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民謡

「おい、こら老害!! 『泣いた赤鬼』って話を知っているか? 赤鬼は村の人から怪物扱いされて忌み嫌われていた。それをどうにかしようと、赤鬼の親友だった青鬼が、自分を退治させる演技をすることで、村の人に赤鬼をヒーローにさせた。これで人気者になった赤鬼だったが……」


 この民謡は私も知っている。青鬼は村の恐怖となった為に、もうその地域では生活できなくなり、村の近くを出て行くことになる。そして赤鬼は親友を失ったことで涙を流したという物語だ。


 「お前達がレッテルを貼るからだ。悪者だって、悪党だって、怪物だって。そんなことするから、いつまでたっても正当な評価を受けられない。鬼はその数は数千はいるんだ。それだけいれば性格だって千差万別だろう。良い鬼もいれば、悪い鬼もいる。人を殺める妖怪もいれば、そうじゃない奴もいる。どうして種族とかだけで、完全に判断するんだよ」


 「お前、人の話を聞いていなかったのか?」


 絶花が虎坂を黙らせようと、膝を突き上げて思いっきり後頭部を踏み倒した。鼻血による出血により地面に血が流れる。


 「鬼は人間じゃない。人を簡単に殺せる。肉体のつくりがそもそも違う」


 「人間だっていざとなったら人を殺すことなんて造作もないだろ」


 「人間には法律がある。警察がいて、処罰があって、存在がある。だが、妖怪にはそれがない。だから適応しない」


 「だったらそいつも認めてやればいいだけだろうが」


 「寝言は寝て言え」


 奴が絶花と目線を合わせようとうつ伏せの状態から顔を逸らし、上を向こうとしている。その上から、頬の部分にまたかかとを落とした。


 「ぐっ!」


 今度は唇が切れた音だ。さっきまであれほどホスト紛いに格好付けていた男が、見るも無残な姿になる。虎坂の額には涙がこぼれていた。


 「お前と俺は水と油。理解し合えないようだな」


 「理解できないというなら…………今ここで重罰違反で始末してやる。新しい陰陽師だか知らないが、俺はお前たちみたいな陰陽師もどきは認めない」


 絶花が折りたたみ傘を抜いた。黒鬼との対話を目的にどうにかトドメを避けていたようだが、堪忍袋が切れたらしい。殺すつもりだ。


 「絶花! 待って、なにも殺さなくても」


 「お姉ちゃんは黙っていて。こいつの方針がまかり通れば全国に一般の家庭にも妖怪の存在が認知されることになる。そうなったら日本は終わりだ」


 絶花が折りたたみ傘を右腕で振り上げた。折りたたみ傘など普通は殺人の凶器とはならない。せめて傘でなくては。しかし……絶花の折りたたみ傘には、からかさお化けの妖力と絶花本人の妖力が混ざり合っている。これで凶器として成立する。


 「説得は失敗だ。あとは殺すだけ。覚悟しろよ」


 会話が途切れた。

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