姫様、冒険者ギルドは「求人サイト」として利用します
「|プリンセス・サーバンツ《姫様のしもべ》ですかい?」
アレクサンドリアなんとか。長いからスライムでいいや。表情はわからないが、多分困惑しているのだろう。
「そう。私が依頼をしたことを皆がこなす場所よ。正直仕事をしてくれるなら魔族じゃなくて人間、亜人種ってのがいるのかわからないけど誰でもいいわ!」
「姫様のために働くのは構いませんが、姫様が出す報酬はどこからでるのですか?」
「住民の税金から支払うわ」
「話が飛躍してる気が。家がもうすぐ完成するとはいえ、住民は私しかおりません。妥協して女神とスライムです」
「家は家よ。事務所兼住宅なんかにしたくないわ」
「民衆ならいつも泊まってる宿がある街があるじゃない」
「なるほど! ついに世界征服の第一歩を踏み出すのですね! このオカリナ。涙が止まりませぬ!」
それまで黙って話を聞いていたリィナが口を開いた。
「街を乗っ取るつもりか? じゃが何度も言っておるが主らに戦闘能力はない。スライム一匹に街を滅ぼさせるつもりか?」
「戦闘能力なんて元々いらないのよ」
「は? お主は何を?」
「オカリナの鎌と、この七色に光ったキノコを融合すればいいだけよ。確かに1のダメージしか与えられないけど、状態異常はつくわ。そしてその中に『即死』もある」
「姫様。なんという気づき!」
「妾がそれを許すと思うか!」
「許すも何も教えてくれたのはあなたじゃない。すでに共犯者よ?」
「なんじゃと?」
雷に打たれたようなリィナに対して、
「確かにこの女神がいたからわかったことですね」
「妾は気付かぬうちに実験台になっていたというのか!」
「まぁ落ち着いて。私は街に恩はあるし、壊滅とか滅亡とか望んでいないわ。そもそもそんなことをしたって民衆がついてくるわけないじゃない」
「何をするつもりなのじゃ?」
「要するに街の人間が、魔族である私が作った街に住みたくなればいいのよ」
森を出て街に向かう私とオカリナ。
「それでどうするのです? 家すらまだ建っていないのに」
「できたら協力者が欲しいのよね。例えば四天王とかいないの? 魔族ならそういうのいそうだけど。スライムの王がいるくらいなんだから」
「四天王はおりますが、散り散りになって数百年。どこに潜伏しているやら。悪魔大元帥の私ですら居場所がわかりませぬ」
「ま、スカウトできそうな魔族を探すならここよね」
私はある建物の前に立った。木製の看板に剣と盾の紋章。昼間なのに泥と血の匂いが漂っている。
「冒険者ギルドですか?」
「そう。話を聞いていたら人間が魔族を討伐するために作られたんでしょ? ま、遺跡や洞窟の探索、薬草採取もあるみたいだけど」
「確かにそうですが」
「なら魔族討伐の依頼書があるじゃない。依頼書にはどこら辺に誰がいるかが書かれているわ。有能そうな魔族を倒しに行くんじゃなくてスカウトに行きましょ」
「さすが姫様。そんな発想、私にはございませんでした」
二人は中に入ると不穏な空気が流れていた。
自称勇者、魔法使いみたいの、重装備すぎて暑苦しい人、荒くれ者などなど。
「おい。あれオカリナじゃないか?」
「賞金首金貨一万枚のオカリナか」
そんな声が聞こえてくる。
「姫様。襲ってくる前に殲滅してもよろしいですか?」
「ダメよ。あいつらからも税金取りたいんだから」
「さすが姫様。人間どもからむしるだけむしるとは」
「いや、そういう意味じゃないんだけど」
私たちは壁に張られている依頼書を見る。やはりオカリナが最高額。私の顔や名前はない。
まぁ何もしていないし、無名なのは当然だろう。
「姫様。女神が我々に力を貸したという理由で討伐依頼書を出させては?」
「逆に忙しくなるからダメよ。リィナが襲われたら私たちに泣きついてくるに決まってるわ」
私は役に立ちそうで、かつ人間に追われている魔族を確認して、ギルドを出たのだが、案の定私たちは目をつけられていたようだ。
荒くれ者たちが行き先を塞いでいた。
オカリナといえど聖女の結界により戦闘能力は皆無という常識。ならば、オカリナを討伐し、簡単に大金に手に入るチャンスなのは理解できる。
だが、その常識はすでに時代遅れだった。
彼女は漆黒の鎌に何かつぶやいて一振りすると荒くれ者たちは一瞬にして戦意を失った。どうやら鎌に麻痺の状態異常をつけたらしい。
動けなくなった荒くれ者たちを無視して、私は記録したメモを片手に言った。
「水の四天王であるアクアっていうのが、比較的近くの湖に潜伏してるみたい。まずそこに向かうわ」
「かしこまりました。しかし姫様お気をつけ下さい。奴は四天王の中でも最弱ですが、水魔法や地形を操る能力には長けております」
「え? 戦うの? あんたたち仲間じゃないの?」
「街を作るから来いと言って素直に応じるかはわかりません。あくまで魔王様がいたからこその部下でしたので」
そうなると話が変わってくる可能性が出てきた。素直に説得に応じなければ戦闘になるし、倒してしまう場合もあれば、倒される可能性もあるからだ。
「とりあえず湖に向かうかぁ」
モチベーションが下がりながらも、メモを頼りに行くことにした。
「えーと、街から西に行くと森があり、さらに進むと湖があるって、いつもの湖じゃん!」




