稽古
キリッツと、勝ち誇った顔をするのは頂けない。お前ただ勝てないから助けを読んだだけだろって言いたいが、そのお陰で私の命も助かっているので、文句がいいにくい。
「で……党首様とやらは……どこにいるの? なんか窓の外で鎧武者が顔を覗かせているだけなんだけど……」
「あれ? あれ…………」
待て、考えろ私。遥か天空で静止している電車にどうやって党首様は乗り込むというのだ。仮に飛行手段があったとしても、あの鎧武者が手で持ち上げて入れる高さまで到達しても……どうやって中に入るのだろう。
幽霊列車はただの電車ではない。意思がある妖怪であり、妖力を持っている。使い手である夜回茶道も気絶などしておらず、操作は可能なはずだ。そんな彼女が新手の侵入を許すはずがない。
つまり……。
「絶花。これって別に助かっていないんじゃないかな……」
「お姉ちゃん。やめて。自分でも自分の作戦の落ち度に今気がついたところだから……これ以上ムチを打つのやめて」
どうやら私が思考していることと、全く同じことを絶花も考えていたようだ。
「おい、党首様が来るのか? だったら……俺たちってどうなるんだ?」
震え声を放つ虎坂習字に対し、添木生花が冷静な声で返答する。
「緑画高校の出身だから……我々の味方をしてくれるか……。それとも救援を出した奴らを被害者と捉えて我々を攻撃するか。いや……この状況から推察すると……中国から来た悪神を追い返すために、形振り構わず無差別攻撃をするかもな。犠牲など考慮しないかもしれない」
ここにいる陰陽師全員と私が……察した。おそらく添木の言った最後の予想が的中するだろうと。今の状況は陰陽師同士の小競り合いではない。中国からの刺客と対面している極めて危険な状況だ。地方だとか都会だとか、従来とか新時代とか、既にそんな段階の話ではないのだから。
「絶花……あんたって……」
「ヤバイ。俺の救援要請ってただ話をややこしくしただけかも」
「おい!!」
その時だった。遂に痺れを切らした大虎が咆哮をあげた。さっきから蚊帳の外で無視されて、戦闘が開始せずにずっと放置されていたから、それは居心地が悪かっただろう。
「キサマら……いつまで待たせるつもりだ。この私を……。さっきからあの武者のような妖怪も、こちらへ攻めてこないではないか!!」
そんなことを私に言われても困る。
「来ないのならばこっちから行くぞ。その党首とやらが血相を変えるように、まずはここにいるお前たち全員を食い散らかしてくれるわ!!」
前脚が動いた。こちらへ近づいてくる。…………殺される…………。
そう思って折りたたみ傘を広げた瞬間だった。遂に夜幢丸が行動を開始した。剣道の稽古でもするかのように、思いっきり日本等を真上に掲げて垂直に真っ直ぐに……振り下ろした。私達がいる車両に……。
車両が真っ二つになって…………えぇ????
「「「やりやがった!!」」」




