姫様、魔王に「法のなさ」の厳しさを試してみました
「私を国外追放だと!? 魔王キャラであり、サーバー一位のギルドマスターである逆千鳥の佐吉だぞ! 間違いなく戦力になるのがわからんか!」
残念な髪の毛をさらに残念にしながら憤怒しているが、
「そろそろ茶番はやめるとしようか。お主、身の程を知れ」
私の目が光ると光線のようなものが出て、彼の足元に直撃すると、床が割れてしまった。
佐吉はひるむが、私は壊れた床を見て、修繕費どうしようか一瞬悩む。
あと、目からビーム出た。身体の構造どうなってるんだと思ったが、魔力がどうのこうの言われて納得するしかないのだろう。
「先ほど、妾が言った通り、この世界は異世界という名の現実世界。ゲームではない。魔王じゃろうが村人Aじゃろうが、一つの個、そして魔王なんかただの肩書きに過ぎんと知れ」
「しかし、私は生きる術を知らん。まずはこの地でメインクエストを受け取り、レベルを上げ、装備を整えさせてくれ!」
「じゃあ、畑でも耕すか? パワー極振りならさぞかし良い畑が作れるじゃろうな」
「畑? いや、モンスターを狩りたいんだが。いい狩場はないか?」
「国に住む魔物は国のために皆働いておる。罪もなき殺害は即死刑じゃぞ」
目が再び光ろうとしている。口答えは許さんと言わんばかりに。
「まあ、仕事はある。開墾以外にも建築、インフラ設備から飲食店、病院、技術開発。好きなものを選ばせてやる」
「そんなことやったことがない」
「そうじゃろうな。今までまともに仕事をしたことがない。全てを部下に丸投げしてゲームばかりしてきたからな。転生者はお主だけではない。皆それぞれ特技を活かして働いておるぞ」
「私はゲームは得意だ!」
「この世界、ゲームどころか電気すらないぞ。スマホも無ければパソコンも無い。当然光回線、いや、ISDN、ダイヤル回線すらないのにどうするんじゃ?」
「もしかして、『魔王だけど国外追放されてざまあします』系か!」
「妾が今まさにお主に『ざまあ』してるのがわからんのか?」
「おまえ、もしかしてこの前ギルドから追放した『もふもふ昆布』さんか!?」
「誰じゃそいつは!」
「ギルド一位を確保するためには微課金者は追放するしかなかったんだ! だって親のすねかじりニートが加入を希望してきたら誰だって受け入れるだろ? もふもふさんは夜二時間しかインしないし、明日仕事だからって。わかるだろ?」
「すまん。全然わからぬ。オカリナよ。アレを用意してくれぬか?」
「かしこまりました」
一礼をして場を離れるオカリナ。
「もしかして支度金か。しかし端金は勘弁してくれ。せめて一ヶ月宿に泊められるくらいはいただきたい」
「何を言っておる。お主が現れた際に壊された宮殿の修繕費の請求書を発行させに行ったのじゃ。ついでに妾が先ほど壊した床も含めておく」
「なんで!」
「当然じゃ。妾は古の悪魔姫と申したであろう。まさにやることは悪魔の所業ぞ」
「そんなひどい!」
「姫様。出来ました」
オカリナが戻ってくると、
「随分早くないかのう?」
「魔王様はスピード極振りと申してましたが、私もスピードには自信があります!」
「スピードの意味が違うがのう。ほら、修繕費金貨五億枚だ、え? 五億枚!?」
私は目を疑ったが、
「せいきゅうしょ。きんか、ごおくまい」と確かに書かれていた。
「ちなみに内訳は?」
「わかりません! 大体それくらいかと!」
うん。多分金貨十枚くらいだよ。
私は言いたくなるのを我慢して、
「悪魔大元帥がそう申したのなら、おそらく魔法陣の清掃に高級な洗剤を使わなければならないのじゃろうな。あと、その床、ただの木に見えるかもしれんが、世界で数本しかない木を使用しておる」
「姫様。森に生えているそこら辺の木材では?」
「大元帥。今の話は聞かなかったことにしておく。だから黙るのじゃ」
「大元帥!!! ハッ、黙っておきます!
大元帥の言葉に浮かれるオカリナ。
「で、どうする? なんなら妾が悪質な闇金業者を紹介してやろうぞ?」
「払わん! こんなの違法だ!」
「ならば仕方がない。我が国に法などまだ存在せんからのう。オカリナよ。お帰りじゃ」
「かしこまりました」
オカリナはボタンを押すと、佐吉がいるあたりの床が開いて、佐吉は絶叫しながら落ちていくのを見守るのであった。
「これ奈落まで落ちるんですか?」
聖香はおそるおそる聞いてきたが、
「安心しろ。出口は森の外にあるお手製の肥だめの池だ」
オカリナが胸を張って言うと
「なんでそんなものを作ったのですか?」
「姫様にあだなすものへの嫌がらせに作ったに決まっているではないか」
こうして魔王キャラは国外追放になり、スターフィールド国の被害は宮殿の床だけで済んだ。
「これで魔王を完全に敵に回しましたね」
「因果応報よ。きっと」
純白のドレスに戻った私は、そう言いながらも彼はこの世界で食べていけるのか少し心配してしまうのであった。
森の外。
「くそっ、悪魔姫とその仲間たち、そしてこの国よ。覚えていろ。サーバー一位のギルドマスターの名誉にかけ、必ず復讐してやるからな」
悪臭を漂わせながらも、佐吉は天に向かって叫ぶのであった。




