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第14話 忠実
――光里。
懐かしい音の響きが心に染み込んだ。
光里とは私の母親の名前だ。私が小学校の時に亡くなっている。
母親だけだった。
私の味方になってくれたのは。
「お母さんはどこにいるの?」
小学生の時だった。
「うるさいぞ。母親なんてもうこの世にはいない!」
あの時から私は自分の感情を外に出すのが苦手になった。
「お前の母親は何も言わず家事をしてたぞ!」
「お前の母親は口答えなんてしなかったぞ!」
「すいません。」
これまでずっとそうやって生きてきた。
お母さんに耐えれたことなんだから、私も耐えなきゃ…...。
早くお母さんのところに行きたい。
「大丈夫よ。夢月には幸せが待ってるから。それまでの我慢よ。」
私はその時幼かったので何のことを言ってるのか全く分からなかったが今なら少しだけわかる気がした。
「夢月ちゃん、びっくりさせてごめんね.....。光里は、あなたのお母さんは私の親友だったの。それで、夢月ちゃんのことを頼むって言われててね...。遅くなってごめんなさい。」