#90
生きていたほうが良いという意見が多いですね。
やっぱり悪役は、死よりも生きて裁かれるべきだという事なのでしょうか。
SIDE対マッキーナ同盟
『ニャ~オ、ニャ、ニャ、ニャァン』
「ふむふむ、やはりそう出てきたようだ。どうやら僕こほん私たちを完全に排除する気で企んでいるので間違いないだろう」
「小物臭感があるのに、何で国を牛耳れたのかが不思議ですわね‥‥‥」
『ラフター皇国の男女比はどうやら男性の方が多いようでして、しかもマッキーナのせいで女性たちが追い出されたり、慰み者へ転売されたりとされているようですからね』
「腐りきっているというのが分かるけど、兄貴も嫌がるような相手だよなぁ」
ネリスのその言葉に、皆はうんうんと頷き、マッキーナに対しての嫌悪感に同意する。
マッキーナが来て2日目の真夜中、校内のとある一角に、秘密裏に建設された隠し部屋にて、マッキーナに対するために同盟が結ばれ、そこにメンバーが集結していた。
事情もすべてルシスとネリスが話し、皆に理解してもらえたようである。
なお、この同盟の構成員はカグヤ、ルシス、エリザベス、スイレンの男子4人と、残りはマッキーナに対して不快感や嫌悪感をもつ学校内の女性たちだけである。
男子生徒たちや男性教職員の方々はすでに籠絡されたようであり、マッキーナに付き従っているような状況である。
「しかしまぁ、まさか女子達全員に協力を呼び掛けて成功するとは思わなかったな」
「そりゃそうよ!!私の相手が奪われたもの!!」
「しかも他の男たちを狙っているあの女に許せると思うの!?」
「教職員も手中に収めていると、もうこの学校が終わってしまうんだもの!!」
「その所業を聞くと、私たちもひどい目にあわされる可能性があって安心できないのですわ!!」
怒涛の女子達による力説に、カグヤ含む残っていた男性陣は思わずたじろいだ。
「とはいえ、あの魅了だって依存性があるように見えるが、治療する手立てがないわけではない。そうですよねエリザベス兄上?」
「ああ、あの女が来る時には間に合っていなかったが、魅了に対抗できる薬品がやっと過剰に飲ませることができるほど生産し終わったよ。|これで別案件で予定していたある事がすぐにでも可能になったかな」
「しかし副作用のせいで本当に気持ち悪いな‥‥‥あの女がいる限りこの嘔吐感が続くのは勘弁してほしい」
「ミーは慣れたよ。元々効いていなかったから服用する必要はなかったとはいえ、念を押して飲んでみたけどこの嘔吐感は平気だね。妹にぎっしりとありとあらゆる気持ち悪い幼虫が敷き詰められた樽の中に詰め込まれて、坂道から何往復も転がされたのに比べると屁でもないよ」
どんな恐怖体験をしたのだろうかこの第3皇子でもあるルシスは‥‥‥
そう思い、皆がネリスの方を向いてみるとどこ吹く風と、別に気にしていないような表情であった。
「ついでに言うなれば、お父様もといダースヘッド陛下にも報告済みですわ。我が国の害になるような相手ならば、ラフター皇国を相手にしてもいいから、とりあえずシグマ家によって焦土と化すのだけは止めるぐらいで頼むとまで言われたのですわ」
「いや焦土って‥‥‥そこまで大規模にするつもりはないんだけどな」
「いや弟よ、すでに母上が動いているらしいという情報が入った」
「‥‥‥え?」
シグマ家最強、最恐の母であるテリアスがどうやらすでに行動に移しているらしいと、エリザベスはカグヤに告げた。
「‥‥‥うわぉ、じゃあさっさとこの問題を片付けないと焦土どころか国一つ消えるんじゃ」
「すでにマッキーナ‥‥‥詰んでいるんじゃないか?」
とにもかくにも、この問題は早期に解決するのが一番である。
「リース、ニャン太郎からの報告だとまずはあの女はサラを狙うようだな?」
「第3皇子に固執していたようだが、シグマ家の事でまずはお前から籠絡しようと考えているようだ。で、堂々と愛人宣言をしているやつから潰していき、己がその隣に立とうと、いや引き込もうとしているようだ」
「いやだよ固執されるのは!」
「ミーとしても物凄い恐怖だったんだよね」
「そういえば、そのサラは?今この場にいないようだけど……?」
ふと、サラがこの場にいないことにカグヤは気が付いた。
「あれ?そういえばそうですわね」
「自室で寝ているとか?『ドラゴンは規則正しい生活を心がけるのでス』とか言っていたと思うが?」
「いくらサラでも寝ているときの襲われたらまずいんじゃ‥‥‥」
チュドォォォォォォォォォォン!!
「「「「「!?」」」」
いやな予感に包まれたその瞬間、いきなり爆発音が響き渡った。
「なんだ!?」
「今のは女子寮の方だったような‥‥‥」
「いそげ!!」
いやな予感が的中した可能性があり、慌ててカグヤたちはその場へ急行するのであった‥‥‥
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SIDEサラ
時間は少し遡って、十数分ほど前である。
「ン~~~~~、今日はもう寝ますかネ」
サラは体を伸ばし、ベッドで寝ようとしていた。
‥‥‥着ているものをすべて脱ぎすてた、生まれたての姿の状態である。
衣服を付けているのは人間の習慣ではあるのだが、中身はドラゴンなので基本的に就寝時には裸で寝る方が楽なのである。
「にしても、あのメス無理だと理解できないのですかねェ?」
ふと、寝る前に最近やってきたマッキーナとか言うやつをサラは思い出した。
マッキーナとか言う人間?のような嫌悪感しかあふれ出ていないやつがいて、サラ自身が狙っているカグヤに対して狙おうとしていたことをなんとなく理解していたが、その程度の色香ではカグヤが動かないのは理解していたので、そこまで気にする必要性がなかった。
火炎龍の一族全体を守るためにカグヤの愛人になるとしたものの、なかなか一線を越える機会がない、と言うよりは最強の護衛ともいえるアンナがそばにいるので、なかなか契りを結べないのである。
また、リースや、最近ではミルルがカグヤに対して恋愛感情のような物を出だしているという事を理解してはいたが、鈍感とも言うべきカグヤの天然ぶりにまだまだ攻略が出来ていないようであった。
サラとしては、自身をカグヤの愛人枠と割り切っているので、カグヤに正妻や側室や愛人2号3号と増えても別に構わないのだが‥‥‥
(‥‥‥でも、ちょっと胸が痛むのはなぜでしょうカ?)
己は一族のためにカグヤの愛人になるのは構わなかったはずである。
だが、次第にいつの間にか惹かれているような感じがして、その感情にサラは少々戸惑っていたりもした。
まぁ、それでも夜明けにこっそりカグヤの寝床に侵入して「突撃そのまま欲に飲ませてみましょう」作戦を止めるつもりはなかったが。
「明日はちょっと趣向を変えて、猛スピードで突撃しましょうかネ?それならあのアンナでも捕らえることはできないでしょうシ」
寝る前にもちろん、その作戦について練り直し、これぞ完璧と言うのを創り上げようとした時であった。
「斜め34度からダイブ‥‥‥ン?」
ふと野生の勘と言うべき様なモノが働き、サラは素早くベッドから離れた。
その瞬間‥‥‥
チュドォォォォォォォォォォン!!
「ッツ!?」
自身の勘が正しかったことをサラは悟った。
己が寝付こうとした部屋で、いきなり何かが爆発したのである。
幸いにして、この程度ならサラは無傷で済んだのだが、壁が綺麗に吹き飛んで外の光景が丸見えになった。
「一体誰でしょうかネ?いきなり消し飛ばすような真似をしでかしたのハ‥‥‥」
臨戦態勢へと入り、サラは身構えた。
「ちっ、いくらドラゴンから人になったという情報があるとはいえ、やはりそう簡単には仕留められなかったか」
声が聞こえ、見れば外に何者かが立っていた。
全身黒づくめの人影であり、姿を隠しているようだが、サラにはわかる。
「貴方、人間ではありませんネ。アンナやニャン太郎、スラベぇ同様魂魄獣の気配がしまス!」
びしっと指を突きつけ、その気配の正体を探りだすサラ。
「ふむ、こうも簡単に大まかに探り当てるとは流石火炎龍だった者とでもいうべきか。他の男子たちの話だと一部では『龍姫』とかまで呼ばれるらしいではないか」
「姿は人間になっていますが、中身までは変化していませんからネ。ドラゴンである私の寝床を争うとした罪は、相当重いですヨ」
ギロっとにらみ、火炎龍の名に恥じない圧迫感をサラは黒づくめの人物に与える。
だが、全くひるむことなく、次の一手を相手は撃ちだそうとしていた。
「できれば突然の爆発での見せしめみたいにしたかったですが‥‥‥『雷爆発』!!」
「『灼熱の息』!!」
指を向け、そこから電撃の塊が飛び出てきたのを見て、すぐさまサラは口から炎を吐いた。
人間の体の状態になっているとはいえ、中身はれっきとした火炎龍であり、まだその能力は消えても衰えてもいない。
むしろ、カグヤに迫れるように研鑽を積んでおり、カグヤに出会う以前に比べて格段にその威力は向上していた。
ドガッシャァァァァァン!!
電撃と炎がぶつかり合い、熱風と痺れるような風が吹き荒れて大爆発を起こす。
「派手な爆発ですが、敵ではありません」
「ハ!?」
しかし、その爆発によって起きた煙の中から突如として猛スピードで出てきた黒づくめの人物に、サラは驚愕した。
その速さが速過ぎてとらえきれなかったのだ。
「直接痺れさせたほうが早い!!『雷麻痺』!!」
電撃を全身に纏い、猛スピードで迫ってくる黒づくめの人物。
さすがに直撃はまずいと思い、サラは逃れようとしたのだが相手の方が動きが速かった。
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ
!!
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッツ!?」
腕をつかまれ、そこから高電圧の電撃が流される。
全身が電撃にさらされ、痛みを感じさせる。
中身はドラゴン、でも外側は人の体であるサラにとっては、ギリギリで耐えられるラインであったが、それでも全身に激しい痛みが走り続ける。
「クックックック、本来ならばマッキーナ様には超弱い気持ちが良くなる程度の電流を流すのですが、貴女には消えてもらう必要性があるので、素早くあの世に逝ける様に超電圧をお見舞いしているのだ!!」
電撃を流しながらご丁寧に説明してくる黒づくめの相手に、サラは振りほどこうとするが、全身が痺れてうまいこと動けない。
「しぶといですね、本来であれば人程度即死の電圧ですが‥‥‥では、この100倍でもお見舞いしましょうか」
「グッ!?」
まだ耐えられる電圧であったが、流石に100倍はまずいとサラは命の危機を感じ取った。
「それではいきま」
「させるかボケェェェェェェェェェェェェ!!」
「「!?」」
突然聞こえてきた怒声に、黒づくめの人物も、サラも驚愕しその声の方を見ると、誰かがものすごいスピードで‥‥‥
「『フレイムスタンプ(跳び膝蹴りバージョン)』!!」
超高温の炎を纏った足全体で、黒づくめの男に跳び膝蹴りを食らわせた。
ジュッドゴォォォォォォォォン!!
「がぁぁぁぁあ!?」
肉の焼けるような音が聞こえた後、黒づくめの人物は全身が火だるまとなり、そのままふっ飛ばされた。
「大丈夫かサラ!!」
「か、カグヤ様‥‥‥ッツ!?」
その人物をカグヤだと認識できたサラ。
ギリギリのところで扱ったのは良かったのだが‥‥‥野生の勘がさらに素早く警告した。
「ぐ、お、お返しだぁぁぁぁぁぁぁ!!」
先ほどぶっ飛ばされた黒づくめの人物が、先ほどよりもはるかに強い電撃を纏ってカグヤにとびかかろうとしたのだ。
「『即死の」
『させません!!』
ヒュッ!! ザクゥッツ!!
「がはっつ!?」
あとから遅れてきたアンナが現れて、刃物にような一撃を与える魔法を素早く黒づくめの人物に放ち、見事にその胴体に命中した。
不意打ちに等しい攻撃に、黒づくめの人物は血反吐を吐いてその場に倒れ堕ちる。
「ぐ、うぉぉぉぉぉっつ!?」
「ひとまず捕獲の『氷の牢獄』」
動き出される前に、カグヤが素早く魔法を唱えて黒づくめの人物は氷でできた檻に入れられる。
そして、そのまま一気に氷漬けになり、捕獲されたのであった‥‥‥。
突然の急展開。
次回に続く!!
‥‥‥ネタバレに近いかもしれない。
と言うか、これもうあれだ。
ラフター皇国内の感覚で馬鹿をやらかした人がいるという事だ。考え無しと言うか、計画性がずさんと言うか‥‥‥