第13話 先見の明
「わかった.....。家の娘でよければ嫁に出そう。」
あの父親をねじ伏せるとは筒井さんの母親を敵に回すと大変そうだ。
「その代わりと言ってはなんですが、風里生と夢月ちゃん用のマンションを用意しているのですがそちらに引っ越しさせても構いませんね?」
「えっ?!」
その言葉に反応したのは私だった。
そんなことは聞いていない。
筒井さんを見てみると......筒井さんもびっくりしていた。
「母さん?!俺そんなこと聞いてないんだけど?」
筒井さんの顔もかなり引きつっている。
「あれれー?言ってなかったけ?ごめんねー♪」
絶対にごめんなんて思っていない.....。
「それは許可できません。娘はまだ高2ですよ?」
「だからなんですか?ここの家よりは住み心地がいいと思いますが?」
――ドキッ。
「それはどういうことだ!」
「知らないとでも?あなたが夢月ちゃんにしてきたことを。私は詳しいことは存じ上げませんが、だいたいはわかりますよ?」
「でまかせを言うな!」
「そうですか.....。なんなら警察にでも、裁判にでも行く覚悟はありますがそれでもいいですか?」
背筋を冷や汗が伝っている。
さっきまでとは別人のようだ。
「はっきり申し上げましょうか?あなたがこの結婚を反対すれば会社が潰れる。同棲を反対すればあなたの地位が終わる。あなたに選ぶ権利なんてないんですよ。」
「どうしてそこまで......。」
「私は光里が亡くなってからずっとこの時を待っていたのです。あなたの会社が潰れそうになることを予想して。諦めてください。あなたは私に勝てません。」