何も無い世界
俺はダンプに轢かれて死んだ。
じゃあ何故こうして考え事ができている?
実は生きてたとかそういうオチか?
いやいや…高速で走るダンプで轢かれて生きてるわけがない。
てことは…俺は生まれ変わったのか?
交通事故で転生するお決まりのパターンにはまったのか俺は?
じゃあ今の俺は赤ちゃん?
そう思って全身に力を入れてみると…普通に動いた。
あれ? 動くぞ…じゃあ言葉も喋れるのかな?
「あーあー…あいうえおー…あーあーア○ル~…○○○○○!!」
…うーむ…喋りも普通にできる。
これはいったい…
取り敢えず、俺は起き上がってゆっくりと目を開けることにした。
ここはどこだろう。
森か草原か竹林か…はたまた魔界か天界か…
もし本当に転生したのだとしたら、俺の眼にする最初の景色はどんなだ。
空を龍が飛び、大地を猛獣が這う、ゲームでよく見る様な世界観なのか?
女騎士や魔法使いやケモミミっ子たちがいて、おまけに魔王なんかいたりして…
やっべ目を開けるのが楽しみすぎるんだが!?
よーし開けるぞー開けちゃうぞー!!
…………………
やべッ目やにでなかなか開かない(笑)
というか、目を開けていきなり目の前に猛獣とかいたらどうしよう 。
まあでもそん時はそん時か(笑)
よーし…いざ!!
いろいろと期待満々に、それなりの覚悟もして、勢いよく目を開けた。
「……………おん?」
今俺の目の前の景色を例えるならば、自分がプランクトンぐらいの大きさだとして、白い真四角の箱の中に入っていて…そこから見た景色だ。
交通事故後に俺が見た最初の景色は、凹凸無くどこまでも続く平坦な白い世界だった。
龍とか魔王とかがいたりしても困るけど…
いやー…何も無さすぎるのも逆に困るんだが!?
~~~~~~~~~~~~~
俺はただ呆然とその場に立ち尽くす。
「何この世界…ちょいと手抜き過ぎやしませんか!?」
それがこの世界を見た俺の率直な感想だった。
何この小学生でも作れそうな何もない世界!?
真っ白過ぎでしょ!!
景色の変化#乏__とぼ__#し過ぎでしょ!!
これ作った奴アホだろ(笑)
「手抜きで悪かったな」
「………へ?」
自分以外の声がした。
獲物の声…じゃなかった女の声だ!?
え!? この何もない世界に生命体なんて居るの!?
声は俺の頭上から聞こえた。
見上げると、神々しく光るいかにもな“神様ですよ”オーラ全開の美女が空中に浮いていた。
「えーコホンッ…私は“女神”!! 今から貴方の異世界転生のサポートします!!」
「…………………」
俺は驚きのあまり声も出せず黙っていた。
そして、女神様のある一点を見つめる。
え…マジかよ“アレ”…嘘だろ“アレ”…立派すぎるだろ“アレ”!!
「………………」
「………あれ? 私なんかミスっちゃった感じですか? 登場の仕方とかミスった感じですか?」
しばらく俺が無言でいると、その空気に耐えられなくなった女神様が喋り出す。
「あーあ…張り切って後光とか頑張って出したのに空回りだわコレ。今度からもっとさりげなく登場しよ」
女神様は懐中電灯の明かりを消すかのように後光を消した。
しかしそんな事は眼中になく、俺の驚きは絶賛継続中なのである。
何に驚いているかは言うまでもないが…
「………もういい加減さぁ驚いてないでなんか喋りなよ~」
「…………………」
女神様が何か言っているみたいだけど気にも止めない。
眼前に広がるはち切れんばかりの“アレ”に全神経を!!
たとえこの身が滅んでも“アレ”から目を離すな!!
「ハイッちゅうもーく!! 私は女神でーす!! よろしくねー!!」
ここで俺は我に帰る。
「え…あっはいよろしくお願いします」
「なに無視してくれちゃってんのよ。いくら私がすごすぎるからって驚きすぎよ!!」
「いやぁ…あまりに凄いものを見せられて声も出ませんでしたよ」
「まあ少しやり過ぎちゃったけど」
「確かにやり過ぎなぐらい“巨乳”ですね。女神様の“胸”!!」
「胸の話だったの!? 冒頭から私の登場じゃなくて胸のでかさに驚いてたの!?」
「はぁ…あれ? もしかして俺空気読めてませんか?」
おかしいな…眼前に胸の話かとおもったのだが…
「そうね…あんたを転生させようとしてることを後悔するぐらいにはKYな状況よ」
「そうですか…ごめんなさい」
と言いつつ俺は、たわわに実る女神様のお胸様を再び見つめるのだった。
「ジロジロ見るな!! そんなに見ても指一本触らせんからな!!」
「ジロジロ見なければ触らせてくれるんですか!?」
「触らせない!! 触れた瞬間地獄に落としてやるからな!!」
「クソッ目の前にあんな立派なオッパイがあるのに!! あのオッパイに飛びついて谷間でパフパフとかしたいのに!! 目の前のオッパイが近いようで…遠い!!」
俺は握りこぶしを作り床をバンバンと殴り男泣きする。
その様子を見た女神様はススッと俺から離れ、まるで汚いものでも見るかのようなジト目で俺を見て一言…
「あんた…気持ち悪いわね」
と言った。