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#91

静かに動き出す‥‥‥

SIDEカグヤ


「‥‥‥サラの容態はどうだ?」

『大丈夫です。各部に電撃によるやけどの跡がありますが、治療をすれば問題なく治るかと』


 サラのところに現れた黒づくめの襲撃者を魔法で作成した檻に閉じ込め、後からなんとか追いついてきた皆で一生懸命サラの治療をしていた。


 寝かされているサラの周囲では、駆けつけてきた治療系統の魔法や薬を扱える者たちが囲んでおり、サラが裸だったのもあって男子は追い出されている状態である。


 一応下着やその他衣服等は最初の爆発らしきもので吹っ飛んだようだが、そこは心ある女子生徒たちが無償で自分達のを着せたのは言うまでもない。



「にしても、ちょっと甘かったな‥‥‥まさか短絡的にすぐに攻撃を仕掛けてくるとはな」


 氷の檻の中に未だに気絶している状態の黒づくめの襲撃者の姿を見ながらカグヤが発した声は、深い怒りを感じさせるものであった。



 サラは元々火炎龍(ファイヤードラゴン)であり、そう簡単には負けないだろうとどこかでおごっていたのかもしれない。


 また、いくら話に聞いていた通りの屑女(マッキーナ)とはいえ、そう単純にすぐに行動に移して、しかも殺すという発想に至るという予想までが出来ていなかったのである。


 まだまだ見通しが甘くて、いつの間にか自身が慢心していたのをカグヤは痛感した。



 そのいら立ちも、慢心からの悔しさもあいまって、カグヤの周囲には感情によってあふれ出た力そのものが形どって、まるで暴風のように渦巻きだし始める。


『ちょっ!?カグヤ様落ち着いて落ち着いて!!』


 カグヤの状態に気が付いたアンナは、慌ててカグヤを抱きしめて押さえつけた。


「むぐぅっつ!?」

『カグヤ様が今ここで感情任せに暴れてもどうにもなりません!!今は落ち着いてください!!』

「むぐぅ、むがぁっ!!」

『暴れないでくださいよ!!サラさんが傷ついたのはあの馬鹿の仕業であって、カグヤ様がそこまで気に病むことではありません!!』



「‥‥‥おい、本女」

『何ですかリース!!』

「いや、カグヤは単にお前の抱擁による息苦しさで暴れていたんだが‥‥‥」

『え?』

「‥‥‥」


 リースの指摘によって、改めてアンナがカグヤを見てみると、落ち着くどころか窒息していた。


 アンナ自身、普段そこまで意識もしておらず、胸部は魔法で重量を減らしているのだが‥‥‥


 その驚異の胸囲が今回、カグヤを窒息させたのである。


『‥‥‥やってしまったぁぁぁぁぁぁぁ!!』

「本女の馬鹿やろぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 カグヤは顔を青白くさせて、召される一歩手前であった‥‥‥まぁ、暴れる気力は失ったのでよかったと言えばよかったのだが。


 


 その傍で、リースの魂魄獣であるニャン太郎が、カグヤに物凄い同情を覚えていたのは言うまでもない。


 ニャン太郎もまた、アンナのあの胸部の凶器によって同様の目に何度も遭ったことがあるからである。


『ニャオーン、ニャニャ(同情するよ、同じ目に遭った同士よ)』


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

SIDEテリアス


「ふふふふふふ、やっぱり馬鹿は馬鹿をやらかしたようね」


 カグヤがアンナによって昇天させられかけていたその頃、すでにシグマ家の優秀な諜報部隊は情報をすべてアーデンベルトとテリアスに届けていた。


 距離はそこそこあるのだが、ほば新鮮な情報が来る秘密は企業秘密である。



「女の敵と言っても過言ではないし、サラさんもカグヤの愛人を語っているけど、私としてはカグヤがさっさと決めればいいのにと思っている娘に手をかけているのは、さらに処罰を厳重化する決定打になるのよね」


 黒い笑みを浮かべながら、にこやかにそう語るテリアス。


 テリアスとしては、自分たちの息子にはどんな嫁が来ようとも、きちんとした相手であるならば容認はする。


 現状のカグヤの周囲の女性関係に関しても、ある程度は把握しており、そのうちの嫁候補ともなり得そうな自称愛人のサラもまた、容認できた相手であった。



 だが、そんな彼女を狙い、カグヤの心の動揺を起こしたという事は、それすなわち息子の心を傷つけたも同様であり、命を奪う事は単純でもそれは生ぬるいと考えさせたのである。


「ラフター皇国の方に工作員を大勢送り込みなさい。息子たちはあの腐れ切った屑女に対しての制裁を与える作戦を立てて実行に移そうとしているようだけれども、その手助けぐらいならうちから出してあげましょう」

「仰せのままに」


テリアスの命令を伝えるために、報告しに来た諜報員の一人がその場を去った。



「‥‥‥ねぇあなた、ちょっと今から息子たちの元へ行っていいかしら?制裁を与える相手を見に行きたいものね」

「良いのだが‥‥‥せめて、学園消滅とかはさせるなよ?あくまで今回の件は息子たち自身で解決するようだし、ここは自立のためにも見守るべきだろうからな」


 ニコッと笑いながらも、それでいて威圧感を放つテリアスに対し、夫であるアーデンベルトは許可を出した。


‥‥‥決してテリアスの恐怖に負けたわけではない。断じて恐怖に負けたわけでない。



「では、ちょっと行ってくるわね」


 そう言いながら、テリアスは部屋から出ていった。



 去った後、アーデンベルトは溜息を吐いた。


「はぁ、どうしてこうも我が息子ながら、いろいろやらかすんだろうか‥‥‥」


 カグヤが持つ才能は知っているのだが、こうもホイホイ様々なことに巻き込まれるのは哀れなように思えた。


 まぁ、己がこうやってかつては「微笑みの撲殺女帝」と呼ばれた相手と結婚できているのもある意味数奇な運命ともいえなくもないので。特に気にする必要はないと思えたが。


 むしろ、マッキーナとか言う今回の件の元凶が肉片を残すことができるのかが、気になる処であった。


 別に生きようが死のうが、どうでも良かったが‥‥‥


やばいよ、カグヤが動く前に別の人が動き始めようとしちゃったよ。

逆鱗どころか滅亡スイッチを押したんじゃないかな今回の首謀者。

一応、カグヤとしても当初の予定に少々過激さを加えるのだが‥‥‥

次回に続く!!


‥‥‥なお、アンナがカグヤを窒息死させかけた件について、その光景を見ていた女子達が、カグヤの兄たちに豊胸薬みたいなのを作れるのであれば、作ってほしいと密かに頼みこんだのは言うまでもない。

どの世界でも、需要がある物は人気があるのである。

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― 新着の感想 ―
[一言] フットワークの軽いラスボスって最凶でんがな。
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