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転生

ある程度までは一日一回ペースで更新しようと思います。

感想はいくらでも受け付けますので、お気軽にどうぞ。


 これまでの私の人生をダイジェストで振り返ろう。


 私は旧い人間だ。もはや、だった、と言うべきかもしれないが。

 どれくらいに旧いかと言うと、神話の原型とも言うべき事象が起こった時代である。それこそ原始時代以前くらいなのだ。


 私は、所謂〝ノア〟なのだ。正確には、ノアではないが似た様な物だ。


 当時の地球は、様々な要因が重なって神話クラスの天変地異に襲われたのだ。

 それによって生物が滅びすぎない様に、神とやらは幾らかの命に使命と共に生命にブーストをかけたのだ。


 そう、私は天変地異を乗り越える為に、神によって作り変えられた改造人間なのだ。


 しかし、よくよく考えてみても欲しい。いきなり現れて神だと名乗り、いきなり自らの身体を勝手に改造していった相手の言う事を、どれだけ真に受けるだろうか?


 私は神の言う災害を全く信じなかった。

 まぁ、私は数ある保険の一つなので、私が働かなかろうが他の保険がどうにかして、つまりはその彼らがノアなどの原型なのだろう。

 すなわち、私はノアになりそこなった男なのだ。


 で、そんな私が大地を沈める様な大災害の中、何をしていたのかと言えば、無闇矢鱈と強化された肉体の限界を試そうと海底火山に籠っていたのだ。


 何を言っているのか分からないと思うが、私も当時を振り返れば何をトチ狂っていたのかとかつての私を問い詰めたい所である。


 しかも、その期間はびっくりした事に千年もの長期間に及んだ。

 いや、本当に私は何をしていたのだろうね?


 しかし、その無謀というか、狂っているとしか思えない行動が、馬鹿みたいな結果を引き起こしてしまう。


 海千山千。


 海に千年、山に千年生きた蛇が龍になるという故事だが、私は海と山の交わる海底火山で千年を過ごした結果、人にして龍の格を得てしまったのだ。

 加えて、それだけの間の成果で仙人としての格も得てしまい、完全に人外となってしまった。


 龍人にして、仙人になった私は、久々に地上に出てきて、思いっきり神に殺されそうになった。


 イレギュラーの抹殺である。

 管理された箱庭に生まれたバグを、早急に消去しようとしたのであろう。私だって、向こうの立場ならばそうする。


 しかし、私は生き残った。

 差し向けられた刺客を返り討ちにし、二度と歯向かわない様に魂を繋いで堕天させてやった。


 とはいえ、このまま狙われ続けるのも面白くない。

 別に神に逆らいたい訳ではない私としては、さっさと許して貰う方が有難い。


 という訳で、宗教を興してみた。

 神の名を広げ、神の信仰を高め、神の機嫌を取ろうとしたのだ。


 幸いと言うべきか、堕天しているとはいえ天使が味方にいるおかげで、その目論見は中々の成功を見せる。

 まぁ、その宗教自体は後の栄枯盛衰の果てに消滅するのだが、それはともかく。


 そうして、当時では決して少なくない人間達の信仰を捧げてみた結果、私は晴れて神に認められ、ついでに聖人認定も受けてしまった。


 人外度が増した。


 まぁ、今更と言えば今更である。

 聖人は仙人の上位版みたいな物だし、今の私は龍聖人と言うべき存在へと進化しただけの事だ。


 そして、ようやく手に入れた平穏な世界で、堕天させちゃった所為で私の側に付き従う天使と一緒に気ままに平凡な日常を送る生活が始まったのだ。


 それから、数千年後、私は聖人から神人へと進化した。


 いきなりどうしたのだ、と訊かれると困るのだが、どうやら魂で繋がっていた天使の影響で、私の中の聖人としての霊格が変質を起こし、永い時をかけて神へと進化したらしいのだ。

 らしい、としか言えないが、きっとこれが正しいと思う。


 龍神人へと変わった私に何が起こったかと言えば、びっくりした事に爆散死が待ち受けていた。


 所詮、私の肉体はただの人間を強化しただけの物に過ぎない。今まででも悲鳴を上げていたのだが、神その人による強化だったからこそ何とか耐える事が出来たのだ。


 しかし、進化を果たして神格となり、更には龍格と合体してしまった神龍の霊格をそんなぎりぎりな器に放り込めば、待ち受けるのは崩壊以外の何物でもない。


 見事、爆散死を決めて永い人生に終止符を打った私は、天界に行くなり、輪廻転生を果たすなりするのだろうと思った。

 心残りが無いでもない。たとえば、堕天使とか。

 しかし、死んでしまった私にはどうする事も出来ないし、私が死んでしまった原因の半分くらいはあいつの所為なのだから、受け止めてくれとしか言い様がない。

 届きはしないが。


 そうやって諦めの境地に至っていたのだが、神からまさかの事を言われた。


 受け入れ拒否である。


 なんでも、私くらいの霊格を持つ魂を天界に入れると、パワーバランスが崩れて酷い事になるらしい。

 ならば輪廻転生である。

 さっさとしろよ、と言うと、再び思わぬ事を言われた。


 なんでも、私の霊格は実質神と同格だから魂を洗う事が出来ない、のだと。


 つまり、私が転生する場合、記憶や人格をそのまま継承する形でしか出来ないのだという。


 これは困った事になった、と反射的に思った後で、何が困るのだろうか、とふと思い直した。

 実際問題として、一からやり直すというのは非常にだるい。

 まぁ、生まれ変わった後の自分には前世の苦労の記憶など無いからそういう感覚に陥る事も無いだろうが。


 しかし、魂の霊格と記憶を保持したまま転生するのならば、そういった苦労とは無縁である。

 良いじゃないか、強くてニューゲーム。

 最高だ。出来る楽ならばするべきだ、という信念を掲げている私にとって、これ以上の待遇があろうか、いやない。


 という訳で、若干渋っている神に対して、私は良い笑顔を浮かべて言ってやった。


 是非ともやってくれ! と。


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