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土産

 分からない、掴みどころのない人だ。笑顔を絶やさないのに、それでいて闘士を感じる。格好良いと言えば格好良いし、気持ち悪いと言えば気持ち悪い。


 「いや、私は陰陽師じゃないから行きませんけど」


 「俺も止めとくよ」


 絶花が声を発した。完全には納得なんてしていないだろうが、どうも言われっぱなしになって、少しグロッキーになってしまった。さすが、本気を出したおっさん、恐ろしい。絶花ですら相手にならないとは。


 「そうかい。では、相良君の直属の部下になるって話はどうする?」


 「部下ではいますけど、やっぱり直属はお断りします。俺は異端児なので人と馴染むのが苦手です。これからって時に雰囲気を乱したくないので」


 「私も遠慮します。ちゃんと緑画高校の人に救援を頼んで再建をはかるべきです。それと、あなたならきっと戦わずして地方の人達を纏められると思いますよ。本当にピンチになった時は弟を派遣しますから」


 「あぁ、その時は助けにきます」


 この依頼は断ざるをえなかった。私たちにはまだ解決しなければならない問題がある。


 「そうか。残念だが……そうだな。俺も意地を張っている場合じゃないな。最優先はこの崩れた陰陽師の世の中を戻すこと。そして、規則と秩序を取り戻すこと。その為には形振り構ってなれないよな」


 「そういうこと」


 理事長が党首様に歩み寄った。何かしら話があるのだろう。これ以上は邪魔にある。私は絶花の袖を握った。この部屋から出ようと提案してみた。絶花もこれに了承する。私と絶花は党首様と理事長の方へ向かい直して言葉を告げた。


 「お話を聞いて頂いてありがとうございました。あと、ドーナツ美味しかったです。感謝します」


 理事長は笑顔で手を振った。党首様も立ち上がって一言。


 「達者でな」


 私と絶花は障子を開けた。ここからは彼らの助けは借りれない。自分たちであの柵野眼を攻略するしかない。


 「「失礼しました」」


 それにしても……柵野眼が私を狙っていないというのは納得がいかなかった。党首様は真相にたどり着いているのだが、教えてくれないのであれば自分たちで答えを探すしかない。関わっていくしかないのだ、その禁忌へと。


 ★


 「はぁ~、そんなに堅苦しい人じゃなくて助かったね」


 「うん。まあ俺はちょっと乱入してきた理事長に腹がたったけど。規則違反を正当化しやがって。クズ野郎が」


 絶花の負け惜しみを片耳で聞きつつ、腕時計を見直す。11時50分。もうそんな時間か。御門城を出てから私たちは部屋に荷物を取りに行ったあと、城のすぐ傍にあった石造りの奇妙な橋を渡って現実世界に帰ってきた。どうやら本当に京都の街にたどり着いたらしい。


 「あんまりお腹減っていないけど、昼食にしようか」


 「甘味処!! 甘味処!!」


 どうやらおやつの三時の時間まで絶花の体内糖分エネルギーは持ちそうにないらしい。まあ、臨時報酬もあったことだし、少しくらいの我が儘は認めてやるべきか。絶花の性格上、伝統ある建物や、風情溢れる屋敷や、趣向をこらした歴史的建造物などまるで興味がないらしい。私も中学校の時の修学旅行が京都だったので、そんなに観光することに躍起にはなっていないが、それでも少しは京都巡りがしたかった。


 「やっぱり抹茶の味を最大限に味わえるのは京都だよねぇ!! 俺、陰陽師になって本当に良かった!! こんな美味しいものが食べられるなら、毎日でも本部に出張したい!!」


 おまけに絶花がうるさい。テンションがマックスではしゃいでいる。既に右手にはみたらし団子が三本も。いつの間に買いやがった。それは全国どこでも食べられるだろう。


 「お土産に八つ橋の全ての味を買って帰ろう、お姉ちゃん。目指すは二年坂だよ」


 普通はその上にある清水寺に興味がいくものなのだが、絶花にとっては立ち並ぶ名店の方が重要らしい。


 「というか、お土産って? あんた学校にも機関にも友達とかいないでしょ? お父さんとお母さんに?」


 やはり社会人としてのマナーとして、旅行したのならばお土産は買って帰るべきという良心が働いたのだろうか。


 「え? 自分へのお土産だけど?」


 訂正、こいつは終始自分のことしか考えていなかった。だが、こういう風情溢れる場所に来ると心が洗われるような気分になる。ふと、お土産屋に視線がうつった。そこにはキーホルダーや京都の風景の写真集、色鮮やかな着物や、それと木刀なんて置いてある。


 …………釜? どうして釜なんて置いてあるのだろうか。そう言えば、御門城にお世話になった時に、私たちの食事を作ってくれた妖怪も、顔が釜だったな。名前は忘れてしまったけど。


 「お姉ちゃん。そいつ……妖怪だ!!」


 他の一般客がいることもお構いなく、迂闊に触れようとする私の手を引っ込めるように腕を掴んだ。


 「これも御門城にいた、あの妖怪なの?」


 「いや全然違う。あいつは付喪神の一種である禅釜尚ぜんふしょうって妖怪だけど、こいつは付喪神じゃない。そもそも釜は本体じゃない。こいつは釜に封印された『鬼』の妖怪」


 絶花は呼吸を整えて抑揚ある言い方をした。


 「鳴釜だ」

 申し訳ございません

 サブタイトルを回収したばっかりで恐縮なのですが

 この太刀風居合、私生活上の都合により更新をしばらく控えます

 必ず太刀風居合は戻ってきて続きを書きます

 しかし、しばらく待っていてください

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