表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/221

激昂

生花、ピアノ、習字、舞踊、茶道。これすなわち……。


 「あんたたち、全員が偽名だったってことね。だってこれ、全部がお嬢様とかが習う『習い事』みたいな名前でしょ」


 「…………偽名は正解。本名を名乗って素性がバレて、日常生活のデリケートな部分に踏み込まれると困るからね。でも、ミステリー小説の探偵みたいなドヤ顔はやめたまえ。私たちはテキトーに名づけあっただけだから」


 別にそんな顔をしているつもりはないのだが。今の発言は駅員のコスプレをしている女だ。火属性の担当で、水属性である絶花にとっては一番に相手取りやすい奴。だから、あの女の子は倒したも同然だろう。問題は金属性のリーダーの方だ。

 

 「お前の仲間達が、一人は腹を鋭い刃物で刺され、また一人は音による衝撃で吹き飛ばされ、また一人は散々になぶられたっていうのに、二人共随分と余裕そうじゃないか。もっと取り乱したらどうなの? 仲間のことを思うならさ」


 「モニターで全て見ていた。だから……戦績は把握している。三人とも落ち度はなかった。だから……お前たち二人があまりにイレギュラーなのだろう。ここで俺が取り乱せば、勝てる戦いも勝てなくなる。今は平常心を保つ時、ただそれだけのこと」


 やはりリーダーとやらは私と絶花を見逃してはくれないようだ。仲間のことを親しく思おうとも、激昂せずに冷静沈着でいる。リーダーの素質としては高評価なのだろうか。


 「網切と黒鬼は殺された。他の仲間も深い傷を負わされた。お前たちを俺は許せない。皆のかたきは俺が取る。俺があいつらの魂を受け継ぐ。必ずこの戦いに勝利して、彼らの無念を晴らしてみせる」


 まるでテンプレのような正義も見方がよく使う台詞を羅列されたのだが。ちょっと考え直して欲しい。この列車に閉じ込めたのはお前らで、誘き寄せて罠を張ったのもお前らで、そもそもこの戦いはお前たちの学校の課題とやらで。そんなに見た目ほど、私と絶花は悪者呼ばわりされる義理はないと思うのだ。


 格好良い台詞は結構だが、これはお前たちの自業自得だということを忘れている。陰陽師同士の戦いに正当性はないと絶花は言っていたが、陰陽師じゃない私としてはこれは列記とした正当防衛である。命を狙われているのだ、過剰に防衛して当たり前だろう。


 「随分な言いようだけど、私たちは被害者なのよ。あなたたちが学校の課題とかで、旧陰陽師思想って理由で攻撃してきたんじゃない。それを今更、返り討ちにあったからって、そんな臭い台詞を言われる筋合いないわよ」


 「我々の思想はこれからの日本を守るのに必要だ。だからそれを示す。正義は我々にある」


 「人が人を殺すことに正義は宿らない」


 「おやおや、バトル漫画は嫌いだけど、推理小説は好きなのかな? 気持ちはわかるけど、それでも我々が正義だ。少数派を切り捨てて、多数の命を優先する。これもまた正義だ」


  ちなみに痛烈なバトル漫画批判をしているのは、私の弟であって私ではない。むしろ私はバトル漫画は大好きだ。


 こいつのいう多数とは日本人全員で、少数とは旧陰陽師。身勝手極まりない仕分けである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ