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全貌

私は意識があった。確かに倉掛花束に致命傷を受けた。腹部に突き刺さったその傷により死亡したはずだ。だが私は生きている。人間の波長を持ち、悪霊の波長を持っていなかった。死んだ人間が生き返るなど有り得ない。そんなこと、バトル漫画でも許されない禁忌だ。


 レベル4とは……いったい?


 ★


 「あっ、目が覚めた。おはよう、倉掛百花ちゃん。お母さん、百花ちゃん目覚めたみたい」


 「はいはい。今すぐ行きますよ」


 私は監禁されていた。両手両足を縛られているという事はないのだが、金縛りのようなもので動けなくなっている。地面に突っ伏して身動きが取れない。これはどういうことだ。目が覚めたということは、ここは夢の世界ではない。私が現在進行形で生きている現実の世界だ。


 そこは霊界での琵琶湖のなかだった。私はどうやら寝ている間に大広間から移動させられていたようである。水に溺れて窒息死しそうだと考えたが、不思議と全く息が苦しくない。水圧により浮き上がることもなく、琵琶湖の最深部の平面の岩の上に転がっている状態だ。


 目の前にいたのは、ポニーテールとツインテール。


 「なにこれ?」


 「ん? 竜宮の護衛兵を全部蹴散らして、あなたを担ぎ上げてここまで連れてきたの。衛兵にはかなり抵抗された、竜宮の陰陽師だから実力はそこそこ高いけど、所詮は私とお母さんの敵じゃないね」


 「眼、慢心は良くないわ」


 「はい、お母さん」


 今はっきりとした。このポニーテールが柵野眼であり、そっちのツインテールが柵野栄助だ。


 「柵野栄助って既に退治されたって党首の相良十次から聞いたけど」


 「それ正解。確かに私はレベル3の悪霊の力なんて欠片も残っていない。随分と生意気な餓鬼に癒着吸収されちゃってね。妖力も殆ど99.999%くらいはこの世から消滅しているよ。だから今の私は陰陽師の脅威でもないし、人類の宿敵でもない」

 

 だが、奴は生きている。この世に柵野栄助が残した根は深かった。奴は実体化して会話したり行動するくらいの事は出来る力が世界に分散してしまっていたのか。


 「今日の見た夢で全貌はもう把握したわ。柵野栄助、あなたは倉掛百花をたぶらかし、陰陽師の知識を吹き込んだ。それから、私と百花が死んだ後に、その死体を使って……」


 あれ? 死体を使って何をしたのだ? それよりも、なんで私は水中なのに平気で話すことが出来る? ただの妖力を持たない私にはテレパシーなんて不可能なはずなのに。


 「私は秘密裏に計画していた。私が死んだ時の保険として、後継者を残すことにした。私よりも強い個体、『レベル4』を完成させるために。その為には膨大な妖力が必要だった。妖力とは死後も残る物なのだよ。だから私は竜宮真名子と倉掛百花の妖力を練り合わせた」


 奴は語り始めた。レベル4の悪霊とはどういった存在なのか。


 「原点回帰、生命の円環。これがレベル4の悪霊としての特権だ。いわゆる人間として復活する、恨みを持って現世に復帰したはずの悪霊が、殺された事を帳消しにして、人間として復活する。これが……一千年に及んで人類を苦しめた悪霊の最終地点」


 人間として復活する、だと?


 「ふざけるな!! 柵野眼は人間なんかじゃない。お前の娘は立派な悪霊じゃないか!!」


 「違う、違う。あなたは勘違いしている。私の娘は…………あなたも同じよ」


 はっ? はぁ? 今度は何を血迷いごとを言っているのだ。出鱈目でたらめを言うのも大概にしろ。私の母親は倉掛一輪ではなかった、でも私の母親はコイツでもない。私の母親は竜宮城の現乙姫様のはずだ。


 「信じられないという顔ね。でもこれは本当。あなたを生き返らせたのは私なの。だからあなたは人間として生き返った。あなたの正式名称は柵野眼。あなたの生前は倉掛百花であり、竜宮真名子でもある。二人が混ざり合ったから、どっちとも言えないのよ。でも、あなたは柵野眼であり、私の後継者よ」


 つまり? 私は今までの推理で散々に入れ替わっただの、すり替わっただの言ってきたが? 結局は私もアイツも倉掛百花で竜宮真名子であったというオチなのか。


 「いや、ちょっと待て。柵野眼はそこのポニーテールでしょう。私は別に」


 「1つの心が2つに分裂していたのよ。一方は倉掛百花として私生活する人間のフリをしたレベル4の悪霊。もう一方はそれを世間に知られないようにひた隠しにする為に行動する最強の『変身能力』を持ったレベル4の悪霊」


 「ちなみに倉掛花束はもうこの世界にはいないよ。彼も跡を追って自殺したから。これも私が倉掛花束に成りきって演じていたんだよ。あの倉掛絶花と倉掛一輪が帰ってくるまでは、それで上手くいっていたのさ」


 じゃあ私は今まであの家にずっと一人で生活していたのか。父親など遠い昔におらず、自分の死んだ居場所で。ずっと人間の波長を持った人間として悪霊が生活していたのか。確かに絶花が家に来てから親父の顔を滅多に見ていないな。やけに顔を見ないと思った。まさかもう既にこの世にいないなんて。


 「これが君が妖力なんて全くないのに、式神契約が出来る理由だよ。柵野眼のノーマルフォルムちゃん」

柵野栄助は1期で既に退治してます。

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