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暴君

 聞く耳をもってもらえない。もう完全に考えがこり固まっている。倉掛絶花と同じだ。いや、その考えが動かないのは俺の同じか。


 「誰か他に候補がいるなら聞きたい。五芒星の仕事としてこの乱世に党首が不在の状況を認めてはいないだろう。だから俺に決断しなくても、誰かに任命したいという人間はいるはず」


 「……いない。お婆ちゃんは病院から出られないし、私も何もしていない」


 「そうか。だったら早く見つけろよ。俺を否定するのは構わないが職務放棄は駄目だろう。もうじき五芒星が集結する。あんまりチンタラやっていると、他から怒られるぜ」


 こんな言葉は言いたくない。焦った白神棗がその辺の大賞気取りのバカを党首に推薦してしまったら、もしソイツが昔ながらの陰陽師の方針を主張するならば、レベル4の悪霊である柵野眼が黙っていない。陰陽師は滅亡するだろう。本当ならば意地でも自分に任命して貰えるように演説でもするべきなのだろうが、押して駄目なら引いてみろである。取り敢えず五芒星の使命などを言って揺さぶってみた。


 何度もこの地には足を踏み入れられない。いや、招き入れてくれないだろう。だからチャンスは何度もはない。他の五芒星だって迎えに行かなくてはならない。ボンヤリしている暇などない。


 「…………お前。あの渡島塔吾の意見に賛同しているらしいじゃん」


 「アイツに指揮棒は握らせない。奴は裏方で仕事をする事が好きなんだ。俺が党首だ、アイツがどんな発言をしても俺が一度飲み込むまで考える。だから、陰陽師の世界がそこまで急速的に変化はしないだろうさ」


 「受け入れている時点で論外だ。妖怪と仲良く、陰陽師育成の学校、上下関係の緩和、古きしきたり禁止。これを取り入れようとしているのが間違っていると言っているの。お前は陰陽師としてのプライドはないのか」


 「そんな物はない。俺は例えどんな陰陽師だろうと、一般人だろうと、悪霊の犠牲者さえ消滅すれば、あとはどうだっていい。俺は自分の方針に従わない奴だとか、考えが合わない奴とか、そんな連中を蔑ろにする気持ちはない」


 「自分の都合の良いように言い換えているだけだ。お前は自分で物事を判断出来ない、周りを納得させられない、暴君や独裁者と言われるのを恐れてヒヨっているチキンだ。皆の意見を参考にして失敗したらいくらでも言い訳が出来るからな」


 清楚な格好で可憐な女の子なのに、言葉遣いが極めて悪い。完全に見下されている気がする。視線から何となく分かる。彼女は独裁者こそ指揮官であるべきだ、という主張をしている。俺の背中について来いと言ってくれる人間の方が好きなのか。


 「安倍晴明は完璧だった。彼は確かに独裁者で独りよがりでワンマンで、他人なんか信じていない自己中心的な性格をしていたが、それでも平安の世を守りきった。彼が完璧であったが故に、その彼を中心に全てが機能していたからさ。そしてお前は完璧じゃない」


 確かに、と相良十次は心の中で思った。自分が陰陽師として完璧かと言われれば言葉に困る。恥ずかしくて、恐れ多くて、そんな台詞は言えない。だから周りの人に助けを求めようとしているのだが、それが許して貰えないのか。


 「考え直してくれ。俺には時間がない。俺には簡単には言えない難しい事情を抱えている。だから、ここで引き下がる訳にはいかない。だから、納得して貰うしかないんだ。白神棗、この通りだ。力を貸してくれ」


 頭を下げた。ここで罵倒が来たら土下座でもしようと思う。彼女の前でレベル4という絶対に叶わない脅威の説明をする訳にはいかない。これを聞いたら彼女は絶対に首を縦に振らなくなる。悪霊に屈した党首など、悪霊の望むがままに動く党首など、彼女にとっては考えられない事だろうから。だが、平安時代ではないのだ。悪霊が強大かし過ぎて手に負えなくなってしまったのだ。もう感情論で事が解決しないのである。ここは柵野眼の願いを叶えてやり過ごすしかないのだ。


 「どうか分かってくれ。……俺は皆を守らなきゃいけないんだ」


 「…………。よし、じゃあ勝負だ」


 彼女も聞き分けない子供ではないらしい。今に起きている重大さには気がついているみたいである。五芒星同士は見えない繋がりがあると聞いた。矢継林続期は竜宮真名子の身体の異変を知っていたくらいだし。彼女も竜宮真名子の身に起こった悲劇を感じ取っているのかもしれない。


 それで……勝負という流れになるのか。彼女は勢い良く立ち上がってキリッと睨みつける。


 「いくら他の人の意見を聞いて、協力して戦う、チームプレイ重視のリーダーと言っても、私より単体で弱いなら話にはならないでしょ」


 「相良十次ってそんな人間じゃないよ。不良で批判家で意識高い系の痛い痛い男子だよ」


 「鶴見、お前は黙っていろ」


 確かに昔は尖っていた時代はあった。だが、今は違う。柵野栄助によって一般人から犠牲となった少女の死を知って、自分の愚かさを知ったのだ。完璧じゃない党首は誰かの力を借りて最強になる。責任の押し付け合いや、馴れ合いや、傷の舐め合いではない。


 「皆を輝かせる為に、皆を守る為に俺はいる。だから、その為にお前と戦う。いいぜ、戦うよ。表へ出ろ」

分かっている。戦闘パート以外が長すぎる。( ;´・_・`)ぅ・・ぅん

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