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鱗粉

 敵同士を誤認させてから同士打ち。およそ格好良い主人公がする真似じゃない。極めて卑怯であり卑劣である。だが、ここは漫画の世界ではない。陰陽師同士の闘いはそんな生優しい物ではないのだ。


 「お前、それでも党首になりたいのかよ」


 「これが印象とかイメージを大切にする試験的な内容の戦いなら完全にダメだろうな。だが、お前に勝てばそれでいいのだろう?」


 「それでいいはずないだろ!! お前は党首になりたいんだろ!! だったらもっと格好良くあれよ!! せめて格好良くあろうとする努力くらいしろよ。ただの卑怯者じゃないか。亜空間を操る能力を悪用しているだけだ!!」


 否定できない、全くを持ってその通り。人海戦術なんて使っている相手に卑怯者呼ばわりされているのを置いといたとしても、今から党首になりたいと立候補する人間が行うべき行動じゃないのは承知している。相良十次は優しく目を瞑って地面の方を向いた。


 「お前は安倍晴明じゃない。波長が多少なりとも受け継いでいるのは分かるが、根本的に別物だ。分家の分家のそのまた分家というのは本当らしいな。なんだ、お前は一体なんなんだよ!!」


 鎖鎌という武器を格闘術として使わない。黒鎖を使って相手を動けなくする。亜空間に移動する能力で戦いを避ける。超大型妖怪で力でねじ伏せる。格好良くない。ひたすら相手との正面衝突を避けて、上手く逃げ遂せる為の戦い方。あからさまに主人公じゃない。


 「安倍晴明はクズ野郎だったけど、戦いに関しては真面目だった。悪い妖怪を式神として手懐けて、平安の町を守り、部下を多く持ち、カリスマ的センスで皆を誘導し、正義の塊だった。あの人は……」


 「安倍晴明は部下の死を気にせず、冷徹で非情で傲慢な男だった。自分が党首になる為に蘆屋道満を騙し討ちして、悪さをしない妖怪までも奴隷にして、歴史に自分のイメージまでも偽った」


 「それでもお前みたいな卑怯者じゃなかった。こんな真似をする男じゃなかった」


 「こんな真似をする男だったんだろ!! アイツは蘆屋道満を騙し討ちにした!! 歴史書では正統なる決闘となっているが嘘っぱちだ。アイツは自分の思い通りにならない蘆屋道満をねじ伏せた。自分が一番じゃなきゃ気が済まない卑怯者だったから」


 安倍晴明を知る人間はもう残り少ない。せいぜい五芒星の面々くらいだろう。彼女は本当の安倍晴明の本性を知っているのかも知れない。


 「俺を嫌う理由は簡単だ。お前が安倍晴明の本性を知っているから。アイツのドス黒い一面を。アイツは卑怯者だった。漫画の世界では卑怯者は弱小設定が多いが、アイツは何故か最強の陰陽師だった。でも最強だったのは奴だけだ。奴の子孫はその才能そのものが衰退した。長男を後継者にするって方式で一千年も歳月が経てば煌く才能も薄れるよなぁ」


 だが甘やかされて育った人間は自分から変わろうとしない。陰陽師の世界に根を張った悪しき風習は、徐々に世界を腐らせていった。その進行が遅かったのは、周りが優秀な人間だったからだろう。だが、それも一千年が限界だった。


 「だから俺を党首にしたくない。俺が党首になれば、また腐った陰陽師の歴史が始まる。安倍晴明と同じである俺が党首になってしまったら。お前は俺なんかよりも、安倍晴明が嫌いなんじゃないのか」


 「黙れ!!」


 目の前に虫の姿をした妖怪が現れた。白神棗と向かい合っていた最中に、上空から急降下してきたのである。それもおよそ五十匹。名前を『蝶化身』。人間の姿をしているが、全身が真っ白な毛に覆われていて、魅惑な羽が生えている。チョウは死霊の化身とみなす地方もあり、世界各地にチョウが人の死や霊に関連する観念が見られる。集団で行動し息が詰まるほどの鱗粉をバラ撒き、これに遭うと病気を患って死ぬといわれる怪異がある。白い蝶を見るのは死の前兆という言い伝えもあるほどだ。


 「こんな妖怪もいるのか」


 「あの障子じゃ鱗粉までは防げない。人海戦術って馬鹿にするけど、私は多数の妖怪と式神契約を交わしている。つまり、他の誰よりも手札が多いということ。どんな相手にだって……」


 だが、その蝶の一匹も彼に鱗粉を浴びせる事は出来なかった。相良十次の方が障子に隠れて逃げてしまったのである。蝶化身は標的を見失った。一瞬の出来事だったので、白神棗もしまったという顔をする。自分は屈強な鬼に囲まれているので、至近距離に現れる事はないだろう。だが、奴が次にどんな手を使ってくるか分からない。


 「いなくなった。天狗部隊、空を見張れ。奴は上空から攻撃を仕掛けてくるはずだ」


 上空に一列で隊を整列していた天狗達が一斉に動き出す。四方八方に散らばって上空から相良十次の逃げ出した場所を探し回る。それに蝶化身も加わっている。岩場の影や森林の方にも出向くが、一向に見つからない。


 「見つかりました。夜幢丸と呼ばれる鎧武者の肩の上です!!」


 そう叫んだ時には天狗は夜幢丸の居合い切りによって羽を切られ、地面に付き落ちていった。なまはげと交戦中の夜幢丸の肩の上。ここならば、空を飛べる妖怪でなければ攻撃できない。


 「ここが一番に安全かな」

鱗粉って水をはじいて、光を反射させるんですよ。

お姉ちゃんに強そうwww

それと、そろそろあのレベル3の唯一の生き残りを出したいと思います。

一部のキャラクターなので二部から読んでくれる人はポカーンにならないように頑張ります。

ここまで長々と書いていると設定が多い(つд⊂)そろそろ決着かな

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