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充電

 またなんか変な奴が出てきたよ。なんて、嫌味な目線で眺めて見る。


 「なぁ。なんでお前……タトゥーしながら、ピアスも付けながら、そんな服を着ているの? それで面接に合格すると思っているのか?」


 聞いちゃったよ。あまりのシュールさに気まずくて私は声に出せなかったのに。


 「ふん。小隊を無理やり組まされて、腹が立っていたから、仕事を投げ出して女の子と遊んでいたら、リーダーに無理やり連れ戻された。だから……こんな格好だ」


 やっぱり説明を聞いてもよく分からないのだが、取り敢えずこいつが説明しきったみたいな完遂感を漂わせているので、これ以上は突っ込まないようにしよう。髪をサラッと触るあのポーズを取る人……現実では初めてみたよ。


 「タトゥーとピアスの理由は分かったけど、なんでスーツ?」


 だからこれ以上は聞いてやるなって、馬鹿!!


 「ふん。この俺が緑画高校の制服なんぞ着たって似合わないだろう。店ではもっと着崩しているんだ。でも、リーダーが『ちゃんと着ないと殺す』って五月蝿いから、せめて綺麗な着こなしをしているだけだ。まあ、戦闘には不利だな。俺の馴染みのある格好をさせて貰うぜ」


 そう言うと、首のボタンを引きちぎって腰からシャツを出した。ドクロマークのベルトが見え隠れする。スーツの下は柄物の服だった。紫色の淫らな粧飾である。


 「なんかお前、ホストっぽいな」


 「ホスト? 高校生がそんな仕事をしているのが見つかったら、警察沙汰さ。俺はただの……イタイ奴だ」


 グラサンを胸ポケットから出して…………つけた。確かにイタイ。自分のことを格好良いと思っている感じの……本気でイタイ奴だ。というかナルシストだ。


 「確かにイタイけど、自覚があるイタイ奴って珍しいな」


 「ふん。俺に触ると怪我をするぜ」


 「あっ、もういいよ。なんかごめんね」


 イタイって言われる事さえも、『俺には理解できないかっこよさだ!!』みたな解釈に、脳内フィルターで書き換えているのか。とんだ痛い奴だ。


 「でも、仲間意識を語っている奴の割には……お前みたいな奴もいるんだな。独断行動とったり、自由に抜け出したり……」


 「それは逆だな。自分勝手が許されないのは従来型のお前たちみたいな連中だろう。俺の仲間は俺のこの『どうしようもない宿命』って奴をちゃんと理解してくれている。そして俺は仲間のピンチには戻ってくる。これが俺達の信頼関係だ」


 「いや、それは単純に迷惑していると思うよ」


 遠征中に菓子を買い漁り、仕事中なのに平気でお菓子を食べ歩く。部下を馬車馬のようにき使って、散々に我が儘し放題のお前がそういうことを言うな!! あのナルシストは絶花のことを従来型と呼んでいるが、こいつは別に仕事に厳格な奴じゃない。私の弟は充分に今時の駄目学生だよ!!


 「仲間意識があるからこそのエスケープ。理解できまい」


 「う~ん。俺は別になぁ。仕事を抜け出すことに後ろめたさとか、申し訳なさとか、心苦しさとか、後ろ髪をひかれている感覚とか全くないからなぁ。全部、良い仕事をするための充電時間だと思っているから」


 「俺もだ。女の子に声をかけることは……俺にとって充電なんだ。気が合うな、中学生」


 「いや、ちっとも。こっち来るな、ハゲ!!」


 どうやらサボリ魔同士の同調はなかったらしい。


 「ところでそっちのお姉さん。これから暇?」


 「絶賛、命の危機だ!! 馬鹿野郎!! お前たちが私の京都ツアー旅を邪魔してきたんだろうが!!」


 京都ツアーの旅と言っても、実際は私の体の異変を本部とやらに行って解明してもらうこと。あとは、弟の付き添い程度だ。絶花は討伐代金の受け取りや情報提供、京都のお土産漁りなどもっと色々な目的があるだろうが。

 

 「それは悪かったな。お姉ちゃんは陰陽師じゃないんだっけ? そっちの弟君はしっかり苫鞠陰陽師機関の所属だったから処罰対象なんだけど……。OK、そっちの女の子は見逃してもいいよ」


 「…………はぁ?」


 「俺たちの目的はこの腐った陰陽師の差別社会の撤廃だからさ。それに害にならない人を倒しても仕方ないでしょ。弟くんをボコボコにしたら、俺がリーダーに掛け合って、君を安全にここから出してあげる」


 ありがたいと思うべきか、罠だと警戒すべきか。私の心の中に絶花を見捨てる選択肢は今のところない。私のためにさっきまで戦ってくれているし、今後もそういう態度だろう。そんな奴を見捨てて自分だけ助かろうとは思わない。これでも一応は家族だ


 「リーダーは今までの奴にはいない。『金属性』の野郎だな。幽霊列車の火属性の女は倒したも同然だから……鬼門はお前だけ。ゴールが見えてきた」


 「いや、ここがお前のゴールだぜ。お前のお姉ちゃんには絶対に攻撃しないから、安心して死にな。あっ、そこのお姉さん。さっきの絵之木戦みたいに戦いに割り込んでこないでね。俺の式神は洒落にならないから」


 こっちも先ほどの銃弾のダメージで立ち上がれる元気はない。取り敢えず椅子の間に隠れている。この戦いは絶花に任せるしかない。


 「お前に勝って、次のリーダーとやらで終わりだ」


 「いいや。それは無理な話だ。お前だって知っているだろう。陰陽師同士の戦いにおいて『相性』がどれほど大事か。俺が土属性の陰陽師である限り、お前に万に一つの勝目もねーよ!! こい、『黒鬼』!!!」

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