被害者なのに停学になった
そして現在――
俺は停学中。
ヒロインちゃん(仮)にぶつかられ、啖呵切っただけで停学・・・。
生徒会も生徒会顧問も職権乱用しすぎだ!!!
停学中の俺は乙女ゲー現象に巻き込まれた奴らの傾向を探ろうと、リビングに置いてあるTVで仕方なく乙女ゲーをしている。
乙女ゲームなら親父たちの友人が作っているから、我が家に何本も転がっているし。
「只今戻りましたわ、お兄様」
初音の声に振り向くと、妹にしておくには勿体無い美少女が立っていた。
妹は聖痕学園の制服が相変わらず似合わない。オーダーメイドにしているのに、不恰好に太って見える。あまり初音の体型に合わせ過ぎると制服ではなくコスプレにしか見えないから妥協点を見つけてこれなのだ。
妹を野暮ったく見せる聖痕学園の制服のデザインが最低なのは、置いておいて。
平凡な俺とは違い、家族は皆、凄い人物ばかりだ。
特に容姿にかけては比較にもならない。
親父もお袋も美男美女だし、妹の初音も中学に上がる頃にはロリコンおやじたちからの縁談が舞い込むし、弟は天使ともてはやされているし、俺だけが平凡で地味。
「初音~!!!」
俺は妹に抱き付く。
2歳下の今年高校生になったばかりの妹はお袋に似てナイズバディだ。
だからといって、変な意味は一切ない。
「どうかしたの、お兄様? 学校を公然と休めるのだから外出すればよろしいのに、・・・乙女ゲーム?」
「あいつらの弱みを探そうと思ったんだ!」
自信満々に初音の目を見て言ったら、妹は眉を八の字にして、小首を傾げる。
「お兄様・・・。現実とゲームは違いますのよ?」
「いいや。あの状況だ。きっと何か、コレに鍵があるはずだ」
「お兄様・・・」
妹は痛みを堪えているような顔で俺を見てくる。
「そうだ、初音! 仇をとってくれ! 妹に仇をとってもらわないといけない不甲斐ない兄で悪い! でもな、お前ならできる! お前は頭良いし、お兄様の仇をとってくれるだろう? 家族だろう?」
「そこまで言わなくても良いですわ。お兄様が停学になった理由は存じ上げていますもの。私がお兄様の仇を討って差し上げますわ!」
ニッコリ笑ってそう言う妹に思わず俺は頬擦りしてしまった。
「それでこそ、俺の妹だ!」
「大きな犬・・・」
「何か言ったか? 初音?」
「いいえ。何にも言っておりませんわ、お兄様」