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#92

主人公不在回?

ちょっと嵐の前の静けさともいえるかもしれない、微妙なシリアスです。

SIDEデストラーデ


『ぐっ‥‥‥ここは』


 冷え切った状態で、デストラーデは目を覚ました。


 ふと辺りを見て見れば、床も壁もガッチガチになった氷でできており、まさに氷の牢獄と言っても差し支えないような場所に、自身が入れられている状況を把握する。


 

『そうか、あの時‥‥‥』



 とどめを刺そうとした時に受けた一撃、反撃しようとして逆に受けた攻撃、そしてそこから急速に体が動かなくなり、そのまま気絶したのだとデストラーデは思い出した。



 そして改めて自身の姿を見て見れば‥‥‥


『なるほど、神獣型で人の姿と「雷獣(らいじゅう)」の姿を持っていたのですか』

『‥‥‥っつ!?』


 振り返ってみれば、そこには何かが浮かんでいた。



『‥‥‥本?いや、同じ魂魄獣か』

『同じだとは言われたくないですけどね。己の主を間違った道に歩ませるような方には特にです』


 そこに浮かんでいたのは一冊の本。


 そして姿を変え、人の姿へと変貌する。



『雷獣‥‥‥確か名前の通り、雷を操る獣でしたっけ』


―――――――――――――――――――――――――――

『雷獣』

見た目が黄色い体毛の、ただのでかいうさぎのようだが、額に角が2~3本ほど生えており、雷雲に住み着いて電撃を放つ獣である。

雷雨を引き起こすことも可能なのだが、普段は蓄電に労力を割いており、攻撃的な性格ではない。


――――――――――――――――――――――――――


『‥‥‥まてよ、マッキーナ様が狙っていた‥‥‥カグヤとか言う少年の魂魄獣か』


 ふと、目の前の相手が誰なのかデストラーデは思い出した。


 人の姿になったところはまだ見ていなかったが、本の姿には見覚えがあったのである。


『ええ、カグヤ様にお仕えする魂魄獣のアンナです。貴方同様‥‥‥いえ、そうは思いたくありませんけど神獣型です』


 ニコッと微笑みながらそう自己紹介した彼女は、すぐに真面目な表情へと戻った。



『魂魄獣は神から主となる物の元へ送られ、そして共に過ごす生涯を定められた生き物。主となる人の才能を目覚めさせ、手助けするのは当たり前の事なのですが‥‥‥こうやって、人を害して命を奪う行為をしている時点で、あなたを同族(魂魄獣)だと思いたくはありませんね』

『‥‥』


 冷たい目で見られながら放たれたその言葉に、デストラーデは言い返せなかった。


 もともとは、己の主のために生きてきたデストラーデ。


 主のためにと思いつつ、いつしか手を染めてしまったことに関しては、何も言い返せなかった。





『それにしても、もうほぼ自白していますよね?「マッキーナ」と言う名前を告げたことから、あの女の魂魄獣である、「デストラーデ」で間違いないですね』

『あの女というな!!マッキーナ様と呼べ!!それを言うならばあのドラゴンの娘こそがそう呼ばれるべきだろうが!!』

『まぁ、サラさんは人の姿をしていますが元は火炎龍(ファイヤードラゴン)であるので、ちょっと微妙なところでもありますが‥‥‥それでも、貴方が元々過ごしていたところのように命を奪おうとする行為を実行するなんて馬鹿なんですか?阿保なんですか?大マヌケのあんぽんたんなのですか?』


 暴言が飛び出るが、言い返せないデストラーデ。


 こうして対面している間に、彼は悟っていたのである。


 目の前の魂魄獣は‥‥‥はっきり言って、己よりも格が上だという事に。



『はぁ、とにもかくにもラフター皇国内にいたときのように行動をすぐさま起こしたのが失敗ですよ。ここは腑抜けになった人がまだそこまでではないですし、即制裁決定しましたからね』


 呆れたように溜息をつきながら、淡々と決まった事実を述べるアンナに、デストラーデは目を見開く。


『せ、制裁だと‥‥‥!?』

『当たり前ですよね?もともとラフター皇国からの人達であるあなた方が、他国で生徒の殺害を狙いましたからね?短絡的と言うか、手段を択ばなすぎと言うか‥‥‥あきれ果てますよ』


 すぐにでもマッキーナの元へ向かおうとするデストラーデ。


 だが、身体が動かせない。


『ぐっ‥‥‥何をした!!』

『私()何もしていません。しいて言うなれば‥‥‥この氷の牢獄を作った本人に聞くのが良いでしょう』


 動けなくなってデストラーデから踵を返して、その場を去るアンナ。


 その後ろ姿を見つつ、何とか逃げようとデストラーデはあがくのだが‥‥‥どうしても体が動くことはなかった。


 まるで、この己を閉じ込めている氷の牢獄が、何かしらの力を働かせてデストラーデを動けないようにしているかのように‥‥‥。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

SIDEアンナ


(‥‥‥うん、無意識のうちにちょっと牢獄に細工していましたねカグヤ様)


 氷の牢獄から離れつつ、アンナはその作られた氷の牢獄に賭けられていた魔法の数々を思い出していた。



 もともとは異世界の大魔法使いなだけに、ある程度までならどのような状態の魔法になっているのか理解は可能なのである。


 そして、カグヤが魔法であの魂魄獣を閉じ込める際に作った氷の牢獄についていた仕掛けの数々をアンナは見抜いていた。


 身体能力低下、体力低下、思考能力低下‥‥‥その他もろもろ、ありとあらゆるものが入ったらほぼ出ることが不可能になるような状態異常のオンパレードをかける効果が付いていたのである。


 おそらくだが、カグヤ自身ほぼ無意識の細仕掛けに近いだろう。


 サラに対しての攻撃に対しての怒りを込めて、そのせいで魔法に影響が出た可能性があった。



‥‥‥つまり、愛人とか言われて困ってはいるのだが、サラの事を少なからずカグヤは思っていることを意味する。


『ちょっと妬けますね‥‥‥』


 親しい者達の事をカグヤは必死になって守ろうとしているのはわかる。


 けれども、その中で自分をもっと特別に扱ってほしい。





 魂魄獣は主に仕え、従う存在である。


 主の才能を目覚めさせ、ペットして、仲間として、家族としていつまでも付き従う存在。


‥‥‥そんな存在だからこそ、己の主に対してもっと愛してほしいという欲求が生まれたりもする。


 考えてみればデストラーデも、あの色欲まみれの女に仕えさせられた身とはいえ、主に対する愛情は本物であり、それでいてその暴走を止めることができず、一緒に欲に溺れた哀れな魂魄獣と言えるだろう。



『でも、私のは魂魄獣としての主を求める欲求と言うよりも‥‥‥』


 ふとアンナは自身の事を考え、思わずつぶやいた。


 これではまるで、主を求める欲求ではなく、恋心を抱いているかのような感情ではないかと。


 ずっと遠い昔、いや、自分が自分でなかった存在だった時に抱いていた感情が今になって強くなってきたように思えるのだ。


 求めることは求めるが、ずっと昔から、生まれ変わる以前から想い続けていたかのような‥‥‥



 その想いの理由は未だによくわからない。


 でも、いつの日かその想いが爆発しそうだとアンナは考えるのであった。


 自分は魂魄獣、主に仕え、従い、寄り添う存在。


 けれども、一歩更に踏み出せるとしたら‥‥‥

嵐の前のちょっとした静けさが過ぎて‥‥‥来るぞ、ついにあの人が来るぞ。

己の息子たちに手を出そうとし、搦め手がうまくいきそうにないからって、その大事な人を害そうとして間接的に息子の心を傷つけた相手に対して、憤怒の嵐を渦巻く最強の人が。

次回に続くけど、なんとなく作者はその光景を書かずに逃亡したいところ。逃げられないけどね。


‥‥‥アンナの密かな想い。果たして、いつになったら気が付く、いや、思い出すのだろうか。

「恋愛」タグっていれるべきだったかな?

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