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#105

‥‥‥本来のミスコンとは違うような気がするけど、あくまでのその人自身の美しさを競う大会です。

‥‥‥ミスコンの開催が宣言され、いよいよ皆のアピールが始まることになった。


 カグヤとしては、本来は観客席側で楽しめただろう。


 けれども、なぜこの参加者側に自分が経つ羽目になったのか、ものすごく納得できなかった。


 巻き込まれの才能……まさかこのような行事にまで巻き込むとは思わなかったのである。



「はぁぁぁぁぁあ‥‥‥とりあえず俺だとばれないようにどうにかしとかないとな」



 幸いとでもう言うべきか、現時点で完全偽装の才能で女装しているカグヤの事に気が付いているのはアンナしかいないし、それに飛び入り参加で登録した名前は偽名であるためそう気が付く人はいないだろう。そうだと思いたい。



 とりあえず、ばれないように周囲に気を配りつつも、カグヤは控室にて成り行きを見守るのであった。








 今回のミスコンだが、大会側から支給される衣服を組み合わせてそのセンスを魅せつつ、アピールタイムでどれだけ自分を魅せるかと言うのが焦点になるようだ。


 これで水着審査とかあったら‥‥‥最悪だろう。


 リースが一時期男子生徒として偽装していたことを考えると、彼女がいかにして自身が女であることがばれないようにする努力とその苦労をしていたのかが同情できて、今なら語り合えそうな気がカグヤはした。





『‥‥‥続きましては!!エントリーナンバー13番!!我が国の第5王女様であるミルル様だぁぁぁ!!』


「え!?」


 ふと気が付くと、すでにだいぶ進んでいたようで、今舞台に立っているのはミルルのようであった。




 来ている服はどうやらドレスのようだが、派手さを抑えて清純そうな綺麗な薄い青色であり、装飾もそれほどないにもかかわらず、彼女の本来の美しさを持たせるかのような、そんな感じだ。



『おおおっと!!これはなかなかいいですねぇ!!』

『大海に浮かぶ一輪の黄金の花‥‥‥まさにそのはかなさと美しさが調和しています』

『今回の優勝候補の一人らしいからね。清楚さが洗練されているよ』

『これを写真にとればおそらく買い取る人は出るだろうなぁ』


 実況と解説が混じるけど‥‥‥誰だろあれ?セバスクンが3人いるように見えているのだが‥‥‥疲れているのかな?



‥‥‥最初の実況と司会の挨拶時、カグヤはちょうど控室でごたごたしていたために、全くその声が聞こえていなかったので、まさかセバスクンの親戚たちで来ているとは思っていなかったのであった。



「さてと、わたくしのアピールをすればいいのですわよね?」


 と、気が付けばどうやらミルルが己のアピールをするらしい。



 そういえば、アピールってどういうのがあるのだろうとカグヤは興味を持ってその様子を見た。


「わたくしを魅せるための方法‥‥‥才能を使用させていただきますわ」


 その声が聞こえてカグヤは思った。


 そう言えば、ミルルの才能ってどういうのがあるのかまだよく知らなかったなと。



「『心を響かせる才能』‥‥‥ある物語を話しますわ。とある切ない恋の話を‥‥‥」





――――――――――――――――――――――――――――――――

『心を響かせる才能』

対象の心へ直接感情を訴えかけることができる才能。

演説などで皆の士気を向上させたり、明るい未来を想像させたりして人々を導くことができる、指導者にふさわしい才能。

ただし、全く無意味な話などで感情を訴えかけることができず、本当に本人が感じた感情のみが伝わるので話す内容と時と場所が難しい才能でもある。


―――――――――――――――――――――――――――――

 ミスコンの会場がシンと皆が静まり返り、観客たちも含めてその場にいた皆は、ミルルの話に耳を傾けた。


 それはある王女と仕えていた騎士との身分差がある切ない恋の物語であった。





‥‥‥昔々、小さな国が一つあった。


 そこまで裕福ではないとはいえ、皆が明るく暮らし、すべての皆が幸せに感じられる国だった。


 そこにいたのは、他国へ嫁ごうとする王女。


 そして、彼女に幼きときから従っている騎士がいた。




 他国へ嫁ごうとしているのは、その国との政略結婚であり、侵攻されぬための苦肉の策。


 だが、その王女は昔から一緒だった騎士の事を愛しており、祖の騎士もまた王女の事を愛していた。


 去れども王女、一介の騎士では身分が釣り合わず、周囲は反発し政略結婚が不意になるようなことは避けたいと国王は考え、その騎士を彼女から離れた辺境の地へ赴任させた。


 合わせないようにして、出来るだけ二人の関係を他国へ知られぬように。




 唯一許されたのは、王女が他国へ嫁ぐまでの間、月に一度だけの手紙のやりとりである。


 彼らの魂魄獣は互に鳥だったので手紙を持たせ、往復させてのやり取りだけは許されたのであった。





 離れた辺境の地にいる騎士と、他国へ嫁ぐ運命にある王女にとっては、それが彼らにとって唯一の愛を示すための手段であった。




 互いに相手を愛おしく思い、会いたいと思う気持ちは強くなれども、許されぬ恋。


 そして、王女が他国へと嫁ぐ最後のやり取りで、その時だけ王女は辺境に直接手紙を届けるために騎士の下へ訪れ、そして最後の甘い一夜を過ごした。


 そして翌朝、別れる際に涙を流し、互いに抱きしめ合い、別れたのであった‥‥‥






‥‥‥月日は流れ、王女が他国に嫁いで数年後。


 その他国は突如としてさらに大きな国に攻め込まられ、そして戦火に見舞われた。



 その訃報を聞き、騎士はいてもたってもいられなくなった。


 慌てて辺境から飛び出し、かつて互いに愛を誓っていた王女の下へと彼は向かう。


 道中で流れてくるのは、他国の状況。


 山は焼かれ、草木は枯れ果て、人々は慰み者にされたりうっぷん晴らしをされたりと非道な事が行われていたようだ。



 その話しを聞きながら不安をどんどん大きくし、騎士はようやく愛していた彼女の下へとたどり着いた。




‥‥‥だが、そこに待っていたのはさんざん辱められた後、他国の王との間に出来た子供と共に無残に散った彼女の姿であった。


 

 騎士は彼女の遺体を見つけ、抱きかかえて泣いた。


 好きだった相手が、亡くなったことに深い深い悲しみを覚え、それと同時に深い深い怒りを湧きあがらせた。





‥‥‥それから騎士は怒りに飲み込まれ、攻めてきた大国を一人で乗り込み、そして徹底的に叩き潰した。


 人一人では到底なしえないような所業、その力は愛した者が居なくなった深い悲しみと、守れなかった自身への深い怒りだろうか。


 王女を他国へと嫁がせた原因として、元は仕えていた国にも刃を向け、大国同様に滅ぼした。


 すべての国がその危険性に恐怖し、対処しようと様々な策を練ったがどれもが効果を得なかった。





‥‥‥国々が画策している間にも、彼は怒りの矛先を見失い、ただ見境なく暴れるだけの邪神と化す。


 次々と滅ぼしていき、そして最後の一国となった時にそれは訪れた。






‥‥‥最後の一国、収まらぬ悲しみと怒りを紛らわすかのように暴れ続けた彼の身体はボロボロだが、その心のありようは変わらず、まるで生きた災害のような存在になっていた。


 もはや言葉も通じず、知性の光もないかと思われたその時、彼の目の前に誰かが降り立った。




 彼は尋ねた。


『一体何者だ?』

 

 その誰かはこう答えた。


『‥‥‥あなたを止めにきたものです』。



 その言葉で自分が泊まるはずもないと思い、元騎士だった災害となった怪物がその者に剣を振り下ろそうとした時、ぴたりとその動きは止まった。


 いや、動けなくなったと言ったほうが良いのだろう。



 何しろ、その降り立ってきた相手は‥‥‥彼がかつて愛した王女だったからだ。


 違うのは、全身が向こうが見えるほどうっすらと透けており、その背中には神々しいような大きな白い翼が生えていたことだ。



 彼は悟った。


 彼女が、天使になって自分を止めに来たのだと。


 そして彼女の表情から、元騎士であった彼はその心の叫びが聞こえた。


―――復讐?八つ当たり?そんなものはいらない。


―――破壊?滅亡?そんなものも彼女は全く望んでいない。


―――私が望んだのは、貴方の幸せだけだと。


 政略結婚で嫁ぎ、子を授かって母となり、子を愛しても‥‥‥彼女はずっと元騎士であった彼の事を愛していたのだ。


 そして、殺されるその寸前まで悲しみではなく、ただ元騎士の彼の幸せだけを望んでいたのだ。




‥‥‥元騎士は後悔した。


 彼女が望んでいないようなことを、自分はやらかしまくり、そして世界を滅ぼそうとしてしまったことを。


 後悔にさらされる彼に、天使となった元王女であった彼女はそっと抱きしめた。


―――後悔しなくていい。あなたが選んだことだから。


―――私はあなたの幸せだけど望み生きてきた。だから、出来れば私たちのような悲劇を繰り返さないでほしい。


―――そのためにも、一緒に私と歩みましょう?一緒に世界を巡り、そして悲劇を起こさないためにも。


 そう微笑まれ、彼はうなずく。


 途端に災害のような力が消えうせ、彼はただの騎士へと戻り、そして彼女の前に膝まづいた。



 いつのまにか彼が愛用していた剣が手元に戻ってきており、彼はそのまま彼女の磯の剣をささげた。



 一生をかけて、改めて仕えますという意思のために。



 彼女はふっと微笑み、剣をそっとどかして彼の顔に‥‥‥‥






口づけをした。






 驚きで目を見開く騎士。


 そして、長い長い口づけが終わった後に、彼女は述べた。


 剣をささげるのではなく、一生を己の伴侶として付き添ってほしいと。


 かつて、一緒になれなかった時を取り戻すかのように、改めて寄り添ってほしいと。



 騎士と王女と言う立場ではなく、たった一組の男と女として、恋人同士として、愛しい相手として。



 ずっと、ずっと一緒にいてほしいと…‥‥








「‥‥‥それから騎士は答え、彼女のそばに寄り添いました。もう騎士でもなく、王女でもなく、たった一組の愛し合うカップルとして、二人は世界を回ります。自分たちのように愛し合いながらも、引き裂かれるような者たちが、悲劇が生まれぬように手助けをし続けているのだと、今もなお語られているそうです」




 話が終わり、会場は静まり返った後、誰かが拍手を送り、一気に拍手の嵐が湧き上がった。



 才能で、心に直接響きわたらせるとはいえ‥‥‥物凄い心に伝わったのである。


 と言うか、優勝候補の一人とされているらしいミルルのアピールがこれだとするならば、他の優勝候補とされている人たちはどの様な者になるのだろうか。


 カグヤはそう疑問に思いながらも、今は称賛の拍手を送るのであった。





さてと、まだいるリースやサラ、アンナはどう出るかな?

彼女たちなりに己のアピールを工夫するだろうけど‥‥‥果たして一体どうなるだろうか。

そして、カグヤもどうしようか。

次回に続く!!


‥‥‥実は今回、ミルルが話した恋物語って「チートが(以下略)」の最初の構想案だったりします。

ただまぁ、恋愛系って「ざまぁ」しか思いつかなくて、今の話になっているんですけどね、

もしかしたら、この物語ってミルルが語った話のようになっていたのかもしれません。Ifの可能性です。

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