敏感
その質問をどう答えるかで、今後の正義の方針が変わる。果たしてどう物語が切り替わるのか、そんなことは定かではない。絶花がまた嫌そうな顔をして、外方を向いた。
「そういえば……窮奇と夜幢丸との対決は……」
「さっき決着がついたよ。やはり夜幢丸の方が有利だった。党首様が勝利したよ。夜幢丸の刀が奴の翼を一刀両断した。バランスを崩した虎がよろめいて下降しているところを正拳突き。この一撃が勝負を分けた。奴の妖力が完全に消えたから、風の中に紛れている心配もないだろう」
冷静な声で絵之木ピアノが教えてくれた。彼女は上空の対決にも気を配っていた。窮奇が万が一こちらへ攻撃してきた時に、迎撃できたのは彼女だけだからである。
「どうして空気に紛れていないって断言できるの?」
「我々のリーダーである先駆舞踊の波長を感じられなくなったから。仮に死んでも陰陽師と式神のお互いに混同させていた妖力は残るもの。特に悪霊鑑定士をやっている私は敏感に感じ取れる。それが完全に消えたのよ……」
言葉が出なかった。柵野眼がこの小隊を狙ったのは、私と絶花が標的だったからである、私たちが京都へと向かわなければ、先駆舞踊は死ななかったかもしれない。私たちのせいとまでは言わないが、それなりに罪悪感が胸を痛めた。
「それにしても、逃げ出すという予想は外れたな」
「窮奇は四凶に1体だぜ。日本の妖怪とは比べ物にならない奴だ。いくら本調子じゃなくても、そのプライドから逃げられないんだろ」
逃げなかったか。窮奇も大妖怪だ。リハビリが足らなく絶不調でも、悪霊に操られているという感覚はあったのかもしれない。その苛立ちから自暴自棄になっていた。そう考えられる。
窮奇は本来の力を回復する前に再生してしまったことを分かっていた。だが、自分でも止められなかった。人間を襲う理由も極めて曖昧で、無理矢理なコジつけだった。悪霊の妖力に毒されていて、それに抗っていた。その結果がこの話の顛末である。
「悪霊に唆されているなんて知らなかったから。その情報があれば、俺だってあんな事は言わない。だいたいあの虎から悪霊の波長なんか感じなかったし」
「柵野眼ならではの作戦だね。奴は悪霊の妖力を、式神の妖力に変換させた。そして付与した。本当に憎たらしいほど嫌な能力だよ。『変身』って」
奴は極めて強い。奴は誰にでもなれるし、どんな波長にだってなれるし、どこからでも攻撃できる。
「早く倒さないと……こんな悲劇を生まないためにも……」
そんな私の戦いにおける決意を、片目を細めながら絶花がぼんやりと眺めていた。
「ねぇ……最後に名前を教えて。お姉さんのほうはまだ名乗っていないでしょ? 緑画高校で一般人だから手を出すなって言っておくよ」
絵之木ピアノの気遣いに甘え、私は残りの二人にも聞こえるようにはっきりと自己紹介した。
「倉掛百花。この弟にして、この姉って名前でしょ?」
★
本物の幽霊列車はすぐさま現れた。あの意味深な電話に危機感を感じた本物の夜回茶道が、京都の町から足湯温泉を諦めてすぐに霊界へと赴き駆けつけてきたのである。彼女に全ての真相を語るのは心苦しかったが、汚れ役は絵之木ピアノがやっていた。少し手を振るだけで声を発さずに三人は列車へと乗り込み、涙を浮かべながら暗雲へと姿を消した。
「彼ら……大丈夫かな……」
「大丈夫なはずがないでしょう。被害は甚大で、小隊は崩壊だ。悪霊に利用されたって所が一番に重いねぇ。帰ったら散々と緑画高校理事長とやらからおしかりを受けるだろう。いや、話が重すぎて説教にもならないか」
「そうだね……」
如何せん、私も疲れていた。頭がクラクラすると、何より足が痛い。初めて殺意を持った空間で戦った。そんな現実離れした狂気が私の疲労を生んだ。
「京都に到着する前からここまで疲れるとは……。というか、どうやって今から京都に行くのよ。もう移動手段がないじゃない」
「お姉ちゃん。その問題は……解決しそうだよ。俺的にはあんまり気が進まないけど……それでも今回は甘えるしかない」
そう、移動手段は目の前にあった。夜幢丸の拳がゆっくりと私たちの目の前までやってきた。ここに乗れと言ってくれているのだろう。
「党首様が直々に連れて行ってくれるって……御門城に」
はい、今日でこの二章が終わりです。
いや~長かった。絶対に小説家になろうで受けないような話を書いてます。
難しい所とかあったら遠慮なく申し出でくださいね
うん、読んでいる人が少ない……はっはっは……はぁ(´-д-)-3
アクセス少ないもんあぁ。投稿時間が完全に深夜だし
どこの深夜番組だよ。もしよかったら拡散して広めてください
二章通しての感想とか欲しいです!!!
明日から・・・・・・・教育採用試験の勉強を頑張ります




