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第16話 勇気
「好きにしろ。」
父親の視線はいつも以上に冷たかった。
自分が間違ったことをしているかのような気分になってしまう。
「まあ、あの女が産んだ娘だ。所詮、そこまでだったんだろう。だいたいお前の母親は何も出来ないクソみたいな人間だったからな。1個褒めるとしたら、この息子を産んでくれたことぐらいだな。」
全身が石みたいに固くなったのが自分でも分かった。
最近は私のことを罵ることはあってもお母さんのことは全く罵らなかったのに………。
「死んでくれて本当によかったよ。」
「いい加減に「もう十分でしょ。」
筒井さんのお母さんの言葉を遮った私の声は想像以上に低かった。
「それ以上言ったら、私絶対にあなたを許しません!」
父親に反論するのは始めてだった。
「なんだと?どの口が言っている!」
父親が私に向かって拳を振り上げたのが分かった。
このままではぶたれるけど、体が動かない。
体を強ばらせて痛みを待ったが一向に来なかったので目を開けると、筒井さんがいた。
「それぐらいにしといて下さい。暴力沙汰にしたくないんで。」