#111
ベスタとか学園に残っている面々も、焦点に当てる話を考え中
「‥‥‥夏の時と比べると、雰囲気が変わっているなぁ」
『あの時は護衛の役割もしていたので、そこまでのんびりする余裕がなかったですからね。旅行目的の視点になって、はじめてこの魅力に気が付けるのでしょう』
ティラーン湖に到着し、とりあえずまずは宿泊するための宿屋へと向かうカグヤたち。
今回の宿屋はどうやら古城の客室用の一等客室のようで、カグヤとアンナが泊まる部屋の隣の方にミルルたちは部屋を取ったらしい。
なぜ、学校のミスコン程度でそんなレベルの宿が取れたのか‥‥‥噂では、ミスコン優勝者が出たとして、その相手に自分が選ばれるかもしれないと考えた者たちが寄付しまくったそうである。
そう考えたのはなぜと言いたくなるが、とにもかくにも豪華な客室は間違いない様だ。
馬車に乗りながら考えつつ、外の景色を見てその光景に思わずほぅっと、どこか息をついてしまうのは全員共通なのだろうか。
「あの時は大変でしたわよね。会談の時の交渉や、そのあとの怪物騒動‥‥‥ゆっくりとこうやって見る時間はなかったですもの」
「親族に当たる皇帝にあったのは覚えているけど、こうやって落ち着いて景色は見てなかったなぁ」
「私は初めて来ましたけどネ。何せ当時は里帰りしていましたかラ」
言われてみれば、サラは当時いなかったので、今回初めて訪れたことになるのであろう。
「ですが‥‥‥カグヤ様、あれがその時にやらかしたと聞く花畑ですかネ?明らかにすっごいとんでもないものだと理解出来るのですガ‥‥‥」
サラが指さした方向にあったのは、ゴールデンクリーンフラワーの群生地ともなった、このティラーン湖周辺観光スポットの一つ、「黄金の花畑」である。
名前にひねりがないように思われるが、「カグヤ花畑」のようなことにならなくてよかったと、内心カグヤは安堵していたのであった。
黄金の花畑の花々は、カグヤが当時出現した毒をまき散らす怪物への対抗手段として生みだしたものであり、その解毒作用どころか浄化作用がとんでもないレベルになっていた。
わかりやすく言うなれば、重油タンカーの流失事故現場が、一瞬で元の海どころか綺麗すぎる海へと変貌するレベルである。この世界にそんなタンカーはないけどね。
その為、どんな毒でも可能な解毒剤などに応用できるので、各国の王族や権力者たちが毒殺を防ぐために服用しようと、実は結構注文されているらしい。権力争いをしている中には毒殺とかがあるようだしね。うちの王国?そんなこと考える輩はいないようです。押しつけまくっているようですが‥‥‥
なお、一応ここは帝国領地とはいえ、カグヤが生み出した花畑であり、商売となった時には、その売上金の一部がカグヤに渡されるようになっているらしい。
現金振り込みと言うか、銀行のような機関はこの世界にもあって、カグヤの口座に振り込まれるのだ。
「‥‥‥正直言って、あまり見たくないけどね。どれだけ高額で取引されているんだよ」
『あまりにも効果が高すぎて、その他の薬草などが売れなくなってしまいますからね‥‥‥帝国の方で規制をかけつつ、勝手に採取されないように見張りもあるそうです』
残高を思い出し、もはや一介の学生が持つのはあり得ない金額だったのでカグヤは遠い目をした。
少なくとも、このままシグマ家を仮に追い出されたとしても、数十年は軽く過ごせそうなほどである。
働かざるもの食うべからずという言葉があるので、一応遊んで暮らす気はないが‥‥‥
‥‥‥平穏無事に古城へ到着し、まずは部屋に入ろうとしたカグヤたちであったが、ここで一つ問題が発生した。
「はい?わたくしたちが予約した部屋が使用不可能ですの?」
「申し訳ございません!!うちの新人が馬鹿をやらかしまして、うっかり火災が‥‥‥」
どうやら、古城内の宿泊用施設の新人スタッフの一人がやらかしたらしい。
聞くところによると、昨夜客が来る前に掃除をしていたそうなのだが、其の時に怪奇現象にあったというのだ。
奇妙な音がして、誰もいないはずの、そして深夜なので誰も起きていないはずの時間帯に、廊下を何か光る物体が通ったのを見て、幽霊化と思ってビビったそうである。
そしてその新人スタッフ、極度のお化け嫌いだったようで退散してと叫びながら、才能で魔法が使えたようで、火の魔法発動。
そして引火である。あっという間に部屋の中が火の海に変わり果てたそうだ。
幸い、すばやい消火措置が取られて部屋一つが使えなくなる程度の火災ですんだようだが、その部屋が‥‥‥ミルルたちが宿泊する予定の部屋だったようなのだ。
しかも運悪く、他の部屋も満室であり彼女たちがここに宿泊するには湖近くか古城近くの別の宿をとらねばいけないそうであった。
知らせようにも連絡手段がなくて、一応全額返金と宿代負担と言う弁償は確定しているようだが‥‥‥
「はぁぁぁぁあ‥‥‥まさかここでこうなるとは思いませんでしたわね」
「ミルルたちも災難だよな。まさかこうなるとは考えられなかっただろうし‥‥‥」
『おとなしく他の宿屋に行くのはどうでしょうか?この古城では景色がいいからと言う理由で宿泊場所があったのですが、近くの宿屋とかでも十分いい部屋があるはずですよ』
がっくりしたミルルたちに、カグヤとアンナは慰めの言葉をかけていた時に、ふとサラが何かを思いついたような顔をした。
「そうダ、カグヤ様達の部屋に泊めていただけませんでしょうかネ?」
「「「『え?』」」」
‥‥‥カグヤとアンナが宿泊する部屋は、元々ミスコンでの優勝賞品として与えられた宿泊場の一室であったが、それ内に広い部屋である。
ベッドとかも宿屋の人が貸してくれるそうで、一緒に泊まる分には大丈夫であろう。
でもね。
「男の俺がここにいて良いのかよ‥‥‥と言うか、ミルルたちは良いのか?」
「そもそもカグヤはアンナさんと一緒な時点で大丈夫ですわよね?今さら増えたって気にしないですわよね」
「それに僕こほん、私は男装して寮で過ごしていたこともあるからな。今さら男子と一緒の宿泊でも大丈夫だ」
「私は従者も兼ねていますし、愛人でもあるので同室でも大丈夫でス。‥‥‥こらえられなくなったら私を好きにしてもいいのですヨ?」
『さりげなく誘おうとしないでくださいよ!!』
サラにアンナは叫んだけど‥‥‥こらえられなくなったらって、じゃあ他の宿行けばいいのに。
そう言いたいカグヤであったが、押しに負けて、結局彼女たちと同室になってしまった。
カグヤは思う。
最近自分はかなり押しに弱いのではなかろうかと。
それに‥‥‥彼女たちと居て別に嫌なわけではない。
けれども、どこか恥ずかしいような気もするし、一緒にいてうれしいような気もする。
その感情が何かは、まだわからないカグヤであった‥‥‥
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
SIDE???
‥‥‥その存在は見つけた。
己の求める者になりうる存在を。
数は多いようだが、一つにまとめれば一人を原点としているようであると理解した。
その原点になっている一人を定め、その者は気配を悟られぬように密かに考えながら接近していく。
求めていた者になりうるのか、それともあの婚約破棄現場の愚者のようになるのか‥‥‥
その判断のために、その存在は準備を始めた。
定めるための試練と言うべきものを、互いに本当に思いあえるのかどうかを確かめるために‥‥‥
‥‥‥密かに何かがうごめく中、カグヤたちは観光を楽しんでいく。
その中で、カグヤが感じている感情は何なのか密かに探し求める。
その感情は何か、カグヤは彼女たちをどう思っているのか。
次回に続く!!
‥‥‥ここで少々お知らせ。活動報告にも書く予定です。
基本的に不定期投稿と書きながら、毎日投稿をしているのですが、7/10から3~4日ほど作者の都合により一時的に投稿がストップします。都合が無事に終わればすぐにでも掲載を再開しますので、心配しないでください。