列車
あいつ? いったい誰のことだ。
「この幽霊列車の中にお前の知り合いがいるの?」
「知り合いではない。直接に会ったこともない。でも……奴は……危険だ。おそらく俺よりも強い。というか、どうしてこんな国にいるんだ……」
俺よりも強い……ということは龍生九子よりも上の実力を持つ妖怪であるということ。捕獲不能レベルの妖怪である可能性が高い。それも……中国でも名前の知れた。
「ははは、脅かすなよ。化け鯨よりも強い式神なんて、世の中にそうホイホイいてたまるかってんだ。何かの間違いだろ」
「でも……」
緑画高校の実力は知らない。だが絶花と比較した場合に、まだこちらのほうが強い式神を有していると思う。さっきまでの三回の戦いだって、別にこちらが知能で優ったという局面は少なかった。ただハイスペックの妖怪を利用していただけ。
「この先にいるのは火属性のアナウンスをしていた駅員姿の女の子と、もう一人は金属性でこの小隊最強の陰陽師ってこと……」
「今までの連中も確かに普通の陰陽師よりかは強かった。それで次に出てくるのが『とっておき』だとすると……」
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非常に気が進まないのだが、先へと進むしかない。このまま前の車両で立ち往生するのも馬鹿らしいからだ。もし、それほど最強の式神が来たとしたら、私たちに勝目は薄くなる。今までの『相手も強いけど、そうはいっても勝てるよね』みたいな状況にすらならないかもしれない。
いざとなったら幽霊列車そのものを攻撃して、そのまま天空を化け鯨により滑空し、霊界の地上に舞い降りたら、そのまま術式で現世に帰ろうという提案になった。なぜ、それをこの今の段階で断行しないかと言えば、それがあまりにリスクが大きいから。この場所がどれほどの高度を誇るか分からない。それなのに運任せにスカイダイビングはできない。霊界にも重力ってあるのか、ちょっと科学的な発見を感じた。
「で? お前ら二人でラストなんだろうけどさ。一人は俺をまんまと、この罠に嵌めてくれた駅員コスプレの女だとして、お前がリーダーってことでいいのかな?」
女の人の方は綺麗な茶髪ロングに、紺色の駅員姿をしている。男の方はまるで軍服のように緑画高校の制服を改造してあり、海軍とかが付けていそうな帽子をかぶっている。見た目からが全く陰陽師に見えない。緑画高校の制服の色は『緑』で統一されている。奴の制服の色も緑なのだが、帽子は純白だ。
「いかにも。私の名前は『先駆舞踊』。この小隊を任せれている。属性は『金』」
「八番隊の『火』属性担当をしています。この電車のガイド、『夜回茶道』って言います。よろしくね」
舞踊、茶道、またもキラキラネームかよ。いや、ちょっと待て。これってもしかして……。今までの敵の名前を思い出してみる。




