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#93

ちょっとずつ進んでいく計画‥‥‥

SIDEマッキーナ


「ふぅ、結局昨晩はデストラーデは帰ってきませんでしたわね。まぁ、他の男を漁れたのは良かったけどねぇ」


 朝になり、マッキーナは個室のシャワーを浴びていた。


 昨晩、ラフター皇国内での邪魔者の排除の仕方同様の手段を、己の魂魄獣であるデストラーデに命じて実行してもらったのだが‥‥‥結局、朝になっても帰ってくることはなかった。


 まぁ、たまには自身と交わるよりも自由な時を求めたかったのだろうかと思いつつ、適当に昨夜己の欲望を満たすためだけにこっそりと侵入させた男を気が付かれないように退出させて今日の学校の用意を行った。


 ただ、昨夜、女子寮での爆発音があった時に、マッキーナはちょうど激しい情事の最中であり、何が起きたのか気が付いていなかったのである。


‥‥‥最後の晩餐のようなことになったのも知らずに、マッキーナは学校へと向かうのであった。









「‥‥‥あら?おかしいわね?」


 学校到着後、1限目の授業が始まる前に教室へと彼女は入ったのだが、どうも皆の様子が変な事に気が付いた。



 昨日までは男子生徒たちがマッキーナの周囲に群がってきていたはずなのだが、今日は全員マッキーなんてどこ吹く風と言った具合に、元からいなかった(・・・・・・・・)かのような態度で、無視していたのである。


 そればかりか、男性教員たちも魅了に当てられていたはずなのだが、その者たちも全員マッキーなんていなかったかのように授業を行い始めたのだ。



 待てど暮らせど男子生徒たちが近づいてくる気配すらなく、嫌々女子生徒たちに話しかけてみようとしても、なぜか皆すぐにそばから離れて話しかけることもできない。





「‥‥‥どうなっているのよ!?」


 己の魅了は、昨日まで確かに他の男性たちを虜にし、一夜を共に過ごして下僕に出来るほどの力があった。


 だが、今日はなぜかまったく魅了にとらわれている者がおらず、皆どこ吹く風と言った具合にマッキーナを無視、いや、無視しているのではなくその場にいない認識のようで誰にも彼女は気が付かれることがなかった。


「デストラーデ!!いますぐワタシの下にきてこの状況を説明しなさい!!」


 マッキーナは魂魄獣のデストラーデが出るように叫んだが、全く現れる気配がない。


 何処にいようが、マッキーナが呼べばすぐに出たはずの魂魄獣が‥‥‥いなくなったのである。








 魂魄獣がいなくなった不安と、彼女自身が空気と化したかのような雰囲気に恐怖してマッキーナは慌てて自分が今朝出たばかりの寮へ戻ってみたが‥‥‥



「な、何よこれ‥‥‥」


 そこはもう彼女が過ごしていた形跡もなくなって、倉庫のように物が乱雑に置かれていた。



 その光景を見て、マッキーナはへなへなとその場に下手って座り込む。


「ど、どうなっているのよこの状況!!」


 己の魅了が効かない、無視されて空気のような扱い、魂魄獣がいない、そして寮の変貌。


 もはや彼女の残念な頭では理解ができなくなり、あまりにも受け入れらない現実に彼女は気を失うのであった‥‥‥。






――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

SIDEカグヤ


「‥‥‥よし、作戦の第1段階は成功っと」

「うまいこと魅了も抜けて、ついでの副作用も発動しているね」



 マッキーナが気を失うところまで、カグヤたちは陰から見ていた。


 そう、今日ずっと彼女が無視され続けていたのは、カグヤたちの仕業である。



 魅了で己のほしいままにして、そしてサラに危害を加えた女に制裁を加え始めていたのだ。


「まずは皆からの存在の無視‥‥‥これは精神的に来るよなぁ」

『カグヤ様、物凄く悪い顔になっていますよ‥‥‥』


 くっくっくっくと笑うカグヤに、アンナはため息をつく。




‥‥‥男性たちは昨日まで、あのマッキーナと言う女に魅了をかけられていた。


 だが昨夜、カグヤたちは徹底的にすべての魅了された者たちに対して魅了が解けるように調合した解毒剤‥‥‥正確には毒ではないが人を色欲に溺れさせるから毒みたいなものだろうけど、とにもかくにも皆の解放を行ったのだ。


 寝ている隙に薬を飲ませたり、傷口からしみこませたり、でかい注射器でぶすりと刺したりして、すべて処置したのである。



 ただまぁ、あくまで「魅了」を解除する「だけ」の薬なので、再発の危険性がある。


 だが、そうなるには「存在」が認識されていなければいけないようで、つまり「存在」をどうずらして認知させないようにするかが問題であった。


 そこで生み出されたのが己の影とてつもなく薄くさせる薬品であった。正式名称は「忘れる君」と、エリザベスあにうえは名付けたようなのである。


‥‥‥兄上、そのネーミングセンスはいかがなモノでしょうか?





 ま、なんにせよ存在をどうこうするために、木枯らしのような、某影が薄いトラウマスイッチが入る人のようになるような薬を霧状にして、寝ている間に嗅がせたのであった。


 そのせいで存在感はなくなるだろうが‥‥‥


「俺たちは覚えているのか」

「流石に使用した本人が出間になったらまずいからね」

「最後の最後まで覚えていてあげるというのもなんかなぁ」

「ふふふふ、でも面白そうな作戦を立てているじゃない」

「まぁ、犠牲はつきものだろうけど‥‥‥」


「「「んんん?」」」


 ここでふと、エリザベスにスイレン、カグヤは何かが会話に混じってきたことを察知した。


 そして声の主を見ると‥‥‥皆、見たことを後悔した。





 そこにいたのは‥‥‥シグマ家の領地にいるはずであった、テリアス‥‥‥カグヤたちの母が、そこに降臨していたのであった‥‥‥



「情報は大体知っているわよ。焦土にして丸ごと薙ぎ払いましょうか?」

「やめて母上ぇ!!」

「十分シャレにならないから!!」

「それだけは勘弁!!」



 母の一言に、兄弟は団結したのであった‥‥‥‥



まさかの母降臨に驚くカグヤたち(神とかじゃないけど、それ以上に恐怖を合当てる存在なので)。

なぜ彼女がここに来たのか?

何をしようとしているのか…・・・・

大体の予測がついてしまったけど、次回に続く!!


‥‥‥人に無視される、認識されないことは辛いことです。

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