#95
テリアスの発案も少々盛り込まれています
‥‥‥マッキーナへの制裁は、カグヤの母であるテリアスの提案が加えられ、より悲惨なことになった。
無視され続けるどころか存在自体がなかったかのように扱われるのは序の口。
元々の彼女の目的であった第3皇子のルシスや、シグマ家の兄弟たちは絶対に遭遇しないように心掛け、
協力してくれた女子達には貴族なら社交界の場で、平民なら街中でマッキーナに関する軽蔑したくなるような噂を流してもらいその印象を最悪にしてい居心地も悪くしてどこにも紛れ込ませないようにして、
魅了されかかっていた男性たちには処方箋を渡し、もしかしたら残酷な目に遭っていたかもしれないなどの話を心に刻み込んで触れないようにさせ(母がぶんぶんと金槌の魂魄獣で素振りしている光景を見せながら)、
彼女と肉体関係を持ってしまった者たちには密かに処置を行って、再び情事に移ろうとしたら激痛を覚えるようにちょこっと暗示や薬で細工して関わるのを避けさせた。
ついでに魂魄獣であったデストラーデは、カグヤたちの下で監禁状態である。ガッチガチに固めているので、身動きも取れず、衰弱もできないように栄養注入中。
アンナが神に処分の仕方を問い合わせているようだが‥‥‥神によって最悪の主人の下へ送られて、その所業はもう許されない魂魄獣になってしまったデストラーデに対して、神はどう判断を下すのかな?
こういう事をしてしまった魂魄獣は‥‥‥どうなるのだろうかね?
時は経ち、10日ほどでマッキーナは悲鳴を上げた。
というか、よく10日も持ったな。その根性だけはすごいと思える。俺だったら2日で降参するよ。
そして、マッキーナはラフター皇国の方に帰ろうとしたようだが‥‥‥残念ながら叶わなくなった。
「な、な、な……なんですってぇぇぇぇぇ!!」
帰郷を打診して宛てた手紙の返答が掛かれた、皇国から送られてきた手紙を読み、マッキーナは絶叫したようである。
そりゃそうだろう、何せその内容は‥‥‥マッキーナへの処分決定の知らせだからね。
内容を見なくとも、テリアスの手助けによってカグヤたちはその情報を入手していた。
‥‥‥実はラフター皇国はすでにマッキーナの魅了から解放されていた。
数日前に、実はある協力者たちを呼び出して手伝ってもらったのである。
その協力者たちとは‥‥‥サラから経由して協力を要請した火炎龍の群れ。
シグマ家3兄弟&最強の母がいる状況を見て、一発で快く協力を引き受けてくれた。
やってもらったことは単純明快。
ラフター皇国中に、マッキーナの魅了を解除する薬品を霧状にして、上空からくまなく散布してもらったのである。
薬の量が馬鹿にならないほどの多さに加えて、皇国まで時間がかかったので、その輸送と散布をやってもらったのだ。タンカーが欲しいと思ったけどね。
念のために二度と掛からないように予防薬も散布し、河川等にも流し込んで飲料水からも摂取するように仕掛けてもらいました。
‥‥‥念のために、サラが怪我したことについてカグヤは詫びたのだが、火炎龍の長は笑って許した。
それどころかデストラーデからサラの命を助けてくれたことに感謝をし、それに元々サラはカグヤの愛人としてきているのだから、どのような目に遭っても特に干渉はしないらしい。
その言葉に、カグヤはほっとすると同時に、ついでなのでもう一仕事協力してくれそうな者たちを残してもらった。
‥‥‥マッキーナの魅了が解けた皇国は大慌て。
何しろ、彼女がやらかした所業は王族のコントロールどころか全男性の掌握、気に入らない女性たちを国外追放か余った男性たちに渡すか奴隷行きにしていたからである。
普通に考えても他国からの批判は殺到、信用はガタ落ち。
そして何よりも、他国で同様の手口の犯行を起こそうとしたマッキーナのせいで、シグマ家に怒りを買って最後通牒が渡され、皇国の上空にはシグマ家から来たという何体かの火炎龍達が周回し、滅亡しそうなのが目に見えていた。
たった一人の女によって、あっという間に国が大ピンチになるなんて‥‥‥傾国の美女、いや、傾国の娼婦ってところかな?美女じゃないよあの屑野郎は。
そして、皇国がとった手段は‥‥‥一連の元凶となったマッキーナの捕縛及び処罰である。
国へ戻れば厳重処罰決定。死刑は死んで罪を償わせることなく逃がすという世論によってなくなったのだが、その除伐の方法が相当えぐいものになった。
具体的には爪をはがしては治し、皮膚を切り裂いては治し、目玉をえぐり取っては埋め直し‥‥‥
ありとあらゆる苦痛を与える方法を試しまくり、絶命寸前でまた治してまた苦痛‥‥‥生きながらにして地獄行きだとか。
別名「不死の拷問」と呼ばれる処刑方法で、ラフター皇国では過去に2人しか受けたことがない最悪の処刑なのだとか。
‥‥‥過去にもあったのか?それ何をしたんだろうか‥‥‥
さすがにその処刑方法はカグヤたちが聞いてもドン引きしたのであった。
母上は、もっと工夫を凝らすべきだと言って、超高温の鉄の棒で焼いたり、痛覚神経だけを抜き取って切り裂いては直しのほうが良いと案を出してきたけど‥‥‥鬼畜過ぎます。
あの淫猥女のマッキーナには同情しないけどな!!
ま、やっとようやく最後の仕上げに取り掛かりますかね‥‥‥仲間を傷つけたことに関しては絶対に許すつもりはないし、せいぜい皇国での処刑の前にトドメを刺しておきますか。
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SIDEマッキーナ
おかしい、なぜワタシはこんな扱いをされなければいけないのだろうか。
皆に存在をなかったように扱われ、寮に入れなくなって男共を頼ろうとしても避けられ、目当てであった王子やシグマ家の者たちにすら出会う事が出来ず、路上生活で必死になって通ってみたけどもう限界だ。
それなのに、皇国では皆が今までちやほやしてくれたのに掌返しになって、そのうえ生き地獄の処刑ですって!?
今までワタシがあなたたちの性欲を解き放ってきたのに、なぜ今になってそんな扱いをしてくるのよ!!滅びるがいいわそんな国!!
とはいえ、このまま引き下がることもできず、数日もしたら皇国から強制的に連れ戻す人たちが来るそうである。
しかも、このバーステッド王国の方にも交渉し、ワタシを強制送還させられないかと言う手続きまでしているようである。
ああ、デストラーデ!!あなたはどこへ行ったの!!あなたの力があればあんな奴らを焼き払い、性的に慰めてくれるあの愛しの魂魄獣わ!!
‥‥‥いくら叫んでも、彼が帰ってくることがなかった。もしかしたら、もうとっくの前に消されてしまったのかもしれない。
神から承る魂魄獣であった彼に今まで汚れ仕事をさせてしまって、もしかしたら神の怒りに触れたのかも。
‥‥‥そもそも神って本当にいるの?ワタシは皆に愛されるような魅惑の魅了の持ち主であり、皆が膝まづき、満たしてくれるような存在なのに、貶めるなんてなんて堕神なの!!
そんな神もいらないし!!もうこうなったら最後の手段!!
「‥‥‥シグマ家の三男のカグヤ・フォン・シグマ!!ワタシを好きにしていいからこの状況から何とか解放しなさい!!」
「‥‥‥どこをどう考えたらそう言う結論にたどり着いた?」
学校の屋上で、ワタシはそこで昼寝をしていたシグマ家の子息の一人を見つけ、訴えかけた。
この学校内で無視されるようになっても、噂話とかは私は聞き逃さない。
愚かな男たちを引き込む時に使える手段であり、その人の趣向や好みなどを聞きだせるもの。
その中から、シグマ家の三男がどうも各所との色々なつながりがあって、力も強く影響力があるらしいとワタシは聞いた。
‥‥‥ならば、その男に近づき、愛してもらえるようにすればこの状況をひっくり返せるのではないだろうか?
デストラーデに愛人らしい女を始末するようにと命じたことがあったけど、あれはたぶんバレていないはず。彼が秘密を漏らすわけないもの。
愛人を持つ余裕があるならば、ワタシを加えるのも簡単な事よね?
そう思い、この学校の屋上で最近昼寝をしているらしいという噂も聞いて、向かって見たら案の定見つけたこの幸運は最後のチャンスなのかもしれない。
「ほらほら!!私のこの美しい肢体を好きにできるのよ!!高ぶる性欲をワタシにぶつけてもいいから、何とか出来るならどうかして頂戴!!」
全裸になって、ワタシは見せつけるように叫びながらそう訴えかける。
さぁ、何とかワタシに魅了されなさい。そして絶対に幸せを‥‥‥
「却下。なんで俺がお前のような露出狂にどうこうしてあげる義理があるんだ?」
一蹴され、まったくこの男はワタシの魅了にかからなかった。
才能が元々弱いので薬屋化粧で高めているのに‥‥‥まるで御水屑でも見るような冷ややかな目線を彼は向けた。
「どうして!?ワタシがいれば他の邪魔な男たちも籠絡して近寄らせないようにできるし、下品な他の女たちに圧勝しているこの身体を好きにできるのよ!」
「はっ、滑稽と言うか大道芸を見せつけているのか?お前以上の美女なんてこの世にはいるし、そもそも‥‥‥サラを亡き者にしようと企んだり、シグマ家の兄たちも含めて手に入れてこの世のすべてを掌握し様とか考えていた、ありとあらゆる男たちに体を許したサキュバスもドン引きレベルの女に、誰が好き好むのだろうか?」
「なっつ‥‥‥!?」
な、なぜバレているの‥‥‥!?デストラーデが漏らしたの!?
「言っておくが、元々俺はお前の話を第3皇子のルシスや王女のネリスたちから聞いて、調べて知ったからな?皇国での悪行色欲三昧の話も何もかもわかっているんだ。それに壁に耳あり障子に目あり‥‥‥どんなに企もうとも、お前の計画は全て筒抜けだったんだよ」
「‥‥‥あの皇子かぁぁぁぁあ!!よくもワタシのすべてをばらしましたわねあの女好きが!!」
「ミーが女好きなのは認めるけど、そんなミーが認めていない女はお前だけだ」
「っつ!?」
ふと聞こえてきた声に振り向くと、そこには第3皇子のルシスがいた。
もう様付けはしない。すべてをばらした相手だろうし、こうなったのもこの男の仕業なのだろう。
「ワタシの印象を最悪になるように話したのはあなたですね!!それにこのワタシが追い詰められているこの状況もあなたの仕業ですわね!?」
「ん?ミーはありのままに話しただけだし、そんな状況を創り出せるわけがないよあっはっはっは!!もうすべてが自分基準の脳内スーパーお花畑の淫乱屑女の君は、はっきり言って自分でやり過ぎただけさ」
怒り狂って叫ぶが、どこ吹く風と言うようにルシスはそう告げた。
「ま、そんなわけでおとなしくお前の国で、いや、もうお前の国ですらなく怒り狂った国民たちの前で生きながらにして地獄へと落ちるがいいさ。俺達は何もしていないし、お前がこれまで引き起こしたつけが回ってきたんだよ」
軽く言ったカグヤの言葉に、ワタシはその時何かが切れたような音がした。
「こんのぉ野郎がぁぁぁぁぁぁぁ!!」
もう何も考えず、ワタシはカグヤに襲い掛かる。
このまま首でも締めてと、正常な判断ができない状態で突っ込んだが‥‥‥
『甘いですね』
誰かの声が聞こえて、そのまま勢いを利用されて地面にたたき伏せられた。
「げふぅっつ!?」
『柔よく剛を制す‥‥‥綺麗に決まりましたね』
「な、なによあん‥‥‥」
息苦しくなりながら、ワタシはその相手をにらみつけようとしたが‥‥‥声が出なかった。
自分よりも圧倒的な美貌を持つ相手がそこにいたのだ。
来ている服は露出が少なく、黒っぽい派手さのかけらもないモノだったのだが‥‥‥その服の上からでもわかるスタイルの良さ、肌や胸の張り、風に揺れる美しき髪。
これが神に作られた芸術なのかと同性であるはずのワタシでさえも息をのむような女が、そこにいた。
‥‥‥ああ、だからあのカグヤはワタシの魅了にかからなかったのか。
こんな己なんかよりも比べようにならない美貌を持つ相手がそばにいるから。
マッキーナは理解してしまった。
そして認めたくないのだが、己以上の美しさを持つ女性に決定的に女として負けてしまったことを彼女は悟った。
肉体的苦痛よりも、精神的苦痛よりも最も彼女が味わいたくなかった、本当の苦しみ。
それは、己よりも圧倒的な美しさを持つ相手に、何もかも比べようの無いほど負けている事であり、彼女はそのままたたきつけられた余韻で気絶した。
そして、目が覚めたときにはラフター皇国行きの護送用の場所の中に入れられていた。
頑丈な檻で囲まれ、手足は鎖で縛り上げられ、そしてその横には‥‥‥デストラーデが、もう魂魄獣でも神獣型でもなく、ただのウサギのような獣に堕とされた彼がいたのであった。
いったい自分はどこで間違えたのだろうか。
そして、あの圧倒的な美しさを持つ相手は誰だったのだろうか。
自問自答してもその答えは見つかることがなく、その日、マッキーナは学校から姿を消したのであった……
徹底的にというか、プライドも何もかも、生物の格としても圧倒的に粉々に砕いてみました。
しかしもう少し工夫したかったな。こう、精神的だけじゃなくて肉体的苦痛とか‥‥‥
ま、それは皇国の方で行われるけどね。さすがに描写がR規制にあたりそうだったのでカットしました。
次回に続く!!
‥‥‥次回は事後処理回かな。今回長かったので、ちょっと足りなかった説明とか入れようかと。




