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護身

膠着状態を打開するために、ようやく奴が動いた。さがりという馬の頭だけの妖怪がこっちに向かって突進してきた。


 「私にだって切り札くらいはあるのよ。さぁ、出番よ。あいつを吹き飛ばして、蒲牢!!」


 御札の中に眠っている龍を呼び起こした。こいつの強さは並みの妖怪では相手にならない。かの有名な龍の息子の一匹である、この中国最強クラスの妖怪ならば。


 「わぁっ!!!!!!!!」


 私は折りたたみ傘から顔を出して、迫ってくる馬に向かって大声で叫び声をあげた。その瞬間に旋律が走る。正体不明の衝撃派が飛び交った。蒲牢の能力は『咆哮をあげること』。この声が最大拡散の最大攻撃力となる。


 「人間の声なんて防ぎようがないでしょう」


 衝撃派は予想通りの成果をあげた。片手で回復を施していた絵之木は、治療をされていた添木ごと後方へ吹き飛ばされる、体が浮き上がった。その瞬間に一瞬だけ添木の状態が見える。腹部の止血は完了しているようだ、意識までは戻っていないままの添木は座席へと落ちた。絵之木の方は最後部の壁まで体を持って行かれ、肩から壁に激突し左手から拳銃を落とした。


 「お姉ちゃん、蒲牢との連携ができている」


 「式神は別に外に出さなくても、御札を持っていればある程度の恩恵は受けられえる。ここにくる前に少し打ち合わせしていたのよ。護身術としてね」


 「蒲牢って龍生九子の一匹とは知っていたけど、ここまでの威力が出せるなんて。いや、感心するところはそこじゃなくて、妖力が体に無いのに必殺技っぽいことをしたお姉ちゃんなんだけど」


 そこは突き詰めようがない。私としては、あの絵之木という女の回復術である手の平に緑色のオーラのような物を発して、それを傷口にかざすだけで傷が本当に癒えていることが驚きだ。


 ちなみに、私の式神である蒲牢だが、今は寝ている状態だ。だから奴は会話に参加しない。どうも封印されていた期間が長かったらしく生活のリズムが整っていないらしい。だからいざという時はたたき起こして、今は力を静かに供給している形になっている。こいつが本気になれば幽霊列車ごと崩壊だろう。


 「どんなもんよ。これで二人目も倒したでしょ」


 ★


 「お前たち、本当にイレギュラーなコンビだな。こっちも驚きの連続だよ。捕獲不能の化け鯨に、妖力のない陰陽師に、今度は龍生九子かよ。本当に獲物を間違えたことだけは確かだ。だが、一度始めた戦争は、そう簡単には終われない」


 結論から言って、まだ決着はついていなかった。絵之木ピアノは頭から血を覗かせながら、ヨロヨロと歩いてきた。拳銃が……二つ。『さがり』の姿がない。そっちも武器にしてしまったのか。


 「これはなるべく温存しておきたかったけど……出し惜しみはなしだ」


 二丁拳銃……。

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