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勢揃い

狂気に満ちた目、おぞましい感情。別に何かを恨んでいるという訳でもない、何かを悔やんでいるというわけではない。何かを妬んでいるというわけでもない。ただただ、人間が嘘をつく時に見せる『申し訳なさ』とは裏腹な感情である。そう、狡猾な笑み。気色の悪い顔の引きついている。


 「怖い……」


 「へっへっへ。俺は、俺は、俺は、俺は、俺はああぁぁぁ!!! 仲間のために!! 正義のために!! 世の中のために!! 秩序のために!! 平和のために!! 幸せのために!! ために、ために、ために、ために、ためにぃぃぃぃぃぃ。お前を~~こ~ろ~すぅ!!!」


 地面に大穴を開けておきつつ、まだ興奮が収まらないのか、好き勝手に暴れまわっている。大鎌なので攻撃範囲が広い、絶花はジリジリと後退を余儀なくされる。ただ奴も大きく踏み込んでこない、まるで当てる気などないように。今の暴れまわっているこの状況を楽しんでいるように。


 「どうして? まだ絶花が下衆なことを言っていないのに」


 「お姉ちゃんの言い方にはちょっと異論があるけど、確かにこいつは初めから頭がイカれていやがるね」


 気持ち悪い、声を荒立て発狂し、派手な身振りで鎌を振り回す。さぞ気持ちよさそうに、幸せの絶頂のように。


 「こいつは……いったい……? ん? お姉ちゃん、後ろ!!」


 「えっ!」


 私は突然の絶花の大声に驚いて、すぐさま振り返った。そこには第二車両で寝ているはずの添木生花そえぎいけばなと血だるまの虎坂習字とらさかしゅうじがいた。そして、二人の肩にかつがれ首を付きおろし、未だ気絶しているままの絵之木ピアノがいる。今まで倒した敵が勢揃いだ。


 「まさか、リーダーの加勢にきたの……」


 私の震える声に対し、二人は首を横に振った。虎坂はともかく添木生花が立ち上がれるのは、絵之木が回復の術で奴の腹に空いた穴を治したからだろう。それでもまだ痛みが収まらないのか、奴は左手で腹部を押さえている。


 「俺と添木は式神を殺されているから、加勢のしようがない。まだ戦える可能性が残っているのは、かろうじて生きている式神を持つ遠距離担当の絵之木だけだが、まだ起きねぇ。完全に気絶してやがる」


 「リーダー……どうしてしまったのだ……」


 二人の顔がこわばっている。やはり仲間サイドから見ても異常な光景なのだろう。気が狂ったかのように、踊り狂って戦うのは。


 「仲間のために、正義のために、陰陽師のためにぃ!!!」


 「お前、何度も何度も同じ言葉を繰り返しやがって。五月蝿いよ」


 そんな言葉であしらいつつも、絶花の顔が苦くなっていくのを感じる。奴の撒き散らす狂気の波動に圧倒されている。

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