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#99

100まであと一話!!

SIDEカグヤ


「え?ミルルたちもミスコンに出るのか?」


 ミスコンの話があった翌日、校内の食堂でカグヤはミルルたちから話を聞いていた。


 どうやらミスコンに、ミルル、リース、サラの3人も出るというのだ。


「ええ、わたくしとしてもこういうのは出て見たかったというのがありますわね」

「ミスコン‥‥‥真実をさらけ出す場であり、完全偽装で生きていたころの完全な決別のために僕こほん私は出てみたいと思ったんだよ」

「単純にしょう「「そこはまぁ気にしないで」」もぐっ!?」


 ‥‥‥何かを話そうとしたサラに対して、ミルルがサラの口に今日の学食であった天ぷらを突っ込み、リースがサラの唇をつかんで閉じさせる見事な連携が決まった。


 一体何を言おうとしたのかは気になるけど、その連携もある意味すごいような気がする。



「って、『も』ということは他にどなたか出るのでしょうか?」

『私が出てみようかなと言ったんですよ』


 ミルルがふと気になって尋ねたことに対して、いつの間にか人の姿の状態になっていたアンナがそう答えた。



「へぇ、本女も出るって‥‥‥まさかとは思うけど、アレ(・・)にカグヤが気が付く前にわかったのかい?」

『そうですよ。あなた方が決めるよりも先に見つけましたからね。カグヤ様にはいっていませんけど、まぁ知る必要性がないので言っていません』

「なるほど‥‥‥ですが、魂魄獣である貴方が出ることができますの?」

「出る必要性がそもそもあるのカ?常に一緒な立場だロ」

『ちっちっちっ、こういうのは魂魄獣としてではなく、一人の女性として出たほうが良いですからねぇ』




「‥‥‥なんだろう、ものすっごい怖い雰囲気になってきたような気がするんだが」

「カグヤ、お前が原因だろうけど‥‥‥修羅場を作る才能でもあるのか?」

「ミーとしてはこれはこれでありだけどねぇ、流石に女の戦いは怖いよ」


 何やら互いに火花を散らしているように見える4人の雰囲気に、男性陣は少しおびえる。


 恐怖と言うか、修羅場間近と言うか……そもそも「アレ」とは何だろうか?


 カグヤはそう疑問に思ったが、尋ねることができないような雰囲気なので今はこの空気をどう乗り切るかに全力を尽くそうと考える。


 そして、互いに女の勘、いや愛する人が共通しているという乙女の勘からアンナたちは微笑みながらにして、互いにけん制し合う空気を創り出していたのであった‥‥‥



 この時、この光景を見た男性陣はカグヤに対してこう思った。


 モテるのは良いけど、この修羅場は恐怖か死しか感じられないなぁ、と。


 普段であれば、美女たちに囲まれ気味のカグヤに対して嫉妬や怨嗟の目線を密かに飛ばしていただろう。


 だがこの時、初めて全員カグヤに対して同情を抱くことができた瞬間でもあった‥‥‥




―――――――――――――――――――――――――――――――――――

SIDE王城


 その頃王城では、ダースヘッド国王が帝国の皇帝カイザリア宛の手紙を書いていた。


 この夏にあった会談以来、王国と帝国間で友好的な条約も結ばれて、さらにトップ同士での文通も始めたのである。


‥‥‥何気に互いに息子娘の悩み事や、政務での気苦労などで苦労性なので理解できて、既に親友のような関係になっていた。


 苦労性同士、互いの辛さを分かち合えて、なぜ今までこのような文通を行わなかったのだと、後悔すらしているぐらいである。


 まぁ、過去は過去という事で、今は未来について考えようかとしていた矢先、



「‥‥‥なんだろうか、胃痛の原因が増したような気がする」



 ダースヘッド国王は胃痛の種が増えたような気配に襲われたのであった。




「陛下、そろそろ政務の時間です」


 っと、ダースヘッド国王が胃のあたりをさすっていたところで、臣下の者が知らせに来た。


「おお、もう政治の時間か‥‥‥」

「どうかなさいましたか?」

「いや、なにかこう、胃痛の原因が増えたような気がしてな」


 臣下が尋ねたので、あははと乾いた笑みを浮かべてダースヘッド国王は答える。


 その様子からまたいつもの事かと察した臣下は、そっと胃薬を国王に渡すのであった。


「それはそうと陛下、もうそろそろ学園祭の時期でしたな」

「ああ、そういえばそうだったな」


 ダースヘッドの娘であるミルルが通っている学校で、もうじき学園祭が開催されることをダースヘッド国王は思い出した。


「今年はどうやらミスコンなる物が開催されるようで、発案者は皇国の第3皇子だとか」

「あの男か‥‥‥ナンパ者らしいが、その妹が苦労して調教していると聞く。その者にもこの文通をさせたら良さそうだな」


 同族(同じ苦労性)の気配がして、思わずダースヘッド国王はそうつぶやいた。


 そのうち、同じような悩み事を持つ仲間で語り合えるような行事を国で行ってみるかと密かに検討中でもあるのだ。


 そう考えつつ、胃薬を飲もうとして水の入ったコップを持って飲もうとした時である。



「ええ、そのミスコンにどうやら第5王女様も参加なさるようですよ」

「ぶっ!?ごえっほごっほっほごーっほっつうう!?」


 その報告を聞き、ダースヘッド国王は思わず水を吹き出すと同時に盛大にむせた。



「ミルルが出るだと!?あの子がそういうものに出るとは……」


 まじめな娘の事だから、その様な俗物じみたモノに出ないと思っていただけあって、衝撃はすさまじかった。


「報告ですが、どうやら『好きな殿方と一緒に2泊3日のウフフな旅』とかいう優勝賞品を狙っているようでして‥‥‥」



 一応、この国でも諜報部隊なる物はあり、そのような情報は入ってくる。


 だが、その言葉を聞き、ダースヘッドは頭を抱えた。


「いやそれもう目的が見えているではないか‥‥‥もしかしたら、いやほぼ確実にあの子は‥‥‥」

 

 監視対象にしていた人物だが、いつの間にか親しくなっていたとか言うシグマ家の三男のカグヤと共にと狙っているのではないだろうか。


 と言うか、狙っているとか言う時点で……


「間違いなく恋心を抱いているだろうな。そうだとしたらシグマ家に対してつながりを持てる可能性もあるし‥‥‥うむ、悪い話ではないだろう」


 娘の恋心に気が付き、親として幸せを思う気持ちからしてみれば、隙になった相手がいるなら結ばれてほしいとは思う。


 だが、その相手がシグマ家の子息であると考えるならば、つながりを持てる可能性はあるのだが、うかつに出ればシグマ家そのものから排除されかねん。


「慎重に動け。出来るだけ恋の手助けもしつつ、シグマ家の排除対象とならぬようにな」


 そう命令し、国王は胃痛の悩みが増したように思えて思わずため息を吐くのであった。


‥‥‥ただ、国王がそう命じなくても、すでにミルルの兄弟姉妹がすでに気が付いており、密かに面白そうだと動いていたことに気が付くのはまた別の話である。



 同時刻、諜報員からリースの参加を聞いた皇帝が密かに手助けを考えていたり、火炎龍(ファイヤードラゴン)の群れが独自の情報網からサラが参加することを聞いて、これを機に何とか目立ってカグヤとつながりを持たせられないだろうかと、策略を巡らせていた。


 今ここに、本人の預かり知らぬところでそれぞれの手助けが入ろうとしていたことを、ミルル、リース、サラたちは知る由もなかった‥‥‥


‥‥‥水面下で攻防戦が繰り広げられるミスコン。

果たして、優勝するのは誰なのだろうか?

次回に続く!!


‥‥‥カグヤの巻き込まれの才能ばっちり発動中。ハーレム系の話って修羅場がどうしても欲しくなるんだよね。

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