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「それがどうかしたか。笛水を潰せるとでも思っているのか?」
「笛水は既に潰れましたわ、他の皆さんのお家も。ご存じありませんの?」
笛水家が潰れた?!
それに他の奴らの家も?!
初音、そんなの聞いた憶えはないぞ?!
奴らの家が全部潰れれば、TVは無理でもネットのニュースぐらいにはなる。
どこでそれを聞いてきたんだ、初音!
「嘘を吐くな! 太刀原 初音!」
「そうだ、そうだ!」
「黙れ! ウシ乳女!」
ウシ乳?!
妹はナイスバディなだけだ!!
カップは・・・知らん!
バストサイズなんか見ただけでわかるか!
彼女なんかできたことのない俺がわかると思っているのか!!
妹に対する暴言に聞き捨てられなくて俺は口を出した。
「初音をウシ乳女って言った奴、出てこい!」
「女性に対する暴言は頂けないな。我が校ではそんなことをしないように教育しているはずだが、優秀な君たちの身に付かないとは皮肉だ」
在原のおじさんも援護射撃してくれた。
フンッ!
「先程から理事長は太刀原兄妹の味方をしているようですが、貴方は依怙贔屓しないと仰っていましたよね」
「ああ。私は中立だ。まあ、今回集まってもらったことに関して既に出ている結論を伝えるだけだからね。笛水君たち生徒会役員は役員資格を剥奪して次の火曜日までに自主退学しなければ、退学措置をとる。高等部の生徒会顧問も同様だ。太刀原家の兄妹は被害者たちにその旨を伝えて欲しい」
「退学?!」「退学だって?!」
口々に生徒会の男子メンバーが言うが、誰が言ったかなど俺はどうでもいい。
俺が気にしているのはさっき初音を”ウシ乳女”呼ばわりした奴が誰かってことだけだ。
「いきなり免職はないでしょう、理事長!」
黙れ、ロリコン教師!
「そんなヒドイ! 皆がかわいそうです、理事長!」
お前が元凶だよ、この偽善者女!
「理事長を色仕掛けで味方に引き入れやがって汚い真似するなよ! 初音!」
初音が色仕掛けだと?!
その上、ヒロインちゃん(仮)の取り巻きをしているのに、妹の名前を呼び捨てにするとはふてぶてしい!
もしかしてこの発言をした奴は初音を狙っている犯罪者予備軍なのか?!
抹殺対象なことに変わりはないが、早急に排除しなければいけないタイプなのか?!
既に初音を襲う計画も立てているかもしれない!
そうに違いない!!
「今、言った奴は誰だ?! お前は紅葉おろしだ!! ついでに家族以外は妹の名前を呼ぶな!! 妹の許可無く、名前を呼ぶなんてもってのほかだ!!」
「だいたい、何故、奏にまで処分が下る? 奏こそ、被害者だ。謂れのない誹謗中傷に嫌がらせを受けて、階段から突き落とされたんだぞ。幸い、怪我がなかったから良いものの」
無視された!!
俺の発言、無視されたよ!!
停学にされた時も俺の言い分は通らなかったが、こいつら無視するにも程があるぞ!
「殿方を何人も侍らしていれば、それくらい遭ってもおかしくないことですわよ? ご存知ありません? わたくしも嫌がらせは受けますし、階段で突き落とされるどころか、ゴミや植木鉢が降ってくることもありますのよ?」
俺はその言葉を聞いて、妹を振り返った。
平穏な学園生活を送っていると思っていた妹の日常がそんなことになっているとは考えつかなかった。
初音を守るのは遅すぎたのだ!
妹が受けた嫌がらせの数々に、自分がいかにおめでたい人間だったか思い知らされた俺は自分への怒りと無力感に打ちのめされた。
「初音! そんな目に遭っていたのか?! どうして、そのことを言ってくれなかった?」
「お兄様に心配をお掛けしたくなかったんですもの」
妹の言葉が優しすぎて俺は辛い。
「初音~!!」
俺は妹を力いっぱい抱き締めた。
「お兄様ったら・・・」
困ったような妹の声。
だが、柔らかくて弾力のあるものが俺と妹の間にあってなかなか密着できない。
なんだ? この邪魔なものは?
妹の胸だった。
さっきのウシ乳女発言の原因であるこいつのせいで妹の危険が一割増しているのかもしれないと思うと益々腹立たしい。
俺と初音の間に割り込んでいるだけでなく、妹の危険の一部を担っているなんて!!