思惑がある人等様々な理由があって、異議ありと唱える人が多いそうだ。


 中には決闘を挑んでとか言う事もあり、その際には王城にあるという頑丈な決闘場へすぐに案内されるらしい。


 

「意外に血気盛んなのかな?」

「そうでもないですわね。貴族の中で決闘にまで持ち込む人は少ないですし、そもそも才能があっても堕落して腕を堕とす人もいるそうですわ」


 カグヤの問いかけに、ミルルが答える。


「まぁ、そもそもカグヤに決闘を挑むほどの馬鹿と言うか、勇者はいるのでしょうかね?」

「過去にそこにいたけどな」

「あ、あれはその……忘れてほしい」


 カグヤの言葉に、リースが顔を赤くして言った。


 かつて、男性に偽装していたリースがカグヤに挑んだことがあったのだが、あの一件のせいで国中の決闘場の強化がされたそうである。


 リースにしてみれば、今は好きになった相手に対して、堂々と決闘を挑んだことが恥ずかしいのだろう。



「と言うか、もうそろそろ採寸終了したころじゃないか?」


 話題を変えるかのように、リースはそう言った。



 


 現在、カグヤたちはそのパーティに向けて正装を整えるために、服屋に訪れていたのである。


 で、その服屋だが採寸を一人一人行って丁寧に仕上げてくれて、王族も利用するという有名店で、その評判は良いものであった。


 なので、ただいま一人ずつ採寸を行ってもらい、服を仕立ててもらっているのだが……今やっているのはアンナなのだが、先ほどから出血多量になった人が多い様だ。



「……店員女性なのに、何で鼻血を吹き出していくのだろうか」

「僕、コホン私の時も同じだったぞ……」


 思い出すかのように、リースはうなだれた。



……アンナは現在魂魄獣だが、元々がハーフサキュバス。リースも同様の種族であり、その肉体の艶めかしさはどちらも母親譲りだそうだ。


 で、そのハーフサキュバスにはサキュバスほどの魅惑とかは無いようだが、自然とその妖艶さと言うか、色っぽさは出てしまうらしい。ただし、全裸時に限り、下着姿とかは少し抑えられるそうだ。


 普段から一緒にいる相手などはいつの間にか耐性ができていて、同性なら少々コンプレックスを刺激される程度だが、まぁ普通に大丈夫なのである。あと、普通にスケベな色欲まみれの人にも効果はないらしい。



 けれども、この福屋にカグヤたちは初めて訪れたのであり、耐性の無さで先ほどから搬送されていく人が出ているのであった。……ある意味悲しい宿命であろう。


 と言うか、採寸には下着姿でいくのが普通なのだが、この服屋の場合、全裸の状態で採寸するのである。


 ……そこは被害を減らすために下着姿で妥協をと言いたくなるのだが、どういうわけか店員たちにもプライドがあるようで、根性でやり遂げて見せると言ったのである。


 で、リースの時はまだ数人程度であったが、アンナの場合は…‥‥


「ふ……私で最後か。だがしかし、服屋の店長としては、最期まで立たねばならぬ!!」

「店長!!ならば私たちがその傍にお供していきます!!」

「だめだ!!犠牲になるのは私だけでいい!!お前たちは、私の屍を超えて行くのだ!!」

「「「て、て、店長ーーーーーーー!!」」」




「……戦場に赴く兵士にようになってないかあれ?」

「本女にどこか負けたような気もするけど……採寸される側にとってもつらいからなこれは。同情してやりたいよ」

「ああいう勇気ある者が居てこそ、この服屋は成り立つのだろうカ?」

【精霊の我は自由に衣服を意志で変えられるから必要はないけど……ある意味これはこれでも面白いことになっているわね】


 繰り広げられる服屋の店員たちのドラマに、カグヤたちは失笑しながらも見たのであった。


 その傍らで、ミルルが少し自分の体を見て、遠い目をしたのは言うまでもない……




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

SIDEどこかの貴族のお屋敷


「……何?全員鼻血を吹き出して再起不能?」

「パーティ会にせめて出られないように妨害しようとした者たちがいたようですが、どうやら採寸現場を除いたようで……なぜか皆血に沈んで再起不能となったようです」


 仮面をつけ、秘密の集会を開いていた貴族たちの下にそのような報告が上がった。


 彼らの中には一応小さな情報を採取する諜報部隊を持つ者たちがいたのだが、その諜報部隊を向かわせた貴族たちからの報告であった。


 その諜報部隊がどうやら服屋に潜り込んだようで、何かものすごいものを見たのか性別を問わずに撃沈し、当分使い物にならなくなったそうである。


「……うむ、妨害はこれで無しかな」

「うらやましいような気もするが……まぁ、パーティの場へ向かう事は確実でしょう」

「そこで王女様との婚約発表も正式に行われるようだしな」


 うーんと悩む者たち。


 そこで正式に婚約発表がなされた後に、異議を申し立ててできないようにすることも可能なのだが……ぶっちゃけ言って、カグヤの方に黒い噂とかがなくて、むしろ文句がほぼ無いような相手としか言えないのだ。


 たった一つ言えるとすれば、カグヤの身分である。



 シグマ家の三男であり将来的に家を継ぐことはないと考えられ、卒業後は領地を少しだけ分けてもらって分家と言うか、一代限りの男爵家になるだろう。


 そんな身分の相手と王女が釣り合うのかと言う文句を言う者が居るのだが、実はこれはどうとでもなる。


 国を栄えさせ、滅ぼすこともできる精霊が後ろ盾になっており、場合によっては王家から特別に爵位が授与される可能性があり、それも王女に見合うだけの位になる可能性があるのだ。


 なので、その身分に関して意義を言おうにも、どうとでもならないような可能性の方が高かった。



「決闘を挑もうにも、情報を集める限り確実にシグマ家の血筋だなと思えるようなものしかないからなぁ」

「決闘を挑むとすればバカ息子とかがいる家だろうけど、そいつらが叩き潰される未来しか見えないな」

「むしろ、廃嫡のチャンスとばかりに切り捨てようとする家もあるだろう」


 実力もきちんと認識している分、この場に集まっている貴族家の者たちはまだ頭が悪いわけではなかった。


「しかし、なんとでも排除してやりたいとなると…‥‥やはり、暗殺と言う手段に行きつくしかないのか」

「どんな強者でも、必ず油断するときがあるのだからそこを狙えばいのだろうけど、問題はどこに頼むかだな……」


 悩み、考える者達。


 その企みが成功するのかは、すでに怪しい感じになってきているのであった……

いよいよ始まる正式な婚約発表の場。

様々な者たちの思惑が交差する中を、無事に切り抜けていけるのだろうか?

次回に続く!!


……なお、服屋の店長はこの後搬送されましたが、やり遂げた顔をしていたそうです。

『と言うか、なぜ全裸での採寸なのでしょうか?』

「本当の客の姿を見て、それに合う衣服を仕立て上げるのがこの服屋の誇りだそうだ」

「そういえばさ、どうも店の外壁とかにも血が流れたような跡があるけど、覗きとかがいたのかな?」

「ん?いたようだゾ?ただ、どうもあっという間に撃沈して言ったようで、気絶している隙に近所の子供たちが落書きしていたヨ」

『……後でこっそり呪いでもかけておきましょうかね。魔法には追跡魔法と言うか、覗き魔限定にたいしてかけられるものがあるんですよ』

 アンナのその言葉に、女性陣は除き滅すべしと同意するのであった。

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