第12話 疑い
「婚約?何かの間違いでは?」
――やっぱり、そういうと思った。
まさか筒井さんの母親が乗り込んでくるとは思っていなかった。
でもこっちの方が納得するだろうし、信じるしかないだろう。
「まあまあ、落ち着いて聞いてください。」
筒井さんの母親は副社長を務めるだけあって堂々としていてかっこよかった。
「もちろん、まだ決定した訳ではございません。ですが、あなた方の会社にとっては喜ばしいことなんじゃなくて?」
「どういうことです?」
興奮している父の代わりに兄が聞いた。
「家の風里生と夢月ちゃんを結婚させてもらえれば私達の会社があなたがたの会社に仕事を回します。どうです?悪くないと思いますが?」
確かに悪いどころが父親の会社にとってはこれと無いほどの救いになるはずだ。
「ふん、そんなの信用できるか!第一、少しぐらい仕事を回したからって景気が回復するとは思えない!」
「反論するようで大変申し訳ないのですが、私を誰だとお思いで?」
「なっ.....!」
何も言い返せなくなったのだろう。
でも、この人達はどうしてここまでしてくれるのだろう。
自分たちには何のメリットもないのに...。