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理事長も悪役?

「今は奏に対する嫌がらせのことを話しているのに何をやっているんだ、太刀原兄妹!!!」


笛水の怒鳴り声に俺はイラッとした。


俺と妹の大事な心の交流の時間を壊すような用事は何もない!!

偽善者女のことなんか知ったことかっ!!


「あ゛あ゛ん? 自作自演だろ? 乙女ゲームじゃあるまいし、その程度の女に嫌がらせするほど暇な奴はいねーよ! 嫌がらせは初音みたいに比べるものがないくらい優れすぎているのを妬んで行うに決まっているだろ?」


「奏は充分、優秀だ! 特待生だから妬まれるのに決まっているだろう、太刀原 凪?!」


「そうだ!」


「知るか! 妹にはかんけーねー! 初音は学年首位を爆走しているし、その女を妬むはずねーだろ?!」


「お前の妹ではなく、他の人物が奏に嫌がらせをしたと言っているんだよ!」


「それで? 初音は今まで一人で対処していきたけど、その女はお前らに泣きついてんだろ。お前たちは自分たちが生きてる世界じゃ、舐められたらお終いだってことは知ってるくせによく言うよな!」



太刀原の長男は出来損ない。



俺は馬鹿だから社交の場じゃ、散々バカにされたさ。

聖痕学園に通っていると知って手のひらを返されたことなんかザラだ。


学校の授業が終わったら、家では親父やお袋が付けた家庭教師との勉強が待っている日々。

それもこれも聖痕学園に通うためだけにしていることだ。

聖痕学園さえ卒業できれば、俺がどんなに馬鹿でも社交界で馬鹿にされることが少なくなる。親父たちはそれがわかっているから俺に家庭教師を付けてでも聖痕学園に通わせる。

学歴が聖痕学園卒になるから。

高等部さえ卒業できれば、専門分野を理由に他大学へ進学しても誰も気にしない。


嫌がらせを自分の手で跳ね除けられる能力や精神力は社交界では必須だ。

身に付けていなければ、確かに庇うことはできる。しかし、奴らは範疇を越えてしまった。

奴らは偽善者女のためにルールを破る。

一度破ったルールを奴らはどこまでも破り続けるだろう。


社交界で生き抜くために必要な能力を身に付けられるまで支え、手助けすることもできたはずだ。親父たちが俺にしたように。


俺が怒っているのはルールを守らないからじゃない。特待生かなんだか知らないが、頭が良いならできることをさせないのに腹が立つからだ。

悔しくて堪らない。

俺がしてきたこと、俺のしていることを全部、否定されているようで。


「そこまでだ、太刀原君。――笛水君の言っている音無さんへの嫌がらせなんだけどね、突き落とされた日の突き落とされたという場所に犯人どころか音無さんも監視カメラには映っていなかったんだよ。その日一日の分も調査したけど映ってなくてね。他の階段や前後する日も調査したんだが、突き落とされたのは太刀原 初音さんぐらいしか映っていなかったよ」


「!! 初音?!」


俺は妹を抱き締める腕に力を入れる。

蒼白な顔をした初音は視線を逸らした。


「!!」「そんなっ!!」


取り巻きたちも驚きの声を上げたが、偽善者女も何故か蒼白な顔をしている。


「監視カメラに死角があったんじゃないのか?!」


「残念ながら監視カメラに死角はないよ。監視カメラの故障すら即時連絡が来るセキュリティシステムを敷いているくらいだ。元々は生徒が実家の権力で好き勝手するのを抑止する為に導入してもらったんだが、お預かりした大事な子女をイジメ等々から守るのにも大いに役立っているよ」


すげー、セキュリティ・・・。

そこまでする・・・もんだよな。

聖痕学園の卒業生は国の中枢どころか、世界で活躍する人材だもんな。


「そう言えば笛水君たちは交際届を出してくれているが、音無さんは出してくれていないね? それなのにどうして彼らを引き連れて歩いているんだい?」


「交際届?」


多少、顔色の戻った偽善者女は首を傾げた。

本人は可愛らしさを狙っているかもしれないが、俺にはあざとく感じる。


「聖痕学園では恋人と付き合いを始めたら交際届を出してもらうことになっている。色々な犯罪が関わってくるから、公的にカップル認定しておく制度だと思ってくれていい。婚約したらその都度、婚約届も出してもらうしね」


俺もその制度を聞いた時は呆れたが、自称恋人やら自称婚約者だというストーカーとかを学園側で把握しておきたいらしいというので納得した。

付き合っているだの付き合っていないだの痴話喧嘩もこれで解決したと聞いたことがある。これがなかったら家同士の関係に影響を与える状況に発展したかもしれなかったらしい。


「何それ?」


「奏!!」


哀れな声を上げる生徒会の面々。


うん、俺も哀れに思う。

交際届も出してもらっていないなんて・・・。

交際届を出せるのは一人だけだから、誰が選ばれたのか知りたくなくて誰も聞かなかったんだろうな・・・。


「で? 誰を相手に出しておけばいいのかな? 退学も決定していることだし、もう遅いかもしれないが。それとも破局届を出して笛水君たちの交際届の受理を撤回しようか?」


「・・・」


うわー・・・。


誰も何も言えない。

偽善者女は卒倒しそうな様子だ。


在原のおじさんの舌はまだ止まらない。


「そうそう、音無さんの訴えの証拠を探していたらその代わりに面白いものを見つけたよ。――見るかい?」


そう言った在原のおじさんの笑顔は黒かった。

学園側は学生の自主性に任せていますが、イジメや喫煙、暴力行為などに対しては積極的に対処しています。

お預かりしている大切な子女ですから、被害者だけでなく加害者の歪みも良しとはしていません。


この辺りも聖痕学園が選ばれる理由の一つです。

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