第1話 結婚
「もう1度言っていただけませんか?」
目の前にいるのは多分、同じ高校の生徒だろう。
しかも、ネクタイの色が青なので同じ2年生のはずだ。
同級生にほとんど興味がないので、この人の名前はわからない。
それよりも気になるのは、さっきこの人が放った言葉だ。
「えっと、だから......その...........。」
「結婚と聞こえたのですが?」
私の知っている「結婚」は好きな人同士がすることだ。
それ以外に「結婚」というものが存在するのだろうか。
「あの?」
目の前にいる人はパニックを起こしてしまったらしい。
春なので頭が陽気にやられたのだろうか.....。
「用がないのなら失礼します。」
また、前を見て歩き出そうとした時だった。
「ちょっと待ってくださいよー!」
「今度は何ですか?」
振り返ると、男の人が1人増えていた。
「コイツ、超がつくほど人見知りなんですよー!だから、許してやってください♪」
よく見ると2人はとても似ているが後から来た人はどう考えても成人を超えていた。
「あの、一体どういうことなのか説明願えますか?」
「落ち着いてるねー♪まあ、コイツと同じクラスだから名前ぐらいはわかるよね?」
「........」
「........」
「えー?!もしかして名前わかんない?」
「すいません......。」
この人同じクラスだったんだ...。
「あちゃー...。まあ、いっか!筒井財閥は知ってるかな?」
筒井財閥と言えば、今日本でトップと言ってもいいほど大きな会社だ。
私は相内財閥の娘だが、会社の大きさが違いすぎる。
「えぇ、もちろん。」
「社長を務める筒井健太で~す♪」
「..........」
「...........」
「冗談ですよね?」
「本当ですよー♪」
全く理解できない.....。これはどういう状況なのだろうか。
「簡単に言えば、うちの息子と政略結婚してください♪」
「すいません、意味がわかりません。私とあなたの息子さんが結婚してあなたの会社に利益があるとは思えません。」
私の家はそこまで大きな会社ではないので、筒井財閥に利益はうまれないはずだ。
「詳しいことはコイツから聞いてくださーい♪じゃあね、夢月チャン♡」
「え?おい!親父、もう行くのかよ?!」
そう言うと、筒井社長は去ってしまった。
「えっと......親父の言ってたことは本当です。」
なんとか落ち着いて話出せたようだが、この人は本当に人見知りらしい。
「とりあえず、お名前を聞いてもいいですか?」
名字は筒井なのだろうが、名前が全くわからないままなのは良くない気がしてそれとなく聞いてみた。
「あぁ、そうだね。筒井風里生って言います。」
まだ緊張しているのだろうか、敬語と状態が混ざっている。
「政略結婚って言ってましたが、私と結婚しても筒井財閥に利益がでるとは「それでもかまいません!」
「俺と結婚してください!」