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#107

ちょっと都合上と言うか、彼女が気まま過ぎたというか

『エントリーナンバー33番!!サラさんです!!』


 ミスコンはつつがなく進み、いよいよサラの番となった。


 元は火炎龍(ファイヤードラゴン)である彼女はどのようにして自信をアピールするのだろうか。




 そうカグヤは少しだけ興味を持って舞台を見ていたが‥‥‥



『あ、あれ?サラさ~ん、出番ですよ?』

「「「「「???」」」」



 なぜか一向にサラの姿が舞台に現れない。


 先ほど、うっかり見てしまった着替えの最中に、彼女がいたのを覚えているのだが‥‥‥どういう事だろうか?



 と、なにやら司会席に誰かが走って伝えていた。


『えっと、ここで情報が入りました。どうやら参加者に伝言を残していたようです。内容は、「お腹空いたから適当な店に食べに行ク。どうせ愛人枠だし、誰があの賞品を手にしようとも、最終的にそばにいる事が出来るなら問題なイ!」だそうです!』



 その伝言に、その場にいた全員がずっこけた。


 さすがと言うか、人間基準では考えられないような行動を起こすとは‥‥‥もったいないような、でもなんか納得できるような理由であった。


 元は火炎龍(ファイヤードラゴン)だけに、自由気ままなのが彼女らしい。



(‥‥‥って待てよ?)


 ふとここでカグヤは閃いた。


 棄権したりできるのであれば‥‥‥カグヤも出場しなくてもいいのでは?


 ミルルの語りで自信を無くして棄権する人も、サラのように用事が急にできて危険ができるのであれば、適当な理由で自身も棄権できるのではなかろうか。



 希望が見え、カグヤが棄権を伝えに行こうとしたその時であった。


『ではエントリーナンバー34番!!今回の参加者飛び入りの人枠で期待のダークホース!!ツキヨさんです!!今のサラさんの事もありましたので、さっさと用事とかができる前に出てもらいます!!』

「ぶっつ!?」


‥‥‥サラの次の番号だったと、カグヤは気が付いた。


 ごたごたしていて、自分のナンバーに気が付くのが遅すぎたのであった‥‥‥ちくしょう。


 ちなみに、ツキヨと言う偽名はカグヤの前世をカタカナで読んだだけである。これだけでもちょっと女の子っぽいような気がするからね。


 




 用事を思い出して逃げられないようにスタッフが後ろに立って誘導し、否応なくカグヤは舞台に立たされた。


 一応、完全偽装の才能によってカグヤの今の格好は、黒目黒髪ロングポニーテールの女顔であり、着ているのは‥‥‥流石にドレスとかは恥ずかしかったので、普通の町娘が来ているような洋服であった。



「えっと、ツキヨです…‥‥」


 声もばれないように声色も変えて、そんなにじっくり見られない等に顔をうつむき加減にして、自身を持っていないかのように見せる。緊張しているようにも見えるかな?



「アピールですが‥‥‥」


 ここでふと思う。どのようにすればいかにばれなくて、そしてやり過ごせそうな方法があるかを。


 そこそこ皆が扱えそうなものであり、かつ規模が小さめの方法としては‥‥‥




「『蛍火(ファイヤーワ)の舞(ークスダンス)』」


 魔法を唱えると、いくつかの小さな光の玉がぼんやりとカグヤの周囲に浮かび上がる。

 

 小さいながらも、けなげに一生懸命な小さな様々な色の光の玉は思い思いの方向へゆっくりと動き回り、ぼんやりと周辺を輝かせて楽しませるような動きを見せる。



‥‥‥先ほどのリースの時のような明かりを纏った舞とは違い、カグヤの取ったのは己が動かずに周囲に赤色や青色、緑色と言った光の玉を浮かび上がらせて、まるで様々な色を放つ蛍が周囲を舞っているかのように見せたのである。


 本来の使用方法は夜道の道案内用らしいが、コントロールも大雑把で良くて、いくらでも出そうと思えば出せる滅茶苦茶簡単な魔法であるのだ。


 あとほんのりと暖かいので、冬の時期に衣服の中にこっそりと入れてカイロ代わりにもなる便利さもある。





 しばしの間、カグヤの周囲を明かりが舞い、カグヤは動かずにその中心でじっとして、少し時間が経過したところで‥‥‥


「『ミニ・花火ファイヤフラワー』」


 別の魔法を発動し、飛んでいた小さな光の玉は、一斉にポン!!という軽快な音を立てて、あたりにより小さくなった光の粒子となって散って消えていった。



 キラキラと光の粒子が散らばった後、カグヤはそっとお辞儀をして、舞台から引っ込んだ。





(‥‥‥これで目立ってないよな?)


 規模的には小規模であり、魔法関係の才能があれば誰でも使えるような簡単なものであり、かぐやじしんをみせるというよりも光の玉の方を魅せた形である。


 なので、おそらくミルルやリース、この後に出るであろうアンナたちよりは地味で印象に残らないはずだとカグヤは考えていた。




‥‥‥だが、この時カグヤは気が付いていなかった。


 歓声や拍手がなかったのだが、それはただ単に皆が見とれてしまい、現実に戻っていなかっただけだという事を。


 カグヤ自身は気が付いていなかったが、十分幻想的すぎる光景が生まれており、女装していたカグヤ自身の見た目も美しく、派手すぎもせずにその美しさの部分だけを純粋に見せたと皆に思われていたことを。


 そもそも、このミスコンの開催目的は美しさの基準を決めるものであり、その人本来の美しさを求めていたという事を‥‥‥

‥‥‥残るはアンナのアピールのみ。

さてと、彼女はどのように魅せていくのだろうか。

大魔法使いの本気、ここで発揮‥‥‥出来るか?

次回に続く!!


‥‥‥なお、サラは胸元と肩の部分が開く燃え盛るような真っ赤なドレスを着て、火を噴いて皆に見せる予定だったのだが、人の美的感覚とドラゴンの美的感覚にはずれがあったのでそれも考えて棄権したのである。

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