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喉飴

連れて行ってくれるのはありがたいのだが、自分が高所恐怖症じゃなかったことを本当に良かった。たぶんこの手のひらから落ちたら即死だと思う。妖怪の腕に乗っかって御門城なる場所へと向かうことになった。ようやく邪魔者もいなくなり、なんと党首様自らがお迎えに来てくれて、エスコートしてくれているのである。


 「お姉ちゃん。俺は少し寝るよ。到着したら言って」


 「あんた、よくこんな危険地帯で眠れるわね」


 「人間は疲労感がピークに達したらどこでも眠れるものさ」


 まあ、こいつには少しくらいは感謝している。いや、元を色々と辿れば感謝などする必要はどこにもないのだが、それでも私の命の危機を救ってくれて、体を張ってくれたことは事実だ。義理の姉である私をどうしてここまで慕ってくれているのかは分からないが、こいつなりの敬意を感じた一日だった。


 「あぁ~、糖分が切れた。もう駄目動けない。砂糖だ、誰か砂糖をくれぇぇぇぇぇ。角砂糖が望ましい。うぅうぅぅぅ」


 糖分は基本的に頭の回転とかに必要な成分であって、体の不調などには効果はないと思うのだが。まあこの甘党が普通の人間の構造をしているはずがないか。奴らに襲われる前に散々とお菓子を頬張っていた気がするのだが、あれでも足らなかったのか。


 「まあ、今回は頑張ったからご褒美をあげよう。はい、のど飴」


 ポケットの中に一つだけ入れておいたレモン味の喉飴のどあめを弟に私た。


 「ううう、京飴がいい」


 「我慢しろ、さもなくばこれすらやらんぞ」


 「それは犯罪的だよ、お姉ちゃん。早くその飴を僕にください」


 一人称が変わっていることを突っ込む前に私の右手からアメを奪い取り口の中に放り込んだ。


 「美味しい。お姉ちゃんの愛が染みる」


 「喉飴くらいで喜ぶな、馬鹿」


 私は蹲って美味しそうな顔を浮かべている弟を見ないように視界から避けて、霊界とやらをじっくり観察してみる。薄暗い提灯の光が漂う、太陽の光は全くない世界だ。ここがどこなのかさっぱり見当がつかない。崩れかけた木造の家。雑草が生い茂り、地面は極めて田舎そのもの。アスファルトなど存在しない。江戸時代にでもタイムスリップした気分だ。


 「お姉さま。お疲れ様でした。ご無事で何よりでございます。話はかわりまして私たちの世界はいかがですか?」


 「からかさ。絵之木戦くらいから静かだだと思っていたけど、絶花の方に集中していたの?」


 私の腰につけていた折りたたみ傘が反応した。からかさの意識が絶花からこちらへ帰ってきたのである。


 「はい。どうも激しい戦闘になることが予想されていたので」


 「本当に怖い世界だね……」


 「いえ、ここにいる妖怪は人間の驚異を理解しています。滅多なまねはしないかと」


 それは陰陽師に対してでしょ、なんて言う気にもならなかった。そこらじゅうに妖怪がいるのかと思えば、確かに全く姿が見えない。


 「もうすぐですよ。もうすぐ見えます。日本の陰陽師の拠点。御門城が」


 ★

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