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甲殻

ここは相手の用意した舞台だ。つまり、後手から動く我々は間違いなく罠をはられているであろう場所を動かなくてはならない。


 「絶花。この場から動かずに救援を待つとかできないの」


 「助けてくれる人がいない。俺の仲間は俺一人でどうにかできない相手に挑むような奴はいない」


 私の弟が陰陽師の中でどれほどの実力なのかイマイチ分からない。確か捕獲不能の妖怪を従えているのは強いとか、須合正樹が語っていたような気がする。苫鞠陰陽師機関でも作戦隊長などを勤めていた。だから周りの評価としては……きっと高いのだろう、私の希望的観測では。


 「さ~て。どんな馬鹿野郎が来るのやら」


 私の不安など気にもとめず、絶花はドアを開けた。普通は敵の存在する部屋に侵入する時は、武器をいつでも使えるように構えるものだと思うのだが、私の弟ときたらポケットに手を突っ込んであくびをしながらいかにも気だるそうな顔をしている。如何せん無用心極まりない。


 「あいつ……どんだけ肝がすわっているんだよ。ちょっと待ってよ。絶花」


 後を追い次の部屋に侵入しようとした私を、咄嗟に弟が突き飛ばした。尻餅をついて地面に降り立った私は、すぐさま『なにするんだこの野郎』って言おうと思ったのだが、声が出ない。


 それもそのはず……もうすでに『殺し合い』は始まっていたのだ。次の車両には……真っ赤な甲殻の蠍のような鋏を持った巨大な生き物が、敵であろう陰陽師の肩の上からこっちを物欲しそうな顔で眺めていたのだから。蠍と表現したが、全身はどちらかというとザリガニに似ている。そして頭はカラスのような巨大なくちばしだ。


 敵の陰陽師は頭に烈火の模様のハチマキを付けて、学ランを着ている。相手は高校生なのか。前足はあんなに強大なのに、後ろ足が一本もないことも特徴だ。その妖怪は胴体を肩に巻きつけて、長い尾を地面につけて上手くバランスをとっている。


 「妖怪『網切』。まあ有名所の妖怪だな」


 陰陽師はすぐには攻撃してこなかった。後ろに腕を組んで直立不動で黙って突っ立っている。異質と言えば異質、奇妙と言えば奇妙。


 「なんなのよ、あいつ」


 「あの制服から緑画高校とかいう陰陽師育成機関というか、陰陽師を排出するための学校の連中だね。あいつらも自ら進んで旧陰陽師を叩き潰しているって噂がたっているけど」


 「佐用。我々は緑画高校により研鑽を極めし新しい陰陽師だ」


 「はぁ? 本部に登録していない”自称陰陽師軍団”がなにを偉そうに。妖怪を悪用して革命家きどりかぁ? 恥を知れ」


 「恥を知るのは貴様の方だ。新しい考えかたについて行けない老害が。貴様のような腑抜けにこれからの悪霊とのいくさに太刀打ちできるものか。ここで花と散れ」


 「その悪霊を増殖させたのがそもそもキサマらの失態だろうが。俺は確かに田舎者だが、情報網は広くてね。知っているんだぜ、お前らの最高指揮官がレベル3の悪霊の現況元だってな」


 「貴様、こともあろうに……理事長までも愚弄するか。まあいい。どの道、お前たちに勝目はない。一人は腕が立つようだな、そこの引っ込んでいる奴は雑魚だ。実質は5対1の構図だ」


 「へぇ。お前を含めて雑魚を五人始末すればいいだけの簡単なお仕事か。俺のお姉ちゃんを悪く言った罪は重いぜ」


 「案ずるな。貴様はこの”5”という数字に意味があることは分かるだろう。五行には各属性につき相性の善し悪しがある。我々の小隊は理事長により厳密に組織されたもの。つまりは五人とも属性が違う。どんな相手が来ようとも確実に仕留められるというわけだ」


 びっくりするほど蚊帳の外で、私に対して非難までされているのだが。確かに陰陽師同士の戦いには、私は雑魚と称されても仕方がないだろう。話の流れから察するに、その緑画高校なる連中は旧陰陽師とは思想が違う連中で、陰陽師を狩る仕事もしていると……。それで我々を襲ってきて……。ここまでは分かるとして。


 五行ってのもさっきの雑談に出てきたな。


 「貴様の姉といったな。肉親は属性が似るもの。複数の属性を持つ者である可能性が高い。益々、キサマらに不利な状況というわけだな。それとも、少しは知恵を働かせて兄弟で属性を変えているか? 陰陽師は大抵が二種類の属性を持つからな。別の妖怪を使えば変更は、まあ可能だが」


 「いいや。お姉ちゃんの属性は分からないけど、俺の式神もお姉ちゃんの式神も水属性だよ」


 なんでそういう重要なことを言っちゃうかな!! 今のは絶対に黙っておくべき情報だっただろ!! いや、妖怪を見せればバレルのか。


 「そうか。ならば私との相性は互角だな。私の網切もまさに水属性。同属性対決になるな」


 「いや、お前はどうでもいいんだけど……確かにマズイね。土は水を濁す。また、土は水を吸い取り、常にあふれようとする水を堤防や土塁等でせき止める。土属性が来るとマズイかも。相性は最悪だし。火属性とか相手にしたいな~なんてね」


 「残念ながら火属性はさっきのアナウンスの女だ。奴が幽霊列車を動かす火属性の陰陽師。つまりお前の弱点属性は現れない」

 1期の五行の話と整合性がとれないかもだけど

 ゴリ押します。

 緑画高校とは? と思う人はどうぞ『特に何もしない陰陽師』を読んでね

 そんな細かい設定知らなくても面白いように頑張ります。

 

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