第2話 希望
ど、どうしたらいいんだろう.....。
勢いでプロポーズしたのはいいが、これ以上なんて言えばいいのかわからない。
まさか名前さえ知られていないとは思わなかった。
かなりショックを受けたのは黙っておこう。
目の前にいる美少女は俺を見て戸惑っているように見える。
当たり前か.....急にプロポーズされて困らない訳がない。
俺が彼女のことをちゃんと知ったのはあるパーティーがきっかけだった。
俺の会社はかなり大きいのでよく社交パーティーを開くのだが、筒井財閥に恩を売りたい奴らがこぞって俺に媚を売ってくる。
「きゃー、風里生クン♡♡」
「風里生様ー♡♡」
はっきり言ってこういうのは迷惑極まりない。
――ドンッ
女の人達の集団に押されたお婆さんがこけてしまった。
それなのに、こいつらは謝る気も申し訳ないっていう気持ちも全くないらしい。
「ちょっと、、通して。」
俺はお婆さんに駆け寄ろうとしたが、女の人に囲まれて身動きが取れなかった。
「大丈夫ですか?」
その声は小さかったがとても綺麗な声だった。
「ありがとねー。この年になると足がもろくて。お嬢さんは優しいわねー。」
「当然のことをしただけですよ。気になさらないでください。」
たったそれだけだった。
単純かもしれないが俺が恋に落ちるには充分すぎた。
それから彼女が、俺と同じクラスだということを知りかなり驚いたがチャンスだと思った。
まあ、話しかけることなんてできなかったが...。
徐々に仲良くなろうと思っていたのだが、相内財閥の今の状況と彼女の家での扱いを父親から偶然聞いてしまいプロポーズをすることになってしまったのだ。
しどろもどろになりながら、とりあえずは相内さんと結婚する理由をそれとなく伝えた。
もちろん恋に落ちたということは言わなかったが…...。
「つまり、あなたは私の家の事情を知っているということですか?」
「.....ごめんなさい...。」
勝手に自分の家の事情を知られるのはきっと嫌だろう。
「わかりました。結婚しましょう。」
「えっ?!」
どうやら少しだけ俺の恋に希望ができたようです。