#110
そろそろ本腰を入れていくぞ!
新章開始!!
SIDE???
‥‥‥帝国の領地でもあり、王国との間に最も近い場所にあるティラーン湖。
その湖の近くにそびえたつ古城は、かつてはその地に繁栄していた国の王城だったという。
ただ、その繁栄していた国はとある婚約破棄によって何者かを激怒させ、崩壊してしまったという偽りがあり、そのため恋人の裏切りなどがないようにと、カップルにとっては絶好のスポットともなった。
今ではやや改装されて観光地の宿泊施設になったり、一部では国同士の会談のために会議場が作られていたりと改造が施されていた。
ここ最近では、夏に出現したとある怪物によって破壊されてしまった部位があったのだが、そこはすでに修理が住んでおり、以前よりもはるかに城は頑強となって復活した。
そんな城内で、観光客たちも寝静まる真夜中、動く存在がいた。
‥‥‥‥カタリ
‥‥‥コトリ
‥‥‥カタリ
足音はほとんど静かであり、よく耳を澄まさねば気が付かないほどの小さな音である。
‥‥‥今年の厚にあった怪物騒動の際に、周囲の地面が揺れ動き、城の地面も揺れた。
そのさなか、誰も把握していなかった城の地下にて、ある存在が目覚めたのである。
人前に出ることもなく、害を与えることもない。
かつて、この城で起きた婚約破棄現場。
その中で激怒したのは‥‥‥その存在だったのだ。
自らを怒りに任せたはいいのだが、冷静になってみればもうすでに国は崩壊していた。
その光景を見て、その存在は自らを封印したのである。
奪ってしまった余計な命への贖罪も兼ねて、眠りにつき、もはや目覚めることはないかと思っていたようだが‥‥‥何が起こるのかは、わからないものである。
そして、目覚めたその存在は場内をさ迷い歩き、ある事を夢見て探し求め続ける。
そう、かつての婚約破棄のようにすぐに変わるような愛ではなく、本当に互いを求めている真実の愛を。
それを成し遂げられるであろう者達を見たくて、さまよい続ける。
たとえ相手が多くとも、本当に心から思ってさえすればいい。
悲劇を生まないために、互いに一生を遂げられる様な者達が現れることを、その存在は今日もさまよいながら探し求め、待ち続けたのであった‥‥‥
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SIDEカグヤ
「ふーん、秋は秋なりの楽しみ方があるのか」
『そのようですね。夏のように湖で遊ぶと言ったことは季節的に厳しいのですが、釣りをしたり、またなぜか秋と冬の時期にだけ温泉が宿近くに自然に噴き出すそうで、効能とかも滋養強壮、疲労回復、苦労性軽減などあるようですね。過去には帝国や王国の皇帝、国王も入浴したとあるようです』
「‥‥‥それってさ、本当に効果があるのか?」
「お父様いわく、『スッキリできる』そうですけど、あくまで一時的だったようですわ」
「へぇ、効能としては微妙そうかな…‥‥それはそうとして、何でここにリースたちがいるんだ?」
ティラーン湖へ向かう馬車の中、カグヤがじっと見るとその場に乗り合わせていたミルル、リース、サラはそっと目をそらした。
現在、カグヤたちはミスコンの優勝賞品を使って、公欠扱いで特別に旅行へ出かけていた。
目的地は夏にも行ったことのあるティラーン湖であり、本来であればアンナと二人だけの旅行となるはずだったのだが‥‥‥なぜかミルル達も一緒に来ていたのだ。
少しだけ答えてくれた情報によると、彼女たちもまた特別公欠扱いとなって、ミスコンでの優勝ができなかった傷心旅行という事のようであった。
(‥‥‥なんか悪いことしたかな)
その事情を聴き、未だにばれていないとはいえ、ついうっかりで優勝したカグヤはそれぞれにすまない気持ちになった。
ただし、アンナは違った。
この3人が、本当は傷心旅行目的ではなく、カグヤと二人きりにさせないためについてきただけだろうという事を見抜いているのだ。
互いに想う相手が同じだからこそ、勘が働き合い、その企みをアンナは見抜き、見抜かれている事前提でミルルたちは受けて立っているのであった。
なお、サラは愛人枠と言っているようで、今回ももしも欲情に耐えられないようであればと、隙あらば迫る気らしい彼女らしいマイペースぶりを発揮していたようであった。
しかし、その行動にちょっと変化が出ているのをミルルたちは見抜く。
愛人前提‥‥‥と言うのもあるのだろうけど、本当に愛されたいような感情があるのではなかろうかと。
(カグヤ様‥‥‥無自覚に敵を増やしていますよ。『天然ジゴロの才能』のせいですか?)
(二人っきり、大人びたアンナの体、成長してきて精神的にもそろそろ来るのではないかしらねカグヤも‥‥‥)
(こういう時ばかり、おいしい目に合ってほしくないぞ本女。正々堂々と正面から立ち向かわせてもらおう!)
(愛人と言うつもりで来たけど…‥‥なんででしょうかネ。あの助けていただいたときから、本当に好意ができたようでス)
バチバチバチっと火花が密かに飛び散り、今静かに乙女たちの戦いが始まろうとしているのであった。
その迫力に、一瞬カグヤは寒気を覚えたのだが‥‥‥‥ここにベスタがいたらこうツッコミを入れていたであろう。
「うらやましいように思えるけど、修羅場に入る勇気はない」と。
馬車は目的地へと進み、内部では火花が飛び散る。
表面上はおとなしくとも、水面下ではすでに激しい攻防が繰り広げられるのであった‥‥‥
‥‥‥鈍感でなかったら、その迫力に圧倒されていただろう。
そして、その温泉の効能は本物なのかと言う疑問もあるだろう。
全ては、その地で決まっていくのだ‥‥‥次回に続く!!
‥‥‥ハーレム系ってさ、こういう修羅場がお約束かな。主人公の気が付かぬ間にこういうを抱く者が増えて、互いに競い合う者たちが増えていく。うらやましいようでも、その立場に立たされると恐怖を感じそうだよなぁ。