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「お前は幸せか」




そう言ってきたのはセーラー服を着て、髪の毛をツインテールと呼ぶには長さが足りないが二つに結んでいて、何故か上履きを履いていた少女だった。

いや、一見少女のような容姿、顔立ちだがたぶん自分と同い年ぐらいじゃないだろうか。

少女は眉をつりあげ、腕をうしろに組んで立っている。



俺は少女に言ってやった。



「幸せじゃないよ。幸せなんて感じられないんだ」



「…ふん」



答えに満足したのか、少女はにっと笑って、俺の目の前に顔を近づけてきた。

生まれてこの方、ろくに異性との交流がなかったものだから、ここまで接近されたのも初めてであったために俺の心臓はバクバク音を立てていた。



「ななな、なんだよ…っ」



「お前には今から我と共に来てもらおう」



顔が近いまま言われた。

―――――――――――――――へっ!?



「共にって…、意味分かんない。俺は今から学校なの、行かなきゃいけないんですが」



暑さのせいもある。変な奴に出くわしてだんだんイライラしてきていた。

俺は少し強めの口調で言ってやった。それなのに、少女は耳をかさずに俺の言葉を無視していい続けた。



「我の名はナユタ。アンダーグランド東部カズサから来た。今からお前にはアンダーグランドへ来てもらおう」



ナユタ?アンダーグランド?カズサ?意味わかんない!!

俺は内心シャウトする。



「何言って…。アンダーグランド?カズサ?なんだよそれ!!」



「来ればわかることだ」



少女の小さな体からは想像もつかない力が腕にかかっている。俺は振り切ることができなかった。

そのまま少女に引っ張られ、俺は道の端の草の茂みのなかへ連行、そのさきにあったのは古びた井戸。



「ちょ、待っ…」



少女はそのまま古びた井戸の中へ飛び込んだ。俺の腕をつかんだまま。








落下。井戸の中は真っ暗。死んだって思った。

なんて俺の人生はダメダメでつまらない人生だったんだろう。最後まで幸せを知らないまま死んでいくなんて―――――――――――――――










………………おい!



うるさいなあ。



……………おい!



天国でくらい静かにさせてくれ。



…………おい!



うるさい。



………おい!



誰だよ、まったく。



……おい!





「うるさぁぁぁぁい!!」




叫びと共に俺は意識を取り戻した。

生きてる。俺は生きていたんだ。…ということは、ここは何処だ。

俺はあたりを見回す。まったく見覚えのない場所であった。



「ぁ、あのぅ…」



後ろからの声。反射的に俺は振り返る。

後ろに居たのは、ドレスを着た可憐な少女だった。



「どこか、具合の悪いところとかありませんか?」



俺を気遣っているようだった。



「いや、ない……です」



自然と目をそらして、口ごもってしまう。可憐な少女は、にぱぁっと可愛げな笑顔をうかべた。可愛い。めっちゃ可愛い。



「よかったですぅ。ナユタちゃん、勇者様が起きましたよ」



可憐な少女は安心した顔をうかべ、横を向いて誰かに話しかけた。




ナユタ…どこかで聞いたような言葉である。なんだっただろうか。




「起きたかっ!!」



頭の中の記憶を引きだそうとしている俺の耳に突然、大きな声が響いた。その声の主を見…思い出した。



「あ、あんたは!!あの時の


「ようこそ、アンダーグランドへ」



言い終わる前に俺の言葉はかき消された。

アンダーグランド…って、アンダーグランド!?この少女が言ったとおりの場所へ俺は連れてこられたってわけだ。

そんな俺をお構いなしに少女は自己紹介をはじめた。




「我はナユタだ!」


「わたしはファラといいますの」



空気的に、俺も自己紹介をしなければいけないのだろうか。



「俺は、志乃(しの)



「そうか、シノか。」



セーラー服の少女―――――――――ナユタさんは俺の名を呼び、意味深長なことを言い出した。



「不幸な勇者、シノよ!お前はこれからアンダーグランドで我らと共に旅をしてもらおう」



「ちょっと待ってくれ。何もかもが訳わかんないんだ、説明してくれよ」



「わたしが説明しますの」



そう言ってドレスを着た可憐な少女―――――――――ファラちゃんが説明を始めてくれた。










俺が日常を過ごしている世界――――地上の下に存在する世界、それがアンダーグランド。

アンダーグランドには太陽がない。人工的に造られた『ヒナタ』が太陽の役割をはたしているようだ。地上との行き来は井戸でできるようだ。現に俺も井戸から来たわけだから。



「つまりは、ここは地上とは別の世界ってことか」



「その通りだ、不幸な勇者よ」



「あの…」



「何だ、不幸な勇者」



「さっきから、不幸な勇者、不幸な勇者って、なんなんだよ」



今、一番したかった質問はこれである。

不幸な勇者とは俺のことをいっているのであろう。そうではないと思いたいがきっとそうだ。不幸な勇者…なんて言われようだ。



「幸せを感じられない、これほどの不幸があるか!よってお前は不幸な勇者なのだ。我が今決めた」




なんという強引さ。たしかに、不幸なのかもしれないが、勇者とはなんなのだろうか。勇者とよばれるほどのこともしたことがないし、逆に勇者とはかけ離れた存在ではないだろうか。



そしてもう一つ。俺がここに連れてこられた訳だ。訳をナユタさんにきいたら、



「地上にでて、はじめに会ったのがお前で、お前が幸せじゃなかったからだ」



と応えられた。



「幸せじゃないのって重要なのか?」



「重要だ。理由は聞くな。とりあえずなんとなくということで理解しておけ」



「は、はぁ…」



半ば強引に納得させられた俺である。







「さぁ、ファラ、シノよ!これから旅のはじまりだっ!!」










これが、不幸な勇者こと俺とナユタさんとファラちゃんの出会いだった。












俺のつまらない退屈な日常が終わりを告げた。

ちょっぴり刺激のはいった新しい日常が始まったんだ。

















どうでしょうか?


ご感想、アドバイスもらえると嬉しくて倒れます



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